【役員全く変わってないのに、任期終わったら必ず「改選」必要?】答えは本マサレポにあり!

【役員全く変わってないのに、任期終わったら必ず「改選」必要?】答えは本マサレポにあり!

マサ様、貴社台湾現法の役員任期は今月末日に満了となりますので、役員改選に伴う登記申請を行う必要がありますよ~

上記のような連絡を会計事務所から受けたりする経験がありますか?台湾の会社法では、取締役や監査役などの役員は任期が最長3年であると定められており(会社法第195条同法第217条)、そのため、長くても3年が経つと、役員の任期が到来する仕組みとなっています。

なお、上場または店頭公開している会社でなくても、役員の任期は公開情報から簡単に調べられるため、各種代行業務を協力してくれている会計事務所は能動的にこういった情報をモニターし、必要に応じて上記のような連絡をしてくれるわけです。

一方、任期到来を迎える役員を変更しようとするならまだしも、メンバーチェンジを全く行うつもりがないのに、それでも手続代行料や政府手数料を支払って、わざわざ登記申請を行わなければならないのか、的な質問が湧いてくるかもしれません。

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「形だけの役員変更登記を絶対やる必要なのか」、「そのとおりにしなければ法によって何かしら処罰を受けるのか」、といったウヤムヤを一掃しましょう。Let’s マサレポです!

役員任期到来時に改選は絶対必要なのか?

取締役と監査役の任期が終了すると、例え役員メンバーが一切変更がなくても、原則として改選して登記申請を行う必要があります。もし改選が間に合わない、もしくは改選を失念してしまう、いわゆる「選任懈怠」があった場合、台湾のルール上、任期が既に終了した役員は、役員改選が行われるまでの間に引き続き役員の業務を行うことができ、罰されることはありません(会社法第195条)。

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なお、「改選が間に合わない」理由、例えば担当者がその他業務で忙殺されたり、ただ単に改選することを忘れたり、あるいはその他大人の事情で役員改選を決議するための株主総会を開催できなかったりするなどのいかんを問わず、任期が終了した役員に与えられる、「役員改選が行われるまでの間に引き続き役員の業務を行える」権利に影響が生じることはありません(経商字第09402188600号通達)。

ただし、上記のルールには1点例外があります。もし役員メンバーの一人又はその他社内の従業員が能動的に当局に対して、「うちの役員は任期が終わったのに、法律に基づいて改選しようとしない」と報告したり、企業内部の経営権争いが激しすぎて当局の目に留まったりなどの状況があったら、当局は期限を指定のうえ、会社に役員改選を命じることができるとされます。当局から当該命令を受けた会社は期限内に役員改選を行わないと、既に任期が終了した役員は自動的に解任される形となるので、留意が必要です(会社法第195条)。

役員任期到来時に改選は絶対必要なのか?

過料が発生するケースはあるか?

役員の任期が終わったけど、改選が間に合わない、という改選懈怠の状況があったら、上記説明したとおり、一旦現任の役員が引き続き役職を担う形となり、過料処分などの処罰を受けることはありません。

一方、改選が間に合わないのではなく、実際役員改選を行ったが、当局に対する登記申請をしていなかった、という「登記懈怠」の状況が発生したら、会社の代表者は1万NTD~5万NTDの過料に処せられ、過料処分を受けてなおこれを是正しようとしなかった場合は、過料額を引き上げるうえ、連続して処罰されます(会社法第387条)。

改選を行って、役員の人選に変更が生じたら登記申請は勿論必要だが、人選に全く変更が生じず、つまり全員重任しているから、登記申請を行う意味があるのか?

確かに、前任期の役員が100%続投すれば、登記できる変更事項がなさそうなので、形だけの登記をやっても意味が薄いかも、と思われがちです。実は、全員重任のケースであったとしても、登記すべき変更事項があります。それは「役員の任期」です。

会社は通常通りに改選を行っていけば、役員の任期は原則としてシームレスにつないでいきます。例えば毎回の役員改選は決まって4月1日に行うのであれば、任期の始まる日は改選日である4月1日で、終わる日は1~3年後の3月31日になります。この手本のような事例においては、任期の初日と終日は今までと何ら変わらないとはいえ、「年度」が確実に変わったため、それに伴う登記申請を行う必要性が生じてくるわけです。

なお、登記懈怠による過料処分の対象は会社ではなく、会社の責任者個人に対してなされるほか、過料を支払う義務があるのは、処分が下されたときの責任者ではなく、「登記申請を怠ったときの責任者」である点も要注意です(経済部58年2月27日商06853号通達)。

例えば、会社責任者のA氏は役員改選によって台湾での駐在が終わり、登記申請を行わないまま日本本社に帰任することとなったが、後任の責任者B氏は自らの任期中、当局から登記懈怠による過料処分通知書が届いた場合、当該過料はB氏ではなくA氏が支払うべきである点は要注意です。

過料が発生するケースはあるか?

