【台湾の永久居留証を取ったら、台湾に住んでいなくても台湾の健康保険料を支払い続ける必要があるのか?】―台湾永久居留証の所有者なら気を付けるべき知られざるルール!

【台湾の永久居留証を取ったら、台湾に住んでいなくても台湾の健康保険料を支払い続ける必要があるのか?】―台湾永久居留証の所有者なら気を付けるべき知られざるルール!

台湾現地法人のためにあれこれ尽くしてあっという間に満5年。本社から帰任命令書が出れば台湾とはおさらばだから、ずっとここに住んでいるわけではないが、帰任する前に、記念として台湾の永久居留証を取っておけば、台湾へ出張したり旅行したりするとき、通関手続きが比較的楽だし、帰任時に入手した台湾の運転免許証もそのまま使って台湾で運転することもできる、というように考え、満5年の節目にすかさず移民局に永久居留証の申請を行う駐在員の方は少なくないようです。

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駐在員として台湾の就労許可と居留証をとって、そして5年間台湾に長期居住して取得した永久居留証は、たとえ所有者が日本に戻って、4年+364日の間に一度も台湾に入国したことがなくても、居留証が失効することはないので、手軽にカードをキープできる点は永久居留証の申請を促す要素と考えられましょう。

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NT$1万の手数料を支払ったら終身有効、満75歳まで台湾の運転免許証を使用可能、5年間1回でも台湾に入国したらカードが失効にならないなど、一見メリットしかない台湾の永久居留証には、実は一つ知られざるデメリットがあります。それは、「台湾の健康保険料の支払い義務」です。

台湾に住んでいるならまだしも、日本に住んでいて、かつ台湾の病院とかへも全く行っていないのに、永久居留証を持っているだけで健康保険料を支払わなければならないわけ?!

以下、実例を見ながら、台湾永久居留証の所有者に課される健康保険料の納付義務についての法的根拠を共有のうえ、保険料を合法的に節約できる回避策を紹介させていただきます。

〇〇人のA氏は学習塾の教師として2000年に台湾の就労許可と居留証を取得して台湾に移住し、そして2011年12月にめでたく台湾の永久居留証をゲットしました。

A氏は2013年10月に学習塾をやめ、同学習塾の名義で加入した健康保険も外されたが、その後、次の就職先の名義では健康保険に再加入することなく、健康保険に関するいかなる給付も受けずに台湾に居住し続け、そして2017年9月中に帰国しました。

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永久居留証を保有しながら帰国したA氏は、2018年8月に台湾に来て2週間弱の短期滞在をして帰国しました

2022年12月、3年ぶりに台湾に再入国したA氏は台湾で再就職する意志があるかどうかは不明瞭だが、無職の状態で同年同月に区役所が運営する国民健康保険への加入を申し込みました。

すると、健康保険局からA氏に対して、2018年1月から2022年12月に至るまでの5年間の健康保険料を一度に支払え、というA氏にとって青天の霹靂ともいえる納付書が送りつけられました。学習塾をやめたとき、健康保険の脱退手続きを確実に行い、区役所の保険に加入するまでの間においても、健康保険証を利用して病院での診療を受けたことが一切なく、それに2018年の2週間短期滞在を除き、2017年9月の帰国から2022年12月の保険再加入までの間はずっと台湾に住んでいなかったにもかかわらず、5年分の健康保険料を納付しなければならないというのはどういうこと?と憤りを覚えたA氏はただちに保険当局に対して不服申し立てを行いました。

しかし、A氏の抗弁も空しく、不服申し立てがあっさりと退けられ、5年分の国民健康保険料を納付する義務から逃れることができませんでした(衛部争字第1123400072号)。

