6月13日から適用されるコロナ特例措置、交替勤務の実施に義務付けられる11時間インターバルの規制緩和について

24時間体制の生産ラインを導入する工場や、24時間営業するサービス業等においては、交替制はよく運用される勤務形態です。交替制をうまく活用すれば、残業削減ができてコストダウンにつながる等、メリットは少なくありません。

一方、今年の4月に入ってから、コロナ感染者数が劇的に増え、感染者も緊急対策本部の指示に従い、無症状や軽症であっても自宅隔離や自宅療養を協力しなければならなくなりました。

リモートワークで日常業務がこなせる業種ならまだしも、出社しなければ仕事ができない製造業や接客業はこういったコロナ政策によって、人手不足問題に相当悩まされています。今まで交替制を実施してきた事業者は、社員又はその家族が続々とコロナウイルスを発症する関係で、シフトを見直すのに既に精いっぱいであったにもかかわらず、台湾の労基法に定めた11時間のインターバルも守らなければならないとなると、経営破綻にならざるを得ない、と苦言を呈している事業者が増えつつあります。

こういった悩みを抱えている事業者の気持ちを汲む形で、台湾の労働部がついに動き出しました。それが14日に公告した緩和措置です。

いわゆる11時間のインターバルとはどういうこと!?公告された緩和措置は、果たしてどのように交替制を実施する事業者に役立てるのか!?今週のマサレポをどうぞご覧になってください。

交替勤務に関する勤務間インターバル制度について

台湾における交替勤務の考え方は、原則として週替わりにすべきですが、個別の従業員から了承をもらえれば、二週間交替や三週間交替等にすることもできるとされています。

2016年12月の労基法一部改正で、「勤務間インターバル制度」のコンセプトが本格的に導入され、今までの、「勤務時間を交替するとき、従業員に十分な休息時間を与えること」、という極めて曖昧な表現から、「少なくとも11時間のインターバルを確保すること」、のようなはっきりとした時間基準が定められるようになりました。にもかかわらず、1年1ヵ月後の2018年1月になって、事業の性質又は特殊な要因があって、かつ当局の許可があった場合には、シフト交替時のインターバルを、8時間を下回らない範囲で短縮することができる、という風な一部改正がなされ、現在に至ります。

要留意なのは、手間暇かけて当局からインターバル短縮可能な許しを得られたら、すぐに勤務交替時の休息時間を11時間から8時間に短縮できるものではなく、労働組合又は労使会議からゴーサインが出なければ、インターバルの短縮は引き続きできないルールが設けられる点です。

ちなみに、従業員数が30人以上の会社は(その他従業員人数と連動する労基法規定はこちら)、前述、インターバルの短縮に関する諸々要件をクリアしたら、現地の主務機関への届け出義務もあることを留意しておきましょう。(台湾労基法第34条

交替制のインターバル制度に関するよくある疑問点

台湾の労基法に定めのあった、勤務間インターバルに関する11時間の原則と8時間の例外は、交替制以外の従業員にも適用されるか、という疑問はよく持ちあげられます。

台湾労働部からの公式見解では、交替制以外の日勤労働者、例えば一般に見られる勤務時間が8時~17時又は9時~18時の勤務形態だと、11時間インターバルの制限を受けないほか、24時間3班の勤務体制を取っているが、交替することなく常時日勤又は常時夜勤のみの場合も対象外である、との説明がなされました。

一方、台北行政高裁では、一番オーソドックスな週替わりの交替勤務でなくても、勤務時間の変更があったら、たとえそれが一時的な変更とは言え、労働者がそれによって受けた心身の影響を考慮し、11時間ルールを引き続き遵守する必要がある、との認識が示され、通常の交替制のみから一時的な勤務時間の変更も含まれるという風に、インターバル制度の適用範囲を拡大する解釈をしました。(台北高等行政裁判所108年度訴字第1095号判決)

ただし、上記高裁の判断は最終的に最高裁に否定されたことも注目に値します。

最高裁が取る見解では、勤務間インターバルにおける11時間ルールが適用されるかは法律に基づき解釈すべきであり、つまり労基法第34条に定めた交替制のみが対象で、一時的な勤務時間変更、又は2班、3班制における常時日勤、常時夜勤の場合は、残業時間についての法的制限こそ注意必要だが、11時間のインターバルは関係ない、との判断を下しました。(最高行政裁判所109年度上字第110号判決)

