台湾駐在員の配偶者も申請できる?!【パートタイム労働許可】

移民局が発行する居留証を有する台湾人の外国籍配偶者は、労働当局に対して労働許可を申請せずとも、台湾国内で自由に就職したり、転職したりすることができるとされます(就業サービス法第48条)。

一方、家族滞在の在留資格で来台し、移民局から居留証を受領した台湾駐在員の配偶者には、前述のような「みなし労働許可」が付与されていないため、台湾で就職するには、台湾駐在員と同じく、労働者本人に求められる資格要件をクリアするとともに、そこそこの給与を雇用先からもらわなければならず、雇用先の会社も一定の資本金要件又は売上要件を満たす必要があるなど、ハードルが高いイメージです。そのため、せっかく台湾へ来て、自らのエキスパートを発揮しようと、就職意欲満々であるにもかかわらず、法律の制限で諦めるしかない台湾駐在員の配偶者が少なからずいるかもしれません。

実は、台湾の法律においては、台湾駐在員の配偶者のみ申請可能な「パートタイム労働許可」という制度が用意されています。当該制度では、やや厳しいと思われる雇用先の資本金要件又は売上要件、配偶者本人に対する給与条件などがだいぶ緩和されるだけでなく、就職先も会社に限定されておらず、個人事業主でも選択肢となりえるという、比較的使いやすい申請方法となっています。以下詳しく紹介します。

パートタイム労働許可の申請に必要な個人要件

台湾駐在員の配偶者は台湾で働くためには、まず労働許可を取る必要があるが、台湾駐在員が取ったのと同じ労働許可を取得するのにはハードルが高いので、代わりに資格要件が緩和されるパートタイム労働許可を取得可能である、と冒頭にて説明しました。かといって、「台湾駐在員の配偶者」であれば、無条件にパートタイム労働許可を取得できるわけではありません

台湾就労許可/就労ビザの申請代行

1日でも早く台湾に長期滞在したくて、事業展開が二の次だという風に考えている場合は、たまたま日本でご自分の会社も持っていたら、手続の所要時間が一番短い代表者事務所…

パートタイム労働許可を申請する前に、まず台湾駐在員の配偶者本人が、以下いずれかの条件を満たしたかをチェックする必要があります。

  • 専門職又は技術者の試験に合格し、証明書又は開業資格を取得した者
  • 関連学部の院卒者、もしくは関連学部の大卒者で2年以上の関連経歴を持つ者
  • グローバル企業での勤続年数が1年以上で、台湾への転勤を命じられた者
  • 専門的な訓練を受け、もしくは独学で5年以上の関連経験を有し、かつ独創的な考え及び特筆すべきパフォーマンスがあった者

もし以上4つの個人要件を全部満たしておらず、それでも申請してみようとすれば、雇用先経由で審査当局に対して個別相談を行う方法も用意されています。当該方法においては、「申請者ならではの何かをアピールできる立証材料」をできるだけ審査当局に提出し、審査当局は関連部署の代表者を集め、労働許可を特別に当該台湾駐在員の配偶者に出すかどうかの審議を行います。成功する可能性は決して高くなく、審査時間も通常申請より相当かかるが、ダメ元でチェレンジしてみることもありでしょう。

パートタイム労働許可の申請に必要な個人要件

パートタイム労働許可の申請が可能な事業

パートタイム労働許可の申請制度に、以上の個人要件が求められるほか、就労先が行う事業の種類にも台湾駐在員のと同様な制限がかかっています。原則として、配偶者の勤め先が以下15種類の事業のいずれにも該当しなければ、パートタイム労働許可の申請が不可となっています。

  • 建築工事関連事業
  • 交通事業
  • 財務・税務・金融サービス業
  • 不動産仲介事業
  • 海外移住支援事業
  • 弁護士・弁理士事務所
  • 技術士事務所
  • 医療保険事業
  • 環境保護事業
  • 文化・スポーツ・レジャー事業
  • 学術研究事業
  • 獣医院
  • 製造業
  • 卸売業
  • その他事業

いわゆるその他事業というのは、例えば飲食業又は料理学校がそれに該当します。

勤め先は上記いずれかの事業にも当てはまらないけど、比較的に専門性が要請されるところであれば、審査当局との個別相談でパートタイム労働許可を申請することも可能です。

もし雇用先が指定された15種類の事業に該当せず、個別相談も叶わないのであれば、雇用先の経理人(又は支配人)に登記のうえ、「経理人資格」でパートタイム労働許可を取得する、という最終手段もあります。しかしながら、「経理人資格」で労働許可を取ることができれば、最初から通常の労働許可を申請すればよいから、回りくどく配偶者専用のパートタイム労働許可を取得とは考えられないため、現実味のない最終手段と言えなくもありません。

パートタイム労働許可の申請が可能な事業

要件緩和その①―資本金要件又は売上要件がなくなる!