こんなこともありました…

台湾現地法人での駐在期間が終わり、まだ期限が残っている就労許可を当局に返上し、現地法人名義で加入した社会保険の脱退手続きもしっかり行ってから帰国しており、日本にいる間も勿論台湾の医療機関の世話になることはないので、台湾の永住権を持っているけど、それのみの理由で、台湾の健康保険料を支払い続ける義務が生じるとは思わない、と考えたりするのは普通です。上記の実例に登場する、永久居留証を取得したA氏も多分同じ考え方を持っているので、保険局からいきなりNT$数万の保険料納付書が届いたときに大変戸惑っていることは想像に難くありません。実は、台湾の関連法律では以下の定めがあります。

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台湾の居留証明書を持ち、かつ以下いずれかの資格を満たす者は、台湾の国民健康保険に加入しなければならない。

  1. 台湾に居住して満6ヶ月。
  2. 特定の雇用主に雇われている者。
  3. 台湾で出生した新生児。

上記の「居留証明書」とは何を指すのか、いわゆる「6ヶ月」はどのように計算したらよいのかについて、法律では次のように定めています。

「居留証明書」とは、台湾地区居留証、台湾出入国許可証、外国人居留証、外国人永久居留証、及びその他国民健康保険の主務機関により台湾地域での長期居留が認められた証明書を指す。

「台湾に居住して満6ヶ月」とは、台湾に入国した後、連続して6ヶ月間居住すること、またはその間に一度出国して30日を超えない場合、その出国日数を除いた実際の居住期間を合算して6ヶ月に達することを指す。

「居留証明書」を持ち、かつ「台湾に居住して満6ヶ月」の者は、職業がなく、かつ被扶養者として保険に加入できない場合、本法第10条第1項第6号の2の区分で国民健康保険に加入しなければならない。

以上の法律からも分かるように、台湾の居留証の発行を受けてから6ヶ月以上台湾に住んでいると、台湾の健康保険に加入することが義務付けられます。また、「台湾に居住して満6ヶ月」という要件は永久居留証の取得によって一旦リセットされるような特例は設けられていないため、台湾での勤め先との雇用関係が解消し、会社名義で加入した健康保険を外されても、永久居留証のような「居留証明書」を保有している限り、無職であっても、その他区分で健康保険に加入しなければならないとされています。前述のルールの存在は、まさに保険料を徴収された期間にほとんど台湾にいないA氏に健康保険料の追加納付を求められた原因です。

永久居留証を持っているだけで、台湾の健康保険料を支払い続ける根拠ってある?

実例に登場したA氏は、台湾の保険局から過去5年分の健康保険料を徴収されました。もしかして一度に過去10年分、20年分の保険料を徴収されたエグイ事例も存在するのか、という疑問が一瞬頭をよぎるかもしれません。実際、過去に遡って徴収される健康保険料は5年分がMAXで、それを超えることはありません

A氏は2013年10月中に仕事を辞めたときに既に永久居留証を持っており、会社で加入した健康保険は離職に伴い外されたとはいえ、「台湾に居住して満6ヶ月」のA氏は、保険の法律に基づき仕事を辞めた日にその他区分で健康保険に加入しなければなりません。にもかかわらず、A氏が追加で徴収された保険料は、2013年10月からの分ではなく、2017年~2022年の5年分のみでした。原因は以下の法律にあります。

公法上の請求権は、請求権者が行政機関である場合、法律に別段の定めがない限り、5年間行使しないことにより消滅する。請求権者が一般市民である場合、法律に別段の定めがない限り、10年間行使しないことにより消滅する。

つまり、台湾の公的機関が一般人に対して何かしら公的費用を請求するとき、請求可能な日から5年経過したら請求できなくなります。そのため、会社名義で加入した健康保険が外された日からずっと動きのない保険当局は、2022年12月になってようやくA氏に健康保険料を徴収することにしたが、法律上の制限により、2022年12月から遡って過去5年分の健康保険料しか請求できないわけです。保険料の追加徴収期間は、冒頭の「青天井」ではないのです。

ちなみに、A氏は仕事をやめて健康保険を脱退したのは2013年なのに、何故保険当局は9年後の2022年になってやっと重い腰を上げて保険料を徴収することにしたのかというと、A氏は自らの意志で区役所にその他区分で国民健康保険の加入を申し込んだことがトリガー的な働きをしたのではと考えられます。