そのため、現時点においては、11時間ルールの適用範囲は、原則として交替勤務に限定されると考えて差し支えないでしょう。

台湾労働部が6月14日に公告した緩和措置

この間、台湾国内でコロナウイルスを発症する感染者は無症状や軽症者が大半とはいえ、人数的には去年警戒レベル3のときを遥かに超えており、緊急対策本部の指示に従って自宅療養したり、会社が能動的にWFHを導入したりすることで、作業現場での人手不足問題は日増しに深刻化しています。

そんな状態のなか、交替制を取る会社に常に11時間ルールの順守を要求するのは、会社の運営が破綻してしまう恐れがあるなどから、台湾の労働部は、去年レベル3の際に導入していた緩和措置を再び復活させ、以下4つの指定業種に該当すれば、勤務時間交替時のインターバルを11時間から8時間に短縮できるとし、適用期間を6月13日(月)~9月30日(金)にする公告をなさいました。

緩和措置に適用可能な指定業種

  • 製造業
  • 卸売業
  • 総合商品小売業
  • 物流倉庫サービス業

ただし、事業内容が上記の指定業種に該当するからと言って、労働部が公告した緩和措置を今からすぐ導入できるものではありません。

制度面に関する説明をさせていただいた内容にて、政府から許可をもらった後(今回の緩和措置)、労働組合又は労使会議からゴーサインが出て、なおかつ従業員30名以上の会社なら主務機関への報告もなされてはじめて、勤務時間交替時のインターバルを11時間から8時間に短縮することができるとされています。(労基法第34条)焦らずに、コンプライアンス事項をしっかりこなせてからインターバルの調整を行いましょう。

また、上記一時的な緩和措置とは別に、自社が展開する事業の特性で、班が交替するたびのインターバルを8時間にできたら、もっと効率よく回せるだと立証できる場合には、当局に対して個別申請を行うことも可能とされ、当局から許可が出れば、自社の事業形態を変更しない限り、8時間のインターバルを原則として問題なく実施できるとされています。

こういった個別申請は、当初は台湾鉄路やTPC(台湾電力)、CPC(台湾中油)等の国有企業しか行っていませんでしたが、当該申請制度はその後民間企業へも徐々に浸透していって、CSC(中国鋼鉄)をはじめとする鉄鋼会社、製紙事業者や化学品メーカーも続々と実施許可を取得しています。労働部が14日に公告したニュースレターは、3ヶ月半限定の8時間緩和措置のほか、台湾鉄鋼会社6社の個別申請が許可された情報も含まれています。(現時点最新の許可リストはこちら

当局からの緩和情報を待たずに、自社の必要に応じて、一度に許可を取得可能な個別申請の活用もご検討いただけます。

重要な補足事項

交替勤務制を導入する事業者は、2交替制又は3交替制のどちらを取るかを問わず、原則としてシフトの交替時に11時間のインターバルを確保する必要がある、との法的義務は前述のとおりです。では、勤務時間を切り替えようとする日に残業が発生したら、その間のインターバルは、通常通りの退勤時間から、それとも残業終了時から計算すべきか、との質問がよく出ます。

労働部の見解では、シフト変更時のインターバルは、労働者が実際労働を提供していない時点から計算しなければならない、つまり交替制の従業員が残業を終えてから、11時間の法定インターバルを満たすかの計算をしなければならない、との見方です。労働者の健康を守る観点で、そのような見解が示されるのも頷けましょう。

ただし、逆のパターンで、例えば交替制の従業員がシフト変更の日に半日の休暇を取得した場合、上記と同じ理屈とすると、労働を提供していない、つまり休みに入った時から11時間の計算をしたらよいのかというと、労働部からはNGの判断が出ました。

法的インターバルの計算について、残業したら残業終了後から、休みを取っても通常の退勤時間から、という行政からいささか納得がいかない見解が示されていますが、労働者の方に1日でも健康で居てくれて、会社のために頑張ってもらうためには、休憩時間については比較的寛大な対応をとる、というのもSDGsにつながる考え方となりましょう。

ATTENTION!

※本マサレポは2022年6月20日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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