細かい設定を一気におさらいしましょう!ワクチン接種休暇

コロナウイルスのワクチン接種がとうとう3回目に突入しました。

これから、当局からワクチンの接種通知を受け、会社に休暇申請を行う社員が徐々に増えていく見込みでしょう。

今まで、ワクチン接種の日は、個人の有給を利用したり、ワクチン接種休暇を取得したりするケースはきっとそれぞれあって、会社側も何となく無事やってきましたが、正確にはどんな休暇を対象社員にあげるべき、ワクチン接種休暇だと無給で本当に大丈夫でしょうか、はたまた4回目、5回目のワクチン接種ができるようになったら、ワクチン接種休暇という、そもそも会社の休暇体系に組み込まれていないものを与え続けるべきでしょうか、という風に、ワクチン接種休暇を言われるがままに実施してきたにもかかわらず、細かい設定となると、どうしてもはてなマークが浮かんでくるかもしれません。

これからブースター接種を受ける社員、そして考えられ得る4回目、5回目のワクチン接種のために、労使紛争になりやすい事例を含め、知ってお得するワクチン接種休暇に関する諸々設定を一通りチェックしておきましょう!

ワクチン接種休暇を取得できるタイミング

コロナウイルスのワクチン接種を受けた日、及びその翌日の深夜零時までの間は、会社からワクチン接種休暇を取得可能とされています。

3回目のワクチン接種(ブースター接種)が受けられる現在、MAX的に取得可能なワクチン接種休暇は通算6日となっています。また、ワクチン接種休暇に関する特別措置は、接種回数に関する制限が設けられていないため、もしこれから4回目、5回目…の接種を受けざるを得ない状況となってしまったら、取得可能なワクチン接種休暇はそれに比例してどんどん上がっていくイメージです。

ワクチン接種休暇を取得するためのエビデンス

会社は、ワクチン接種休暇の取得対象社員に対して、関連証拠書類の提出を要請することができます。一般的に認められる証拠書類は、台湾の疾病管制署が発行するワクチン接種記録カードとなります。(折り畳み式の黄色いカード)

出典:台北市政府衛生局HP

ワクチン接種休暇の取り扱い

社員がワクチン接種を受けようと、会社にワクチン接種休暇の申請を申し込んだ場合には、ワクチン接種休暇の代わりに、自己都合休暇又は病気休暇その他休暇を取得するよう、会社が対象社員に対して、一方的にそれを要求してはならないとされています。

自己都合休暇又は病気休暇等を取得したら、休暇を取った月の皆勤手当を支給しない給与規程を設ける会社は、ワクチン接種休暇を取得した社員に対して、皆勤手当を支給しなかったり、解雇その他不利な処置を行ったりしてはならないとも定められています。

一方、ワクチン接種を受けるための休暇は、会社は自己都合休暇又は病気休暇、年次有給休暇等を取るよう対象社員に要求できないにもかかわらず、対象社員から、ワクチン接種休暇ではなく、病気休暇又は年次有給休暇の取得を自ら提出された場合には、例外として認められています。

なぜワクチン接種休暇ではなく、あえて日数制限がかかるその他休暇を利用しようとする社員が居るかというと、原則として無給のワクチン接種休暇より、賃金がもらえる病気休暇又は年次有給休暇を取得したほうが、キャッシュフロー的には比較的望ましい、との考えが働くかもしれません。

ワクチン接種後の体調不良が続く場合

「ワクチン接種休暇を取得できるタイミング」にて、ワクチン接種を受けた当日及びその翌日は、ワクチン接種休暇の取得可能期間とされていることを説明しました。もしワクチン接種を受けた社員は、接種日の翌日だけでなく、その翌々日、又はそれ以降になって、対象不良の状態がなお続く場合には、ワクチン接種休暇取得可能な期間を超える分は病気休暇を取得可能とされていますが、会社側では必要に応じて、診療明細書の提出を求めることができます。

ワクチン接種休暇は有給?無給?