A氏が健康保険の加入を申し込んだ後、保険当局の担当者は申し込んだ者が保険に加入できる資格要件を有するかを審査する手続きのなかで、A氏は10年前に既に台湾の永久居留証を取得していたが、2013年10月から2022年12月までの間は保険料を一切支払っていないとの事実を把握したため、健康保険の加入を申し込んだ2022年12月の保険料を徴収すると同時に、行政としてMAX的に請求できる過去5年分も一緒に精算しようとアクションを取った、という一連の流れがあったのではないかと思われます。

健康保険料を追加徴収される期間は青天井?!

日本にいるから、台湾の医療機関に行くわけがないにもかかわらず、永久居留証を持っているだけの理由で、台湾の健康保険料を支払い続けなければならないというルールに納得がいかない人は多いと思います。勿論、公式な対処方法はちゃんと用意されています。

以下いずれかの状況にある場合、健康保険の一時停止を申請することができる。保険加入先が保険一時停止申告書1部を記入して保険当局に提出したら、申請者が失踪または出国期間中に納付すべき健康保険料が納付不要となり、保険当局も申請者への保険給付を停止する。

  • 失踪が6ヶ月未満である場合。
  • 出国が6ヶ月以上の予定である場合。ただし、申請者が海外から台湾に戻って健康保険を復活させて再度保険の一時停止を申請しようとする場合、保険を復活させてから3ヶ月が経過している必要がある。

前項の第1号の状況は、失踪のあった月から健康保険が停止する。前項の第2号の状況は、出国のあった月から保険が停止するが、出国前に手続きを行わなかった場合は、保険の一時停止申告書が保険当局に送付された月から保険が停止する。

上記の法律に基づいて健康保険が一時停止する申請手続きを行えば、台湾の永久居留証を取得して日本へ帰国しても、台湾に住んでいない間の保険料を納付せずに済みます。もしA氏が帰国するとき、この一時停止の手続きをしっかりやっておけば、NT$数万の保険料の追加徴収を免れることができたが、当時のA氏は恐らくこのルールの存在すら知らなかったのでしょう。

しかし、この保険料を節約できる措置にはやはり一つ無視できない欠点があります。健康保険の一時停止を申請して帰国した永久居留証の所有者は、短期出張または個人観光などの目的を問わず、台湾に再入国した日に一時停止となった健康保険を復活させなければならず、そして復活された健康保険を再び停止させるためには、少なくとも3ヶ月を待たなければなりません。それはつまり、一週間の短期出張またはプチ台湾旅行を行おうと久しぶりに台湾に入国する永久居留証の所有者は、入国するたびに3ヶ月分の健康保険料を支払って、そして急いで健康保険の一時停止手続きを行わなくちゃだめだということになります。幸い、国民健康保険のアプリを使えば、健康保険の一時停止及び復活の手続きを瞬時に完成できるので、それほど面倒な手続きではありません。一番気になる難点は、やはりその3ヶ月分の健康保険料と言えましょう。

さらに、保険の一時停止を申請できる要件は、「出国が6ヶ月以上」と定められており、永久居留証の所有者は最初帰国してからしばらく台湾へは戻ってこない予定だが、もしやむを得ない用事があって、台湾を出て6ヶ月経たないうちにまた立ち戻った場合、当初申請した保険が一時停止する要件が満たされない形となったため、一時停止の効果が失効となり、結局日本に帰国した間の健康保険料が追徴される、というルールも気を付けるべきです(国民健康保険法施行細則第39条)。

一度に莫大な保険料を徴収されることを回避する方法ってない?

