割と知られていない!春節連休の実施及び賃金支払いについての注意点

まもなく楽しい楽しい春節9連休の到来です。休日を過ごす計画がもう出来上がりましたか。

訳の分からないトランスフォーメーションを繰り返しながら、よりによって連休の手前に邪魔してくるコロナのせいで、一部県市が大型イベントを取りやめたり、電車や高速鉄路等公共交通機関での飲食がまだ禁止になったりするなど、まもなく三級引き上げなのではと危惧する声があっちこっちで聞こえているようです。感染の勢いは未だに衰えを見せていないから、しっかりと身の回りの防疫対策を強化しておきましょう!

さて、政府カレンダー通りに実施する9連休に、実は予めやっとかなければならない、事業主に課される法定義務があるのをご存じでしょうか。

その他要検査項目がなければ、地方労工局からいきなり指定検査対象にされる可能性は決して高くありませんが、先にそれを知っておく、対処しておくことで、違法リスクを完全になくすことができ、心置きなく安心・安全に連休を過ごすことができるので大変お勧めです。

上記法定義務のほか、ちょっとしたトリッキーなところがある連休残業代の計算と、月次の賃金支払日が連休期間と重なる場合の対処方法も同時上映されますので、是非今回を機に、何となくうやむやな点を解消しておきましょう!

9日の春節連休に従業員の同意がなければ違法!?

台湾の政府カレンダー通りで行けば、2022年の春節連休は、1月29日(土)から2月6日(日)の9連休となります。

一方、当該9連休を楽しむ代償として、通常出勤不要な1月22日(土)を振替出勤日として、従業員は会社に出向かなければなりません。

マサ君

まあ、1日追加出勤したら9日間連続で休めるから、いいじゃない!

という風に、一般的に考えるかもしれません。

実際、話しはそう簡単ではありません。

政府カレンダーというのは、政府の人事部門によって公表される、公務員を対象とする年間出勤表のようなものであり、政府機関ではない民間企業がそれを遵守し、その通りに従業員に出勤させてしまうと、台湾の労基法に触れる可能性が生じてまいります。なぜなら、こういった出勤日の調整は事前に従業員の同意を得ていないからです。

政府カレンダーにあった長めの連休を実施するたびに、従業員個別に同意をもらったりするのは相当手間がかかり、あまり現実味がないように思えてきますが、皆は皆でそこまでするのか?そのような疑問点は勿論政府のほうへも届いています。

大型連休は、台湾全国でなるべく一緒のタイミングで行わなければ、いろいろ不便が生じたりするマイナス効果を考慮し、政府は2016年にて、政府カレンダーの通りに年間出勤予定表を組み立てる会社であれば、8週間単位の変形労働時間制を適用できるものとし、会社はそれによって政府カレンダー通りの出勤調整が可能となりました。(労働条3字第1050130120号公告)

ちなみに、8週間単位の変形労働時間制の適用対象者は正社員のみならず、会社が雇用するパートタイマー従業員も対象となり得ます。(労働条3字第1080130988号通達)

要留意なのは、変形労働時間制の適用は、“うちは政府カレンダー通りにやっているから!”という風に認識し、政府カレンダー通りの年間出勤表を事業所に掲載すれば済む話しではなく、労働組合または労使会議をもって、変形労働時間制の導入を過半数の賛成で決議しなければならない法定要件を先にクリアすべきことです!

また、8週間単位の変形労働時間制の適用要件に政府カレンダーの遵守を前提とする会社には、1年を通して、きちんとその通りに従業員を出勤させ、休暇を与えなければなりません。

政府カレンダーにあった一部の連休を相手にせず、別途日本ならではの休日を社員に休ませようとしたら、たとえ別途従業員に付与した日本の休日が、日数的にそれによってなくなった台湾の休日より上回ったとはいえ、政府カレンダーの完全順守ができないことで、8週間単位の変形労働時間制も適用できなくなってしまいます。それがつまり、大型連休の実施に必要とされる出勤日の調整に、また手間がかかる、従業員の同意を取得しなければならない、一番面倒な対応方法を取らなければならなくなります。

労使会議を開催し、8週間単位の変形労働時間制の適用を通過させたら、まだ100点満点とは言えません。

地方労工局に派遣されるアサシン労働調査官から無傷ノーペナルティでかいくぐるためには、労使会議で変形労働時間制の実施が本格的に決まった後、年間出勤表を作って事業所の見えやすい場所に掲示し全従業員をそれにサインしてもらったり、さらに労使会議で「○○連休を実施するため、○月○日を振替出勤日とする」のような文言を議案に加えたりすることがさらに確実でしょう。

春節連休期間中の出勤における超過勤務手当の計算方法とは?

