2022年からスタートする労務人事の主な変更点とは!

2022、あけましておめでとうございます!マサヒロでは、去年と同じノリで頑張って2022年を盛り上げていきたいと思いますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます!

去る2021年中に、いくつか労働法関連の法改正や重要な政策発表がなされていまして、そのうちの一部の内容は2021年内では発効しておらず、2022年の初頭まで温存されている項目があります。 2022年第1弾のマサヒロリーガルレポートは、去年中で発表がなされた一部の法規定のおさらいを兼ねて、2022年で適用される、労働法関連の新規措置にどういったものがあるかを早速共有させていただこうと思います。では、参りましょう!

朗報-労災保険の料率引き下げ

労災保険の料率は3年に1回の見直しが義務付けられています。(労工保険条例第13条)前回の見直しは、2018年でなされていたため、3年後の2021年で見直しが行われることとなりました。

労災保険の料率は、事業別労災料率と出退勤労災料率の2種類で構成され、今回の見直しはそれぞれの料率に対してなされる形となります。

見直しの結果、事業別労災料率が、3年前の平均0.14%から0.01ポイント下方修正の0.13%となり、出退勤労災料率は今までの0.07%据え置きなので、2022年の労災保険の料率は総じて0.01ポイント下方修正の平均0.2%との計算です。

見直しの結果から推測すると、出退勤時の労災発生率はここ3年間はほぼ横ばいでしたが、労働の提供と直接関わる労災の発生率に減少傾向が見られるのではと考えられます。 一部業種を除き、会社側が負担する労災保険料は、2022年から0.01%減少するとの恩恵が見込まれています。

(2021年から2022年における、製造業の料率変更の内訳)

悲報-老齢年金受給年齢の引き上げ

台湾の少子高齢化現象が年々厳しくなっていく傾向を考慮し、2009年から実施する年金制度では、老齢年金の受給年齢が段階的に引き上げられる方針が決まりました。

当該方針によっては、2022年からの受給年齢は62歳から63歳に引き上げられ、それ以降は2年ごとに受給年齢が1歳引き上げられる形となり、2026年に政策目標の65歳に引き上げられてから据え置きにする設定となっています。

ただし、少子高齢化の問題は将来的にはやはり改善せず、益々シビアになっていくのであれば、保険基金を倒産させないよう、受給年齢を70歳、75歳へ順次引き上げていく、という風に、都度都度法改正がなされ、保険制度を延命させていく未来も容易に想像できます。無限列車ならず、受給年齢の無限延長に付き合っていく代わりに、受給額の一部減額を覚悟のうえ法定受給年齢の5年前倒しで繰り上げ支給を申請することも選択肢の一つとして考えられましょう。(労工保険条例第58条第5項)

(2009~2026年における老齢年金受給年齢の推移状況)

労働者にとっては朗報-最低賃金の引き上げ

2022年1月1日から最低賃金が引き上げられることとなりました。月給制の場合、月次賃金は新台湾ドル24,000元から新台湾ドル25,250元、時給制の場合、1時間当たり新台湾ドル160元から新台湾ドル168元に、それぞれ増額する格好です。

留意が必要なのは、最低賃金は必ずしも「基本給」にイコールするのではなく、毎月受領する賃金に基本給のほか、食事手当や皆勤手当その他手当等経常的に支払われる項目もあった場合には、それら全部合算する形で、最低賃金を超過しているかどうかを判断すればよい、との仕組みです。

ですから、毎年更新する最低賃金に合わせて基本給を増額させる義務が生じるとも限らないので、経費負担面においての衝撃は限定的なものかと思われます。

(最近5年間最低賃金の推移状況)

労働者にとっては朗報-退職金積立用標準報酬月額の見直し

こちらの見直しは、最低賃金の引上げに伴う措置であり、実際、変更が生じたのは、標準報酬月額の21等級と22等級のみです。

21等級の区分は新台湾ドル24,001元~25,200元から新台湾ドル24,001元~25,250元に、22等級の区分は新台湾ドル25,201元~26,400元から新台湾ドル24,251元~26,400元に、それぞれ2022年分の最低賃金である新台湾ドル25,250元に合わせて見直しがなされました。 最低賃金で従業員を雇用する事業者にとっては、月次ベースで拠出すべき法定退職金の額は、2022年から約新台湾ドル75元/月/人の負担増との計算結果になります。(積立率を6%で計算)

(2021年から2022年における、退職金積立用標準報酬月額等級表の変更箇所)