永久居留証を所有すると台湾の健康保険料の納付義務が発生します。日本に帰国して台湾へはしばらく来ない場合なら、保険の一時停止の手続きを行えば日本にいる限り台湾の保険料を納付しなくてよいだが、久しぶりに台湾の知人を訪問したり、軽く台湾一周旅行を行って台湾に短期滞在すると、少なくとも3ヶ月分の保険料を台湾の保険当局に支払わなければならなくなります。どうせ保険料を支払うなら、なんか少しでも元が取れそうなことできないか、のような発想が湧いたりしませんか。

健康保険料を支払えば保険給付が受けられます。そして保険給付は台湾国内での通院や入院だけに限定されるのではなく、日本を含めた海外で以下いずれか緊急性の高い傷病を患って、なるはや現地の医療機関で治療を受けなければならない場合、治療が終わった後、指定されたエビデンスを台湾の保険当局に提出すれば、限度額を超えない保険給付が受けられます(国民健康保険法第55条)。

  • 急性の下痢、嘔吐、または脱水症状がある者。
  • 急性の腹痛、胸痛、頭痛、背痛(下背部、腰痛)、関節痛、または歯痛があり、病因を明らかにするために緊急処置が必要な者。
  • 吐血、便血、鼻出血、咳血、溶血、血尿、陰道出血、または急性外傷による出血がある者。
  • 急性中毒または急性アレルギー反応がある者。
  • 突発的な体温の不安定がある者。
  • 呼吸困難、喘鳴、口唇または指先のチアノーゼがある者。
  • 意識が不明瞭、昏睡、痙攣、または肢体の運動機能障害がある者。
  • 目、耳、呼吸器、消化器、泌尿生殖器に異物が残っている、または体内の病変によって閉塞が生じている者。
  • 精神病患者で他者または自分の安全を脅かす恐れがある、または精神疾患の症状があり緊急処置が必要な者。
  • 重大な事故によって引き起こされた急性の傷害。
  • 生命徴候が不安定であるか、その他生命を危険にさらす可能性のある症状がある者。
  • 直ちに処置が必要な法定伝染病または報告伝染病。

注意が必要なのは、保険給付の申請は治療を受けた日または退院した日から6ヶ月以内に行なう必要があり、保険の効力が一時停止中の場合は、滞納の健康保険料を全額支払った日から6ヶ月以内に申請すればOKとされるが、直近5年以内に発生した医療費のみが対象となる点も要留意です。

日本の病院からのエビデンスをできるだけ収集して、台湾健康保険の還付対象になるようなやつがあれば、とことん活用してやる、というのも一つの保険料の節約術となりえましょう。

支払った保険料の最大価値を引き出しましょう!

台湾で5年間仕事をしている記念として取った永久居留証に、よもやこんな隠しルールがあったとは、ちょっとがっかりだわと、ここまでの内容を読んできて、似たような感想を抱き始める方もいるかもしれません。でも、これらの情報をそれほど悲観的に受け止める必要はありません。保険が一時停止する方法を活用したり、もしくは「トリガー」となりそうなアクションを取らなかったりすれば、永久居留証の取得によって増えた健康保険料の負担を限りなく低く抑えられましょう。

マサレポ、今週の学び

  • 台湾の居留証の発行を受けてから6ヶ月以上台湾に住んでいると、台湾の健康保険に加入することが義務付けられます。
  • 「台湾に居住して満6ヶ月」という要件は永久居留証の取得によって一旦リセットされることはありません。
  • 永久居留証のような「居留証明書」を保有している限り、無職であっても、その他区分で健康保険に加入しなければならないとされています。
  • 過去に遡って徴収される健康保険料は5年分がMAXで、それを超えることはありません。
  • 健康保険が一時停止する申請手続きを行えば、台湾の永久居留証を取得して日本へ帰国しても、台湾に住んでいない間の保険料を納付せずに済みます。
  • 短期出張または個人観光などの目的を問わず、台湾に再入国した日に一時停止となった健康保険を復活させなければならず、そして復活された健康保険を再び停止させるためには、少なくとも3ヶ月を待たなければなりません。

ATTENTION!

※本マサレポは2024年9月16日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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