春節連休期間中の出勤は超過勤務に該当し、それを実施する前に、先に組合又は労使会議の決議を経て過半数の同意をもらわなければなりません。

以前から残業を実施する需要があり、労使会議の許可を既に取得した会社は、当該許可が実施期限付きのものでない限り、今回の春節残業の実施は、別途労使会議から許可をもらう必要がありません。

残業実施のエントリーチケットを入手後、次のチェックポイントは残業代の料率となりましょう。

ヒロ君

何、9日の連休における残業のレートが違うなの?

その通り、ちょっとした違いがあるわけです!

大晦日からの4日間(1月31日(月)~2月3日(木))は、掛け値なしの祝日なので、祝日における超過勤務手当の支給基準に基づき、1日の勤務時間が8時間内の場合は、一律に8時間分の賃金を対象となる従業員へ支給しなければなりません。

また、オーソドックスな所定休日である1月29日(土)及び2月5日(土)には、1日の出勤時間が2時間内であれば、実働時間×時間単価×4/32時間~6時間であれば、2時間×時間単価×4/3+(実働時間-2)×時間単価×5/3で、所定休日における超過勤務手当を算出し支給する義務があります。

そして、“連休がまだまだこれからよ!”という1月30日(日)と、サザエさん症候群になりやすい2月6日(日)は、労基法上では一番扱いづらい法定休日に該当し、よほどな大義名分がないと、出勤が固く禁じられる形となっています。

ボス様

サザエさん症候群を克服させようと、是が非でもマサ君に日曜日に出勤させたい!

やむを得ない事情があって、従業員を法定休日に出勤させようとする場合における超過勤務手当の計算は、祝日と類似し、1日8時間内の出勤であれば、とにかく8時間分の賃金を支給したら問題ありません。問題になりやすいのは、勤務時間が8時間超となったら、時間単価が2倍になる点です。1日の残業時間が8時間超であれば、祝日と法定休日の料率が異なる点を留意しておきましょう。

ヒロ君

えっ、2月4日(金)は?2月1日~2月3日の料率と違うなの?

この辺も、割と知られていないポイントですね。

2月4日(金)は、実は祝日ではなく、勿論休日でもない、ましてやプレ金とも関係あらへんです。

じゃ何故出勤不要かと言いますと、それは、犠牲となった1月22日(土)に代わり、2月4日が振替休日に進化したからです!

そのため、2月4日に従業員を出勤させようとする場合における超過勤務手当の計算は、身代わりとなった1月22日の料率、つまり所定休日の料率で行う必要性が出てまいりました。気を付けましょう。

2月上旬に支払う月次賃金の扱いはどうなるの?

もし従業員への月次賃金支払いが、毎月の5日と定められた場合、2月の支払いはちょうど春節連休中なので、果たしてどのように対応したら違法にならないか、という些細な疑問点を持っている方が少なくないかもしれません。

連休中、従業員がお年玉を非情に徴収されまくる情景を思い浮かぶと、賃金の支払を後倒しにしたら従業員が可哀そうなので、1月の最終出勤日などに前倒しで支払いましょう!という風に考える事業主が多く、労働部もそのようにお勧めしているので、比較的無難な対応方法となりましょう。

しかし、1月の下旬ぐらいに1月分の賃金を全て計算し、連休前日までに支払いを行うには人事部への負担が大きく、やはり通常通りに賃金の支払いを行いたいとの考えは、別に違法ではありません。労基法的には、会社は従業員と約定した日に月次賃金を支払ったらOK、という風に定めているからです。

通常通り賃金支払いを行おうとする場合には、例えば今まで銀行自動振込サービスを利用し従業員の個人口座へ送金を行う会社は、ネットバンキング等で、2月5日に実施する送金情報を予め設定しておけば、送金日が連休中であっても、今まで通りの賃金支払いが実現できるようになります。

一方、1月中の給与計算が間に合わず、ネットバンキングの利用もしておらず、従業員と約定した5日に賃金を支払おうとしても銀行が営業していないので実現不可能等、いろんな不可抗力があって、連休明けの初日に賃金を支払うことで違法となってしまうわけなのか、というと、そうでもありません。

台湾の民法によっては、約定した賃金支払日がもし祝日又は休日であった場合には、当該祝日又は休日の翌日に支払いを実施しても違法ではないと定められています。(民法第122条)

従って、賃金支払日が毎月5日の会社は、2022年1月分の賃金について、春節明けの2月7日(月)に支払いを行ってもノーペナルティということになります。

ただ、そうすることで、従業員の満足度がガンと下がり、年明け転職を検討する従業員が一部出てこないかは要留意かもしれません。

Attention!

※本稿は2022年1月27日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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