【会社がお金を他の会社に貸すのが違法?社員への貸付もできないのか?!】台湾の会社法をCheck!

【会社がお金を他の会社に貸すのが違法?社員への貸付もできないのか?!】台湾の会社法をCheck!

付き合いのある会社は資金繰りでちょっと困っていて、影響が出ない程度でお金を融通してあげたけど、大丈夫なのか?

会社のお金は全部俺が出した資本金で成り立っているから、金欠したとき、いつも法人口座から軽く拝借しているんだが、何か問題でも?

重い病気を患うペットに手術が必要だけど、手元のお金が足りないと相談しにきた社員がおり、非常に貢献度の高い社員なので、何とかしてあげたいが、会社のお金を貸してもよいか?

会社は自社資金で同業者に、株主に、もしくは社員に貸し付ける事例はたまに聞きます。しかし、一般的な会社は、正式に公的機関から許可をもらい融資事業を合法的に行っている銀行ではないので、「他人にお金を貸す」行為を行ったら果たしてOKなのか、という問題が頭をよぎります。それについて、台湾の法律ではどのように規定したのかを検証してみましょう。

その他会社にお金を貸してもよいか?

持ちつ持たれつの関係にある取引先が急に資金繰りが悪化したり、日ごろから友好的に情報交換をしている同業が黒字倒産の危機に瀕していたりして、たまたま自社の運転資金にも余裕があった場合は、助けの手を差し伸べようと考えるのが普通です。こういった「企業間貸付」に関して、台湾の会社法では、以下いずれかの要件を満たせばOKとされています。

  • 資金の貸付先は取引した実績のある事業者
  • 貸付期間が短く、かつ貸付額が貸し付けた会社の純資産の40%を超えない

つまり、自社の仕入先または得意先に貸し付けるなら、金額制限は特に設けられておらず(経商字第09302087680号解釈通達)、取引関係がない会社に対しても、短期で定額を超えなければ、貸し付けてもいい、とのルールであり、貸付先についても、会社のみならず、法人格を有さない個人事業主も対象となりえます。

取引関係のあるなしに関しては、物品の売買やサービスの提供など、「経済的実態が伴う取引」がなされているかが原則的な判断基準となっています。そのため、会社の登記簿謄本に記載された事業内容を根拠に、互いが同業であったり、または潜在的なビジネスパートナーであったりなどを主張して、純資産40%超の規模の資金貸付を行うことはNGとされます(商字第09202242030号解釈通達)。

なお、企業間の貸付額が純資産の40%を超えるかどうかの計算は、「合計残高」で判断すべきであり、既に返済を受けた部分は、純資産40%で計算した上限額にカウントしなくてよいともされます(経商字第09500191240号解釈通達)。

ちなみに、何をもって「短期」と判断できるかと言えば、会社法の本文においてはその説明がなされていないものの、主務機関が別途発行した解釈通達では、「1年または1営業サイクルのどちらか長いほう」との認定がなされています(経商字第09002270580号解釈通達)。従って、取引関係のない会社とは、一度に3~5年間の貸付を行ってはいけない形となります。

その他会社にお金を貸してもよいか?

株主にお金を貸してもよいか?

「会社のものは俺のもの、俺のものも俺のもの」と考え、会社のお金を自由奔放に運用したりする中小企業のオーナー社長は少なくありません。確かに、会社の資本金は株主が出したのは事実だが、それが一旦資本金として株主のポケットから会社の法人口座に入金された後、会社が存続する限り、株主は会社法などを無視して、それらのお金を任意に運用することができなくなります。

そして、勿論のことながら、株主も事業主のケースと同じく、会社からお金を借りようとする場合、所定の法的要件を守る必要があります。つまり、株主は投資先の会社と取引関係のある法人または個人事業主であれば、制限なしで企業間貸付を行うことができ、取引関係のない法人または個人事業主であった場合、短期で上限額を超えなければ、合法的に投資先からお金を借りることが可能です(経商字第09202266010号解釈通達)。ただし、個人株主には上記の法則は適用されません

