会社の役員が就業ゴールドカードの所持者であれば、会社の登記手続きで優遇が受けられる!?

会社を立ち上げるときは勿論、会社の役員に変更が生じたり、定款の改訂や事業内容の調整を行ったりする場合には、原則として設立日又は変更基準日の翌日から15日以内に、台湾の経済部に対して登記手続きを行わなければなりません。

マサヒロはクライアントから依頼を受け、前述の登記手続きを行うための必須アイテム―会社設立・変更登記申請書を入手すべく、経済部の公式HPをチェックしてみたら、数年間ずっと同じフォーマットで提供され続けていた同申請書は、なんと、今年、2022年3月17日に更新がなされたことがわかりました。

気になって内容を確認してみたら、“会社の責任者、取締役又は監査役に就業ゴールドカードを持っているか?”という設問が新たに追加されたことに気が付きました。

会社の役員に就業ゴールドカードを持っているかどうか、会社の登記手続きに何か関係ありますか?そもそも就業ゴールドカードとはどのようなカードですか?

台湾の就業ゴールドカードの誕生日は、2018年2月8日になります。

当時は、海外からもっと多くの優秀な外国人に台湾へ来てもらい、そして1日でも長く滞在してほしいということで、「外国籍専門人材の招へい及び雇用法」を施行し、同法第9条に基づき、就業許可・居留ビザ・居留証・再入国許可等4つの機能を兼ね備える就業ゴールドカードの制度が作られました。

では、就業ゴールドカードを入手することで、具体的にどういったメリットがある、入手方法とは何か等を含め、今週のマサヒロリーガルレポートにて、就業ゴールドカードに関する基礎知識を共有させていただくうえ、経済部が新たに会社登記の申請書に追加した同カードに関する設問の謎を解明していきたいと思います。

就業ゴールドカードを入手するメリット

就業ゴールドカードの所持者は、以下6+1のメリットを享受することができるとされています。

①勤め先を自由に変更できる就業許可の機能を有する

日本本社の指示を受け、台湾に駐在することとなったら、台湾の就業許可の取得は一般的に、駐在員が台湾へ渡航する前に取得します。

ルール的には、駐在先の会社名義で発行申請を行わなければならないものなので、駐在先が途中で別の台湾現地法人に変わると、別途就業許可を申請する必要があります。

一方、就業ゴールドカードに付与される就業資格は、特定の台湾会社にしか所属できない機能限定なものではなく、ゴールドカードの使用期限内であれば、何時でも自由に転職したり、兼業したりすることができるのみならず、会社を作って起業したり、他社へ投資したりする権利も与えられています。

②「家族滞在」資格で配偶者及び未成年子女が台湾居住可能

就業ゴールドカードを入手していない日本人駐在員でも、家族滞在関係で、日本に居る配偶者や未成年子女の呼び寄せが可能なので、この点は、就業ゴールドカードの独占メリットではありません。

しかし、就業ゴールドカードの所持者が行う家族呼び寄せビザの申請案件は、通常のケースより通りやすいと言われています。

③配偶者及び未成年子女は居住日から台湾の健康保険加入可能

台湾現法の取締役社長等の責任者として台湾に駐在する場合、台湾健康保険の加入は、原則として台湾に入ってから6ヶ月を待たなければなりませんが(責任者レベルの駐在員が台湾現法とは雇用関係にあった場合はこの限りではない)、就業ゴールドカードの所持者は、当該縛りを受けることなく、台湾の居住日から保険加入が可能で、その配偶者及び未成年子女も同じです。この点、就業ゴールドカードを所持していない日本人駐在員と共通です。

④個人所得税での優遇が受けられる

台湾駐在等仕事の関係で、就業ゴールドカードを取得し、同カードの有効期間内、台湾での居住日数が通算182日/1年を超過しかつ年収が300万新台湾ドル以上であったら、こちら2要件を満たした年から5年の間で、300万新台湾ドルを超過した金額の半分が非課税になるほか、海外所得も原則として非課税である、という外国人特定専門人材も享受可能な税務上の優遇措置が受けられます。