ワクチンの接種要否は、原則として政府が判断し、奨励するものなので、それに係るコストを会社に押し付けるわけにはいかないとの気持ちとして、ワクチン接種休暇を取得する間、会社は対象社員への賃金支払い義務がない、つまり、ワクチン接種休暇は原則として無給との扱いです

ただし、前述の無給ルールは勿論強制ではなく、ワクチン接種を奨励する意味合いで、会社が有給のワクチン接種休暇を付与することもできます。そして、コストを顧みず防疫作戦に協力してくれる社会に感謝の意を込めて、会社が別途支出するワクチン接種休暇分の賃金の2倍相当額を、法人税の確定申告時に会社の利益から控除することができる、という税金面の優遇措置が用意されています。

ちなみに、政府から通知を受け外出を控えるための「防疫隔離休暇」、及び外出控えを命じられた親族の面倒を見るための「防疫介護休暇」を、有給という形で社員へ支給する場合には、前述の2倍控除措置も受けられます。必要に応じて活用しておきましょう!

ワクチン接種休暇の取得で受領可能な退職金が減る!?

定年退職を控える社員がワクチン接種休暇を取得した半年内で、会社に定年退職を申し出ました。

退職金の計算は、退職日前6か月間の平均賃金がベースとなり、無給のワクチン接種休暇の取得日は当該6ヶ月内に入ったため、平均賃金の額はそれによって少々減額する計算となりました。

結局、○ヶ月分の平均賃金で計算した退職金は、前述の減額効果によって、定年退職した社員が受領した額に、通常のケースより約2万新台湾ドルが減ったということで、当該社員が労工局に調停を申し立てた、という事例がありました。

当局の見解では、ワクチンの接種は、労使いずれかにも責任を押し付けるわけではいきませんので、退職金を計算するための平均賃金を算出時、ワクチン接種休暇の無給期間を外し、同休暇に相当する日数をもって、退職日前6ヶ月からさらに遡る形をとって、平均賃金の計算をしなくてはならないとの解釈通達を公表しました。(労働条2字第1100130753号解釈通達)

ワクチン接種休暇の関連ルールを違反した場合

ワクチンの接種を受け、ワクチン接種休暇を取得した社員に対して、会社は月次賃金から皆勤手当を差し引いたりする場合には、台湾労基法第22条に定めた賃金の全額払いの原則に違反することとなります。

また、ワクチン接種休暇ではなく、年次有給休暇又は病気休暇、自己都合休暇の取得を対象社員に要求する場合には、有給休暇を労働者の請求する時季に与えない等で、労基法第38条又は同法第43条に反するものとなってしまいます。

前述の違法行為があったと認定された場合には、2万~100万新台湾ドルの過料が科されるとともに、社名・責任者名が公表されてしまいます。

出典:労働法違反事業者検索システム

その他要留意法規定

ワクチン接種を一度も受けず、PCR検査も受けない社員が居て、ワクチン接種やPCR検査を受けるよう、会社が当該社員と協議したが、失敗で終わりました。その他社員や顧客の感染リスクを極力抑える観点で、当該社員を解雇できるかというと、当局ではそのような解雇は違法であるとの見解が出されています。

当局の指導では、コロナ緊急対策本部に指定された、感染リスクが高い業種の従業員がワクチン接種又はPCR検査を拒んだりする場合には、その原因を突き止めようと、会社からしっかりと対象従業員とコミュニケーションすることが望ましく、交渉が難航してしまったら、会社はテレワークか配置転換をまず行うことが奨励されています。

前述の対象従業員はそれによって、出勤さえ拒んだりするような状況が生じたら、会社は賃金の支払いを停止したり、自己都合休業の提出を要請したりすることができるが、一方的にそれを要求することができないとされています。

以上は、あくまでも指定された感染リスクが高い業種に限っての話しであり、そうでない業種は、ワクチン接種やPCR検査を拒否する社員に対して、それを理由とする配置転換又は自己都合休業の要請を行うことに大変リスクが伴いますので、ご留意が必要です。会社側にとって、本当に世知辛い法律作りでしょうね。

Attention!

※本稿は2022年2月25日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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