以下のようなご質問に、デジャブを覚えていらっしゃいますか?
台湾のお得意先さんのとこで、アフターサービスの一環として自社の機械設備をメンテナンスしようと、台湾へ短期出張しましたら、14日間防疫ホテルでの強制隔離の関係で、年間滞在日数がやむを得ず92日になってしまいました。台湾のルールに従い個人所得税の確定申告を行って納税をしましたが、台湾では一切給料をもらっていないにもかかわらず、日本で受領した給料を比例計算で台湾で課税され、日本でも同じ所得をもって再度申告納税することとなると、二重課税なのではありませんか。
日本の会社さんに、自社HPのSEOサポートや、YOUTUBEの動画編集を頼んで外注費の支払いを行います。当該外注費を台湾の会社で経費計上しようとするものなら、支払時に20%の源泉所得税を差し引かなければならないと言われていますが、本当に20%も取られるものでしょうか。
台湾で作った会社から、日本の親会社又はに日本に居住する個人株主に対して、配当金、利子、使用料(ロイヤルティー)等を支払わせたりすれば、20~21%の税金を払わされます。何か節税対策ありませんか?
上記質問と場面は、台湾で何等かの形でビジネスを行う日本人の方にとって、さぞかし馴染みが深いことでしょう。
対応方法ありますか?
今までのやり方ですと、台湾で課税された分をもって、所定の書類を日本の国税に提出しましたら、原則として海外税額控除の枠内で税金の控除が受けられます。そのため、赤字決算の場合を除き、二重課税にはなりません。
一方、2017年初から正式に発効することとなった日台租税協定(正式名「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取り決め」)の影響で、海外税額控除制度の節税効果が相当限定されたものとなり、源泉対象所得を支払う前に、源泉地国内での所定手続をしっかり行わないと、予め差し引かれた税金の半分ないし全部は、海外税額控除の対象から外されてしまいますので、要留意でございます。
(※租税協定と海外税額控除の関係について、以下マサレポもご参考いただけます。)
租税条約の適用がおすすめ!
では、気になる「源泉地国内での所定手続」はどのように行ったらよいかと言いますと、支払い対象である「所得の性質」によって異なります。
初段に言及した、配当金、利子、使用料の場合、支払うたびに、租税条約に基づく減税措置の申請を都度行う必要がある、とのことなので、もし月次ベースで使用料の支払いを行うと、手続きに要する手間が結構大変です。
一方、第二段落の外注費は、外注先の役務提供地が日本の場合(例えば支払元が台湾の会社、役務の提供地が日本のケース)は、原則として契約書に記載した役務提供期間の長さに応じての減税適用許可が取得可能となります。(一部の国税局は年次ベースの申請を要求します)
上記2種類の申請はいずれも支払い時にすぐ適用し、半分ないし全額の源泉税を免除してから日本への支払いを行えるのに対して、租税協約に定めのあった個人所得税の減税措置は、よほどなレアケースでない限り、通常は税金の先払いをしてから、翌年にて、所定の要件をクリアできるかを検証のうえ、還付申請を行う形という、比較的煩雑な手続となります。税金の先払年度でのキャッシューアウトが発生のも大変嫌なデメリットとなりましょう。
ですから、最善な節税対策は、やはり台湾での年間滞在日数を、確定申告不要な基準日数以下に抑えるのがベストかと思います。ただし、新型コロナウイルスによる法定隔離日数を考えたら、結構厳しい一面もありますでしょうね。
ラスボスにご注目!
租税条約に関する減税措置は、ほかにもいくつかの項目がありますが、一番よく相談を受けているのは上記3種類となっています。
大まかな流れは、決まった書類を国税へ提出し審査を待つという風に簡単にまとめられますが、何回をやり直してもなかなか審査が通らないケースもちょくちょく耳にしております。主な理由は、一部の必要書類を取得困難という物理的面もありますが、申請上のラスボスとよく言われているのはやはり「サービス契約書」です。
契約書の記載内容次第で、所得の性質が分かり、役務提供地が分かり、そして減税措置にフル適用可能な金額の計算もわかってきます。一部の申請者は作業負担を軽減しようと、インターネットから契約のテンプレをダウンロードし、そのまま申請に使ったりしています。そして間もなくして国税から審査不通過の通知書が送付されてしまいます。原因は簡単。契約書を事前に専門家に見せて、租税条約の申請向けにアレンジ、中国語訳を作ってもらっていないからです。
及第点の契約書さえ用意できれば、その他の書類は大体テンプレで賄えますので、この点を留意してこれからの申請案件にチャレンジしていきましょう!
Check!
マサヒロでは、日本へ支払う配当金、利子、使用料、外注費等に関して、日台租税条約に基づく減税措置の適用申請をサポートしております。法律事務所としての長所を生かし、案件の成功率を最大限に引き上げようと契約書のカスタマイズ提言をさせていただけますので、何時でも気軽にマサヒロへご相談くださいませ。