⑤直系尊属の訪台で最長1年間滞在可能なビザを取得可能

就業ゴールドカード所持者の直系尊属(父母、祖父母等)は1回の申請で、最長1年間有効の訪台ビザを入手可能という特典が用意されています。

ただし、コロナ水際措置の関係で、残念ながら、本件特典は当面の間使用不可とされています。

⑥台湾の入国審査で優先カウンターが使用可能

学術やビジネス関係で、台湾入国歴が年に3回以上であったら、常客証(Speedy Immigration)」の発行申請ができます。

同証をもってすれば、台湾の入国審査で専用レーンを利用し時短で関連手続きを終えることができます。

就業ゴールドカードには、「みなし常客証」の効果が付与され、1年に3回の台湾入国という要件を満たしていなくても、前述の入国審査時の優遇が受けられます。

⑦伝説の7つ目のメリット、会社の登記手続きで優遇が受けられる

内容の詳細については、本レポートの最後の段で詳しく共有させていただきます。

就業ゴールドカードの申請に必要とされる資格要件

資格要件の確認について、経済、金融、文化芸術、建築、国防、法律、テクノロジー、教育、スポーツ等、9つの分野の中から1つを選んで、審査当局がそれぞれの分野に求める実績を証明可能な資料を提出できるかをチェックする、との形で行います。

比較的多く選択されている経済分野を例に、どういった資格を有すれば就業ゴールドカードを入手できるかを以下検証してみます。

  • 台湾又はその他国の経済・産業界で働いたことがあって、かつ過去3年間の月給又は平均月給が16万新台湾ドルに達すること(労働発管字第10805114652号通達)
  • 高度技術の研究開発拠点、グループ企業の本社、又はグローバル企業のマネジメント層又は管理職を務めること
  • 重要度の高い技術を有し、それに関する学部の博士号を取得、なおかつ国際発明賞を受賞もしくは関連業界における4年以上の勤務経験を有すること
  • 半導体、オプトエレクトロニクス、ICT、回路設計、バイオテクノロジーと医療機器、精密機器、運搬具、システムインテグレーション、コンサルティング、クリーンエネルギー等に関する製造業・技術サービス業の専門職として、8年以上の勤務経験を有すること
  • 広告、プロダクトデザイン、ビジュアルデザイン、ファッションデザイン、デジタルコンテンツ等文化事業に従事する会社で、専門職又はコーディネーターとして8年以上の就業経験を有すること
  • 台湾に必要とされる特別なノウハウ又はグローバル経験を有する人材で、かつ主務機関に認められること

前述6つの資格要件には、それぞれ異なる実績証明用の書類を提出必要で、申請者にとって、書類の取り寄せで比較的手間がかからない資格を見極め、申請手続きに取り掛かることがお勧めです。

(出典:就業ゴールドカード申請用サイト)

就業ゴールドカードの申請方法

就業ゴールドカードの発行申請は、申請者自ら行うか、雇用主経由で行う、若しくはマサヒロのような代理人を立てて手続きを委託する等、この中から1つを選択することが可能です。

手続きの流れは以下のようなイメージです。

必要書類の準備・作成
有効期限が6ヶ月以上のパスポートのコピー、申請日6ヶ月内に撮影した顔写真、予め決定した資格要件を立証可能な実績証明、以前発行された台湾ビザと台湾居留証(あった場合)等を準備します。こちらの資料は中国語又は英語以外の言語で作成された場合には、別途中国語又は英語の参考用訳文を用意必要です。
申請用アカウントの作成と申請者情報の打ち込み
申請用サイトにアクセスのうえ、アカウント名とパスワードを設定してから、所定の申請者個人情報を順次に打ち込んでいき、台湾又は日本国内で申請するか、希望するカードの使用可能年数等を選択します。
必要書類の提出
ステップ1で用意した必要書類を申請用サイトにアップロードします。
申請手数料の支払い
申請手続きが一通り終わったら、申請用サイトにて、クレジットカード、e-Gov電子納付、ネットバング等のオンライン決済、もしくは台湾のコンビニ決済を利用し、申請手数料の支払いを行います。
日本で申請を選択した場合
審査当局から許可通知を受けたら、通知書とパスポート原本をもって、所轄の台湾大使館・領事館にてパスポートの照合作業を行います。
カードの受領
訪台後、事前に受けた就業ゴールドカードの受領通知、パスポートと居留証(あった場合)、ネットでダウンロード可能な手数料支払領収書をもって、所轄の台湾移民局にて受領。(代理受領可能)

