5月5日に公告!4月8日に遡及適用されるコロナバージョンの労働者病気休暇制度
台湾でのコロナ感染者数は、5月7日からついに1日当たり4万人の大台に乗ってしまいました。
この段階に来てしまえば、たとえ社員の間に感染者が出ないまでも、社員の家族や友人に感染者が出たことで濃厚接触者になったりする状況は、これからどんどん日常になっていくことは想像に難くありません。
しかし、コロナ事情が深刻化しているわりに、関連法規定がそれについていっていない節があるように思います。どちらかというと、あっちこっちにトラブルが起きて、反発がピークに達したら、ようやく何かしらの修正が政府によってなされるイメージです。5日に公告された特別措置もまさにその一例と言えましょう。
体に何も違和感を覚えていないが、PCR検査で陽性が出たので、自宅療養を強制されました。そのせいで取れる病気休暇が減り、皆勤手当も引かれました。政府の蔓延防止策に協力するのに、何故こういった仕打ちを受けなければならないのか?
上記のクレームが聞き届けられ、台湾の労働部がついに動き出しました!気になる政府の対応とは?
以下、台湾の病気休暇に関する原則的な取り扱いを紹介し、そして5月5日の最新ルールをズバリ解説していきたいと思います。
台湾労基法に定めのあった取得可能な病気休暇の日数上限
台湾の病気休暇は、性質的に公傷病休暇と私傷病休暇に分けられています。労災に起因し、かつ医療証明さえ提出し続ければ、原則として休暇日数が無制限な公傷病休暇を今週のマサレポでは一旦割愛して、今週のテーマと関わりのある私傷病休暇にフォーカスして解説していきたいと思います。
では、取得可能な私傷病休暇の日数上限を以下見てみましょう。(労働者休暇規則第4条)
- 通院して治療を受けた場合には、年間合計30日が上限。
- 入院して治療を受けた場合には、2年間の合計入院期間は1年が上限
- 通院と入院、両方ともあった場合には、2年間の合計期間は1年が上限
また、労働者ががんを発症し、通院治療が必要とされる場合や、女性社員が妊娠中で自宅安静が必要とされる場合には、当該通院治療と安静の期間は、前述②のケースと同様、2年の間に1年が限度とされています。
労働者が前述①~③に定めた限度を超えない病気休暇を取得した場合には、事業主は同労働者へ支払う月次賃金から、休暇分賃金の50%を差し引くことができることとされ、労働者が限度を超過した病気休暇を取得したら、自己都合休暇と同じ無給扱いとなります。
そして、台湾の会社によくある皆勤手当の支給制度について、労基法的には、病気休暇を取得することで皆勤手当を外すことができない、のような定めがないため、労使間で、病気休暇を取得したら皆勤手当を無しにするとの取り決めを交わすことは可能となっています。
新型コロナウイルスに関する病気休暇の特別措置
労働部が2022年5月5日(木)に公告した解釈通達によると、労働者が新型コロナを発症し、保健所から自宅療養を命じられたり、指定された隔離施設に収容されたり、病院で治療を受けるよう通知がなされたりするとき、当該隔離・治療期間は、入院治療を受けるための病気休暇として取り扱う必要がある、つまり2年間の合計日数が1年を超えなければ、隔離・治療期間中であっても、労働者は会社から少なくとも50%の日割り賃金を受領できるとの規定です。
そして、こちらコロナ特別措置では、通常の病気休暇との大きな相違点がって、コロナの発症による隔離・治療を受けるための病気休暇は、労使間で取り決めがあるかどうかに関わらず、事業主は皆勤手当を一切差し引くことができないとの禁止事項が追加されました。
台湾のコロナ緊急対策本部が2022年4月8日(金)に、「COVID-19感染者自宅療養の管理手引書」を公告しました。それに呼応する形で、台湾の労働部からは、労働者が新型コロナを発症し、保健所から隔離治療を受けるよう通知がなされれば、たとえそれが無症状又は軽症であったとしても、労働者は発症期間中に出社してはならず、休暇を取らなければならない、という風な通知を行いました。
一方、コロナの発症による自宅療養が原因で、会社に対して病気休暇を取得したら、入院していないため、原則として年間30日の制限を受けなければなりません。
無症状又は軽症の労働者は、政府のコロナ蔓延防止策に協力する関係で、個人の意志にかかわらず、比較的長い病気休暇の取得を強いられるため、それによって、病気休暇の取得可能日数が必要以上に減ってしまうのは可哀そうだと考え、5月5日に本件解釈通達を公告したわけである、との説明が労働部からなされました。
要注意なのは、本件解釈通達の公告日は5月5日ではあるが、今年の4月8日に遡って施行するとも定められているので、施行日から今日に至るまでの間に、コロナ発症した社員から自宅療養の申請があって、それによって皆勤手当を賃金から差し引いたりしたことがあったら、早急に当該社員に対して、差し引いた分の追加支払いを行う必要がある点です。
コロナ発症による自宅療養時の給与支払いについて
前の段落では、労働者はコロナの発症で自宅療養を命じられ、それによって病気休暇を取得した場合には、会社はそれを入院治療による病気休暇として扱い、自宅療養期間中では50%の賃金を支払う必要があると説明しました。
そして、こういった入院扱いにされる自宅療養は、保険関係においても同じコンセプトが適用される、という風な見解も5月5日にて、台湾の労働部によってなされました。
規定上、労働保険に加入している労働者は、怪我したり病気にかかったりすることで入院して治療を受け、それによって出社して仕事をすることができない場合には、仕事ができない4日目からは、労働保険局に対して傷病手当の給付を受けることは可能です。(労働者保険条例第33条)従って、入院して3日目で退院、若しくは不定期的に通院治療を受ける労働者は、原則として傷病手当の給付対象外となっています。
一方、仕事ができない在宅療養中の労働者の経済的事情を考慮し、かつ労働者休暇に関する新規通達の見解の統一を図ろうと、台湾の労働部は、入院こそしていないが、在宅療養を協力してくれる無症状又は軽症の労働者を対象に、出社していない4日目から、傷病手当の給付を受ける権利を付与する、とのコロナ特別措置を打ち出しました。
給付が受けられる傷病手当の金額は、対象となる労働者の標準報酬月額の前6ヶ月間の平均を30で割って算出した日割り賃金の半分に、出社できない日数を乗じて計算する形とされ、現時点で義務付けられる10日間の在宅療養で考えたら、最大5,343新台湾ドルの傷病給付が受けられる計算です。(月次賃金45,800新台湾ドルを受領し、在宅療養10日間で計算)
また、こちらの傷病手当は、病気休暇を取得した社員に会社から支払われる50%の日割り賃金に充てられる仕組みなので(労働者休暇規則第4条、行政院労働委員会82台労働二字第17586号通達)、事業主にかかる経費負担もそれによって若干軽くなります。
不幸にもコロナを発症した社員が出てきましたら、当局に対して傷病手当の給付申請をできるだけ行うようお勧めいたします。
ATTENTION!
※本マサレポは2022年5月9日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。