株式会社なのに、株主総会も、取締役会も開催不要!?
株式会社を中国語に直すと、「股份有限公司」になります。
株式会社だから、会社の主である「株主」が株主総会を開催して経営についての意思決定を行うのは当たり前なのでは?開催不要だと、取締役会で会社に関する全ての重要事項が決定され、コントロールが効かない恐れがありませんか?
なに!?株主総会が不要だけでなく、取締役会さえ取り払うことができるわけ?それでは会社は成り立つものでしょうか?
常識的に考えたら、株主総会又は取締役会なしの株式会社はありえません。ただし、一定の要件を満たす株式会社に、台湾の会社法はそれを許す法律設計を取っており、所定の手続さえ行えば問題なく運用可能となっています。
上記一定の要件や所定の手続は、果たしてどのようなものなのかについて、今週のマサヒロリーガルレポートで、軽く考察してまいりましょう!
目次
株主総会開催不要な株式会社の要件とは?
台湾の法律上、定時株主総会は特別な事由がある場合を除き、原則として少なくとも年1回開催必要で、事業年度終了後6ヶ月以内にこれを行わなければならないとされており(会社法第170条)、12月決算が主流な台湾においては、毎年の6月は大体定時株主総会の開催シーズンとなっています。(※2021年はコロナ勃発の関係で、5/24以降開催予定の定時株主総会が軒並み延期したという異例な状況が起きました)
しかしながら、原則ルールに大体例外措置が伴うのは、台湾会社法の基本構成となっています。
株式会社のうち、政府又は法人1社100%出資の会社は、株主総会が有する権限が全て取締役会に委譲される例外措置が、2001年11月12月で行われた法改正で既に追加されました。
複数株主を有するオーソドックスな株式会社と違い、株主に政府又は法人1社のみの株式会社は、たとえ株主総会を行ったところで、意見を相談できる相手がいないから、実質が伴わず、形だけの会議で終わってしまうため、“あんな意味不明なもの、やめにしようや”、と当局が判断するのでしょう。
取締役会開催不要な株式会社の要件とは??
株式会社は、上場企業をはじめとする公開発行会社に該当しない場合、原則として少なくとも取締役3名を置く必要があり(会社法第192条第1項)、監査役も選任しなければならないとされています。(会社法第216条第1項)
民間企業に過度な縛りを設けると、経済社会の発展にとって好ましくないとの反省精神から、主務機関は2018年8月の法改正で、非公開な株式会社を対象に、定款にその旨を記載する前提で、3名ではなく1名か2名の取締役を置くことを許可する、との例外的措置を取ることにしました。(会社法第192条)
そして、取締役1名で開催する取締役会は、上記政府又は法人1社で開催する株主総会と同じ、意味不明なので、取締役が1名又は2名の株式会社に取締役会の設置を不要にしたうえ、取締役が2名の会社は、会社法に定めた取締役会に関するルールを準用すればOK、とのルールも同法改正時に盛り込みました。(会社法第192条)
では、監査役はと言えば、原則として引き続き設置必要ですが、株主総会開催不要な、政府又は法人1社のみの株主構成を有する会社は、定款にその旨が記載すれば、監査役の設置も不要となります。(会社法第128条の1)
メリットってある?
役員構成のスリム化に定款の改訂がまず必要で、当局への会社変更登記に手間ひまが要るし、経費もかかるため、そこまでするメリットってある?
新規設立する株式会社だと、最初から取締役1名のみの会社構成にすることができるから、別途定款改訂や会社変更登記の手続きを行う必要がありませんので、手軽に一番シンプルな役員構成をすることができます。
一方、法改正以前に設立された会社で、役員構成のスリム化を図ることに、どういったメリットがあるかというと、主に以下のようものが考えられます。
役員給与や役員報酬についての経費削減
自社内から指名した名義役員ならまだしも、頭数を揃うために社外の専門家を依頼して、取締役又は監査役になってもらうには、専門家に支払う報酬による経費支出が必至です。
取締役の人数をできる限り減らすことで、こういった専門家報酬も発生しないわけです。
取締役会の開催にかかる労力や経費の軽減
取締役会の開催に、原則として会社法に従って召集必要です。テレビ会議で開催したり、書面のみで決議を行ったりすることができる現在では、取締役会の開催ハードルは以前よりだいぶ下がっていたが、親会社の命令一つで全てが決まる台湾子会社の場合、形のみの取締役会を開催し、形のみのペーパー決議を行うだけ空しく、かつ名義取締役にとって、そのような取締役会は時間浪費以外の何物でもないので、取締役1名にすれば効率UPにつながります。
罰則が適用されるときにおける損失低減
架空増資(見せ金増資等)を行った場合には、会社の責任者は5年以下の懲役、拘留若しくは50~250万TWDの罰金に処し、又は併科する。(会社法第9条)
台湾の会社法では、上記のように、会社の責任者を対象とする罰則が多く設けられており、一番えぐいのは、罰金額は会社責任者の人数だけ膨れ上がる仕組みです。
へぇ、会社の責任者は1人だけではないの?
法律上、会社の取締役のみならず、経理人(支配人)や清算人、監査役、検査役なども、その職務執行の範囲内においては、会社の責任者であるとされています。(会社法第8条)
そのため、会社責任者の人数だけ罰金が倍増する、といった会社法の罰則にふれてしまったら、取締役の人数が多い会社は罰金額が比較的重たくなります。
会社法に違反しないよう、細心の注意を払う必要は勿論ありますが、いざという時に備え、罰金額が否応なしに発生してもそれを最小限に抑えられる観点で、取締役の人数を法律が許す範囲でなるべく減らすのも一つのやり方であるかもしれません。
Attention!
※本稿は2022年1月11日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。