改選が面倒いから、役員の任期をもうちょい長めにしてもよいか?

台湾の会社法では、役員の任期は最長3年とされることを冒頭にて説明しました。従って、登記申請の回数を減らす観点として、役員任期を1~2年から3年にすることは可能となります。では、会社定款を改定したり、株主総会で議決したりして、役員任期を前述より長い4年、5年、ないし6年にすることはできないかと言えば、答えはNOです(経済部80年11月15日商228118号通達)。何故なら、「最長3年」という設定は会社法によって定められた強制規定であり、定款の条項または株主総会の議決がそれに反したら無効とされるからです

改選が面倒いから、役員の任期をもうちょい長めにしてもよいか?

いつまでに登記申請を行ったらよいか?

役員の任期が終了したが、改選が間に合わなかった「改選懈怠」の場合には、登記申請を行う義務がなく、罰されることもありませんが、改選の事実があったにもかかわらず、事情はどうであれ、登記申請を行わなかった「登記懈怠」の状況があったら、過料を支払わされる可能性があります。

実は、登記申請すべき事由に合致し、1~2日以内に急いで手続きを行わなければならないというわけではありません。登記事項に変更が生じて15日以内に登記申請をすれば万事オーライです会社登記弁法第4条)。

15日の計算についてもう少し詳しく説明すると、役員改選を行う日の翌日を初日とし、それからの15日間は合法的に登記申請を行える期間です。また、当該15日の間にある祝日や休日は全部カウントされるが、15日目が祝日や休日に該当する場合は、その翌日が最終日とされます。(行政程序法第48条)。

上記15日の計算方法と強い関連性があるのは、登記懈怠による過料額を決定する以下のルールです。

  • 法定期間以内に登記申請を行わず、かつその遅延期間が1ヶ月未満の場合:過料1万NTD
  • 法定期間以内に登記申請を行わず、かつその遅延期間が1ヶ月以上3ヶ月未満の場合:過料2万NTD
  • 法定期間以内に登記申請を行わず、かつその遅延期間が3ヶ月以上6ヶ月未満の場合:過料3万NTD
  • 法定期間以内に登記申請を行わず、かつその遅延期間が6ヶ月以上1年未満の場合:過料4万NTD
  • 法定期間以内に登記申請を行わず、かつその遅延期間が1年以上の場合:過料5万NTD
いつまでに登記申請を行ったらよいか?

形だけの改選はするが、同じ人選が重任し続けても問題ないか?

役員候補者を多く抱える大会社とは違い、役員に就任可能な人選がそんなにない中小企業にとって、1~3年に1回の役員改選は、あくまでも違法にならない対策に過ぎません。そのため、「同じ人選が重任し続けても、本当に大丈夫か」問題が自然と考えるようになるでしょう。

台湾の会社法においては、会社の取締役と監査役に同じメンバーが就任し続けることに対して、それを禁止する条項は設けられていません。従って、任期延長のための役員改選こそ行ったが、ずっと同じ人たちに当選させ続けても違法にはなりません

一方、内部統制を重視する観点で、会社が自らの定款にて、一度役員に就任した人は重任できない、もしくは重任は1回のみとする、的な条項を作って、役員の担当者にできるだけ流動性を持たせようとするやり方は、むしろ法律によって禁じられています(経済部108年5月20日経商字第10802411360号通達)。

こういった定めからもわかるように、同様のメンバーが何度も役員に重任することは別に違法行為ではないのに対して、株主総会などの決議があったとしても、役員の重任を禁止する設定はできない形となります。

形だけの改選はするが、同じ人選が重任し続けても問題ないか?

今週の学び

事業内容を変更したり、定款を改定したりするなど、需要があるから実施した登記申請とは違い、任期終了だけが理由の役員改選は、やるだけ虚しさが募るかもしれません。その虚しさを少しでも解消していただこうと、「絶対に改選しなければならないものか」、「改選しなければどういったペナルティが伴うか」に関する情報を本マサレポから軽く仕入れしていただければ幸いです。

マサレポ、今週の学び

  • 任期終了による役員改選は原則として行うべきだが、改選が間に合わなかったら、当局から指摘が入る前までに、ペナルティなしで現状維持可能です。
  • 改選を行ったが、15日以内に登記申請を行わなかったら、1~5万NTDの過料に処せられる可能性があり、留意が必要。
  • 役員任期は長くとも3年。定款をいじっても、株主総会から満場一致の承認が得られても、それを超える年数を設定できません。
  • 役員の重任を会社内部のルールで禁じることはできません。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年11月13日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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