企業内転勤などで来台する台湾駐在員が取得する労働許可には、設立して1年未満の会社なら資本金500万NTD以上、設立して1年以上の会社なら直近1年間又は直近の過去3年間の平均売上高が1千万NTD以上、などの資本金・売上要件が要求され、零細企業にとってはいささか厳しい要件となったりするかもしれません(審査基準第36条)。

一方、台湾駐在員の配偶者のために用意されるパートタイム労働許可の申請制度においては、上記のような資本金・売上要件が免除されるほか、一番嬉しいことに、雇用先が会社ではなく、法人格を有さない個人事業主であっても利用可能であり、極端な話し、年間売上が100万NTD未満で個人が経営する事務所でも問題ないという、配偶者の方には自由に雇用先を選ぶ権利が確保されています。

補足ですが、もし外国人の雇用先が財団法人または社団法人に該当する場合、前者には拠出した財産が1,000万NTD以上(設立して1年未満)、直近1年間又は直近の過去3年間の年間平均支出額が500万NTD以上、後者には社員数50名以上、などの要件が設けられているが(審査基準第37条)、パートタイム労働許可の申請制度を利用すれば、これらの要件も免除されます

要件緩和その①―資本金要件又は売上要件がなくなる!

要件緩和その②―月給47,971NTDルールがなくなる!

台湾駐在員を雇用するための1ヶ月の最低賃金は47,971NTDだとされています。

一方、台湾駐在員の配偶者が台湾国内で働くために申請可能なパートタイム労働許可には、上記の月給要件がなくなり、代わりに登場したのは200NTD以上の時給要件です(労働発管字第10605154981号通達)。

「パートタイム労働許可」はそのネーミングのとおり、パートタイム出勤を中心として作られた制度です。そのため、一般に馴染む月給要件ではなく、時給要件が要求されるわけです。今年の法定最低時給176NTDを考えると、時給200NTDという設定は決して難しい注文とは言えず、月給47,971NTD以上という通常要件と比べたら、結構楽な条件となりましょう。

なお、「パートタイム」労働許可と名付けられたので、何かしら就労時間の制限がかけられているのでは、と普通に考えたりします。実のところ、この制度にははっきりとした時間制限が定められておらず、台湾の労働法に定めた出勤時間や残業時間の制限さえ守っておけば、就労時間の定めは原則として労使間の協議に任せられる形です。

要件緩和その②―月給47,971NTDルールがなくなる!

見落としがちなウィークポイント?!

前述のように、台湾駐在員の配偶者のみ申請できるパートタイム労働許可には、個人要件がそのままだが、雇用先に求められる資本金要件・売上要件、及び月給に対する最低保証額がなくなり、通常バージョンの許可より入手する難易度が爆下がったため、その気さえあれば大体問題なく取れそうです。そうとはいうものの、実はパートタイム労働許可には見え隠れするウィークポイントが内蔵されています。

パートタイム労働許可は、台湾駐在員が自らの労働許可を取得した後であれば、何時でも申請可能だが、許可が下りた時期に関わらず、パートタイム労働許可の有効期間は長くて台湾駐在員に許可された期限を超えることはありません。例えば、台湾駐在員が労働許可を取得した翌日に、その配偶者の方がパートタイム労働許可を申請し、そして2週間後許可が下りたら、一度に3~5年弱の間に台湾でアルバイトできるのに対して、配偶者の方がパートタイム労働許可を申請するタイミングが、台湾駐在員が労働許可を取得した2年後ぐらいの時期であれば、許可される就労期間は長くて1~3年となる形です。

なお、台湾駐在員が自らの駐在期間中に、通常5年以上の台湾居住実績が必要だが、一定の要件を満たすと、2~4年の実績で入手可能な台湾永久居留証を取ったら、雇用先経由でしか申請できない通常の労働許可を取得する代わりに、個人名義で永住者専用の労働許可を申請することが可能とされます就業サービス第51条)。「永住者専用の労働許可」が下りたら、雇用先からもらった駐在員用の労働許可が即失効となり、使用期間がそれと連動する配偶者用の「パートタイム許可」もそれによって効力が失われてしまうため、留意が必要です。

居住年数5年未満であっても台湾永久居留が可能に!

コロナの水際対策でビジネス関係でのビザ申請がなお許してくれない空気のなかであっても、優秀な外国人を台湾に引き留める要因を少しでも増やそうと、専門性を有する仕事…

見落としがちなウィークポイント?!

今週の学び

台湾駐在員とともに来台する配偶者の方は、毎日出勤する台湾駐在員の代わりに、家の切り盛りを行う必要があるため、異国で職場経験を積もうと就労意欲高いであるにもかかわらず、活用可能な時間に限りがありフルタイムの仕事に不向きのほか、アルバイトの時給のみでは、通常の労働許可を申請するのに必要となる月給の最低保証額の水準にも届きにくいため、就職することを断念せざるを得ない、といった残念事例をできるだけなくし、優秀な外国籍配偶者の方に台湾で働くことを通してもっと素敵な異国間交流をしていただこうと、今回紹介した「パートタイム労働許可制度」が開発されたそうです。興味のある方は、是非活用してみてください。

マサレポ、今週の学び

  • パートタイム労働許可の制度は、雇用先要件及び賃金要件が比較的緩いため、個人要件さえクリアできれば、大体問題なく利用可能です。
  • 雇用先の事業内容には制限があったものの、審査当局に個別相談すれば、融通を効いてくれる可能性があります。
  • パートタイム労働許可の使用期間は、台湾駐在員が持つ労働許可のと一緒である点は要留意です。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年10月15日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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