なお、台湾の所得税法では、会社は株主その他第三者に貸し付けた場合、貸付期間中いかなる利息もとらなかったり、もしくは相場より著しく低い利息しかとらなかったりすれば、台湾銀行の標準金利(2023年現在では約3%弱)に基づいて計算したみなし利息収入を計上し、その分納税しなければならないとされます(所得税法第24-3条)。そのほか、株主に貸し付ける際には、「株主往来(株主取引勘定)」という勘定科目で仕訳する必要があります。その他勘定科目と比べたら、税金のごまかしによく利用される「株主往来」は台湾の税務当局に目を付けられやすく、金額次第で税務調査のトリガーにもなったりする、といったデメリットがある点も留意が必要です。

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社員にお金を貸してもよいか?

会社が貸付できる対象は法人または個人事業主に限定され、個人が対象外とされています。そのため、個人に該当する社員には、会社がお金を貸すことができません。しかしながら、生活苦に陥った社員に軽く支援する気持ちで、会社が資金を貸し付けたりする事例は結構あるようです。それは、ただ単に会社はそれに関する法律を知らない、と安易に結論付けてよいのでしょうか?

確かに、会社は社員に資金を貸し付けることは法に触れます。ただし、貸付ではなく、「給料の先払い」という形で、当月分の給料とは別に社員に支払えば大丈夫です。

会社と社員とは切っても切り離せない、いわば「相互依存」の関係にあります。たとえ会社が予定より早く給料を社員に支払ったとしても、当該「先払い給料」は通常の貸付とは違うため、それを行った会社は会社法の違反にはなりません。ただし、先払いした給料が通常の月給額をはるかに超える場合はこの限りではない、というのは当局の見解です(経商字第10102144470号解釈通達)。

一方、会社から金銭の貸付を受けた社員が全額返済する前に退職した場合、上記の「相互依存」関係は既になくなったわけなので、会社は当該社員に対して貸付金の一括返済を求める権利が生じるが、もし貸付を受けた社員は自主退職ではなく、会社都合で解雇されたり、会社から不利益を受け否応なしに雇用関係を解消したりする場合は、会社が社員の退職に伴う借金の一括返済を求めることは妥当ではない、との司法見解が示されています。

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会社法に違反して貸し付けた場合の罰則

信号無視したら過料、脱税しても過料。では、会社が会社法に違反して、取引関係のない会社に純資産40%超の規模の資金貸付を行ったり、個人に資金貸付をしたりしたらどうなるかというと、答えはノーペナルティです。

違法行為に対する罰金がないなら、法を守る必要はあるのか?

ノーペナルティとは言いつつも、会社がルールを守らずに資金貸付を行った場合には、それなりのマイナス効果が生じてきます。

  • 貸し付けた会社の責任者は、貸付を受けた者とともに返済の連帯責任を負う。
  • 貸し付けた会社が違法貸付により損害を受けた場合、同社の責任者はそれを賠償しなければならない。

違法するまで貸し付けるかどうかの判断は、原則として会社の責任者が行うため、決定権を有する者に責任を問う、という法律設計は頷けましょう。

従業員の行いで会社が損したら、その従業員に損害賠償を請求できるものなのか?

裁判実務においては、会社が従業員に対する損害賠償請求のケースはどういった扱いになるかをみてみましょう。

会社法に違反して貸し付けた場合の罰則

今週の学び

餅は餅屋。資金を調達する正攻法は、政府から許可を得て合法的に融資事業を行う銀行に相談することです。しかし、実務的には、利便性を考慮し知り合いの会社などにお金を借りたりするケースは少なくありません。このようなやり方は別に法的にNGとなるわけではないが、会社法というルールブックをしっかり守るうえで実施することが必要です。

マサレポ、今週の学び

  • 付き合いのある会社なら制限なく資金貸付を実施可能だが、付き合いのない会社とは短期で、かつ純資産40%を超えない範囲でそれを行う必要があります。
  • 株主に対する資金貸付も会社法を守る必要があるほか、税務上のリスクも要留意です。
  • 社員への資金貸付は不可だが、給料の先払いは問題なく行えます。
  • 違法な資金貸付に対する罰則は設けられていないが、会社の責任者にはそれに関する連帯責任と損害賠償責任を負わなければなりません。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年10月29日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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