就業ゴールドカードの発行申請からカードの受領まで、書類の準備期間や書類に不備があった場合を除き、おおよそ60日かかる計算です。

台湾で申請手続きを行おうとする場合には、台湾ビザの残留期限が60日以上であるかを予め確認することが必須で、もし審査途中において、台湾ビザが期限切れになって、かつビザの延期申請ができなかったら、一旦台湾を出国しなければならないリスクを回避するためです。

就業ゴールドカードの使用可能年数

申請手続きを行う際に、予め1年か2年、3年ものを選択できます。使用年数が増えれば増えるほど、申請手数料が膨れ上がる仕組みなので、申請者個々人の需要に応じて、最適な長さを選んでいただくことがお勧めです。

また、就業ゴールドカードの所持者は、一定の要件を満たしたら、期限到来日の4か月以内において、カード使用期限の延長申請を行うことが可能で、最長3年間の延長が認められます。

就業ゴールドカードの申請手数料

就業ゴールドカードの申請手数料は、使用可能期限によって、金額が以下のように変わります。(申請者が日本国籍の場合)

  • 1年有効:3,700新台湾ドル
  • 2年有効:4,700新台湾ドル
  • 3年有効:5,700新台湾ドル

また、有効の台湾居留証を保有している申請者は、就業ゴールドカードに切り替えようとする場合には、切り替え手数料は以下の通りです。

  • 1年有効:1,500新台湾ドル
  • 2年有効:2,500新台湾ドル
  • 3年有効:3,500新台湾ドル

ちなみに、就業ゴールドカードの使用期限が切れる前に行う延期申請は、かかる手数料も以上と同じです。

本件手数料のお支払いは、オンラインでカード決済を行おうとする場合には、JCBやVISA、マスターカードは使用可能ですが、2022年3月27日時点でアメックスはまだ使用不可です。(中国の銀聯カードも同様使用不可)

一方、無事手数料の支払い手続きが終わったとしても、発行されるカードの使用可能期限は、審査当局の裁量権によって、申請者の希望年数より短くなったりする場合があり、過剰に支払った手数料も返金しないので、留意しておきましょう。

(出典:就業ゴールドカード申請用サイト)

伝説の7つ目のメリット、会社の設立登記や変更登記にかかる審査時間が短縮

台湾経済部が今年、2022年3月17日に更新を行った、会社設立・変更登記用の公式申請書に、会社の責任者、取締役、監査役等役員メンバーが就業ゴールドカードの所持者であれば、会社の設立登記・変更登記を優先に審査を行う、との注記事項が追加されました。

登記関連の法律には、そのような改正は特になされていないため、何を根拠にこういった優遇策を打ち出したのかを知りたく、経済部の相談窓口に電話のうえヒアリングを行いました。

法的根拠について聞かれたら、担当者の方が一旦口をつぐんでしまい、少し間を置いたら、この注記に関しては、特に法的根拠がなく、ただ単に、就業ゴールドカードの取得要件を満たす外国人に、もっと積極的に同カードを取得していただくための奨励策です、という風な回答を受けました。

会社設立登記が3日、定款の改訂が3日、会社住所の変更登記が4日、役員の改選が5日等、会社の登記申請に要する標準的な審査時間は予め定められており(高雄市政府の公開情報より)、会社の役員が就業ゴールドカードを取得することで、審査日数がそれ以上短縮できるのであれば、ちょっと嬉しいかもしれませんが、それのみを理由に、就業ゴールドカードの発行申請を行ったりする外国人の方が少ないのではと思料しております。

Attention!

※本稿は2022年3月28日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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