労働者にとっては朗報-労工保険標準報酬月額の見直し

労工保険標準報酬月額等級表の1等級は、毎年最低賃金の見直しとともに修正がなされています。

2022年に入って、1等級の区分が新台湾ドル24,000元から25,250元に引き上げられることで増加する労工保険料は、従業員側では新台湾ドル29元/月、会社側では新台湾ドル101元/月/人との計算です。(最低賃金で従業員を雇用するケース)

(2021年から2022年における、労工保険標準報酬月額等級表の変更箇所)

労働者にとっては朗報-当直勤務における賃金計算の特別措置の適用停止

当直業務の実施について、所定要件を満たしたら、日直・宿直問わず原則として当直手当を支給したら問題ないとされてきました。

一方、2022年1月1日に入ったら、当直業務は通常残業と同じ扱いとなり、当直業務の実施時間に応じて残業代を支給する必要があるほか、月次で計算される残業時間の上限に当直時間も入れなくてはならない形となりました。

労働者にとっては、同じ当直業務なのに、もらえる額が増えることで、最高に嬉しい話しですが、当直業務の実施が必要不可欠な会社にとっては、当直の実施で増加する経費負担をどこから捻出することと、それによって増加した残業時間数はいかに限られた枠内で全体的な労働時間を調整するかはこれからの課題になりましょう。

詳しくは、以下のマサヒロリーガルレポートにてご参考ください。

朗報-安全衛生推進者に新たな資格種類

台湾の労働安全衛生法の定めでは、もともと従業員30人以下の事業所だと丙種の資格を有する安全衛生推進者を選任したらよいとされてきました。

2022年に入ってから、安全衛生リスクが低い事業を営み、かつ社員数が5名以下の零細企業を経営する事業主に、社員を指定することなく自ら安全衛生推進者を務める意欲を向上させようと、今まで最もベーシックなレベルである丙種と比べたら、受けるべき講習時間がはるかに短い丁種が追加されたのです。

丙種の資格を入手するためには、まず21時間の専門講習を受けなければならず、かつテストも必要なので、わざわざ自ら時間を割って当該資格を取るより、適用な社員を見つけてやらせたらよい、という事業主が持つありがちな考え方を、講習時間がたった6時間でもらえる丁種資格で、それをどの程度変えられ得るでしょうかと、これからは要注目です。(職業安全衛生教育訓練規則)

社員定着率の低さで悩まされる事業主にとっては、安全衛生推進者が退職するたびに改めて適任者を選任するより、自ら6時間の講習を受けて丁種の安全衛生推進者の資格を取ったほうがよほど効率がよいかも、との点において、こちらの法改正は朗報になりましょう。

(講習時間で示す台湾の安全衛生推進者の資格種類)

労働者にとっては朗報-労働者健康管理に関する規制強化

労働者の健康保護を強化するとともに、健康リスクが高い労働者の権利を守る目的として、2022年1月1日より、社員数が50~99人で、かつそのうち、健康に危険が及ぶ可能性が高い作業に従事する社員数が1~49名の会社は、労働者の健康管理を行う医者や保健師・看護師を委託し社員の健康管理、職業病の予防、社員の健康促進その他労働者の健康保護に関する業務を当たらせる必要があるとされています。(職業安全衛生法第22条、労働者健康保護規則第4条)

こちらの規制強化措置は、事業主にとっては多少経費負担が重くなりますが、社員個人と会社両方とも大変不幸をもたらす職業病を予防する保険代を支払う気持ちで考えたら、納得がいく措置なのではとも考えられるかもしれません。

(事業性質別医者・保健師・看護師が行うサービス頻度一覧表)

終わりに

2022年からスタートする労働法関連措置は、労働者視点から見て、年金受給年齢の引き上げを除き、大体においては歓迎すべき内容となっています。

かといって、喜んでばかりではいられないかもしれません。 例えば、当直手当制度廃止の件を取り上げると、当直業務の実施時間を全て残業時間としてみなすことで増加した経費はどこから捻出するかというと、一部の台湾系企業は、裁量権がある年度ボーナスや祝日手当(三節)の一部減額を実施し、足りない部分は社員福利厚生の予算から補足させる、のような対応策について検討がなされているそうです。なお、仮眠OKで、比較的業務が集中していない宿直業務は、残業代の支給対象となった今において、通常残業と同じ強度の仕事内容を要求されるようになるか、それによって一部の労働者から何かしらの反発が起きたりするか等、引き続き業界の動きを注目していく必要がありましょう。

Attention!

※本稿は2022年1月3日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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