「美容施術を受けるから病気休暇を取ってもいいですか?」と社員から言われたらどう対応すべきなのか?―知っておきたい病気休暇の疑問点8選

病気休暇は、私用休暇及び年次有給休暇と並んで、台湾休暇制度のなかで人気TOP3に入る休暇です。
病気休暇が労働者の間から絶大な人気を誇る理由はと言えば、取得可能な日数が比較的少なく、取得した日数だけ給料が減らされる私用休暇と年次有給休暇(有給残の買取賃金が減る)と比べたら、日数制限が緩いし、休暇日に半分の給料がもらえる、といったメリットがあげられます。そのため、申請するハードルが低い年次有給休暇より、病気休暇をできるだけ取得しよう、と考える労働者は少なくないようです。
一方、病気になったり入院したりすれば、病気休暇を取得するのは当たり前ですが、タトゥー除去や目元の美容整形などの施術を受けんがために、病気休暇を取りたい、という従業員からの申し出があった場合は、そのまま受理してもよいか、的な相談をために受けたりします。
たしかに、こういった施術を受けることはプライベートな領域の話に該当し、会社に開示するぐらいなら、年次有給休暇を使うほうがましだ、と考えるのは一般的かもしれず、そうそう起こることではありませんが、いざという時に備えて、この辺の考え方を把握しておくのもよいでしょう。
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目次
- 美容施術を受ける目的での病気休暇は成立するのか?
- 知っておきたい病気休暇の疑問点8選
- ①女性が申請する生理休暇は病気休暇としてカウントされますか?
- ②LINEなどのチャットアプリで病気休暇を申請するのは合法的なんですか?
- ③病気休暇を頻繁に取得している労働者への人事評価に低い点数をつけてもいいですか。
- ④人手が足りないから、労働者からの病気休暇申請を拒否してもいいですか?
- ⑤12月から翌年の1月まで続く病気休暇を取得した場合、病気休暇の使用日数はどのようにカウントしたらよいでしょうか。
- ⑥連続して病気休暇を取得した日数が30日超となったら(入院なし)、祝日休日の給料も支払い不要って本当ですか?
- ⑦病気休暇の取得に必ずエビデンス資料を提出必要なのでしょうか。
- ⑧労働者が休暇申請時に偽造のエビデンス資料を提出し、事後その事実が発見されたら、当該休暇期間を無断欠勤にすることができますか。
- 今週の学び
美容施術を受ける目的での病気休暇は成立するのか?
法律によると、通常の怪我、疾病又は生理的な理由によって、治療又は休養が必要となったとき、病気休暇を取得できるとされています(労働者休暇申請規則第4条)。
いわゆる「美容整形」は怪我でもなければ、疾病にも該当しないので、「生理的な理由」のうちに入るかは、病気休暇を取得できるかどうかのポイントとなってまいります。しかし、「生理的な理由」とは具体的に何を指すのかについては、主務機関から公式な見解がなされていないので、はっきりした判断ができない現状です。
一方、怪我や疾病以外の理由で行われる卵管結紮術を受ける場合、女性の労働者は病気休暇を取得できる、という政府通達(労働二字第28843号解釈通達)が公表され、排卵誘発剤の注射を打ちに病院へ通う場合も病気休暇を取得可能で、必要な医療行為以外の治療や休養を受けるためであっても病気休暇を申請できる、との公式見解(新北市労工局問答集)もなされています。
上記の見解によると、二重まぶた等眼瞼の手術、鼻を高くする隆鼻術など怪我や病気とは関係のない美容施術を受けるためであっても、実際病院やクリニックに通ったら、施術期間や施術後の安静期間は会社に対して病気休暇を申請できると解釈できる形になります。

そうすると、労働者は何かしら理由をつけて、半分の給料をもらったうえずる休みできるのでは?!
法律上、会社は必要に応じて、病気休暇の取得に関する証明書類の提出を労働者に求めることができるとされますので、社内の休暇申請規則を作って、病気休暇の取得にどういったエビデンスを提出必要かをしっかり定めておいたら、ずる休みが発生する確率も下がるでしょう。

知っておきたい病気休暇の疑問点8選
病気休暇はその他休暇よりコスパがよい分だけ、トラブルになりやすい問題点も多いです。以下、実務対応に活用可能な病気休暇に関する疑問点をチェックしてみましょう。
①女性が申請する生理休暇は病気休暇としてカウントされますか?
女性労働者が生理によって当日の業務をこなすのが難しい場合、毎月に1日の生理休暇を取得可能で、1年の間で取得した生理休暇が3日を超えなければ、病気休暇としてカウントされません(性別労働平等法第14条)。従って、入院なしの場合、女性労働者は年間多くて33日(30日の通常病気休暇+3日の生理休暇)の病気休暇を取得可能との計算になります。
②LINEなどのチャットアプリで病気休暇を申請するのは合法的なんですか?
労働者は、原則として事前に口頭又は書面で休暇を申請する理由及び日数を会社に報告しなければなりません(労働者休暇申請規則第10条)。チャットアプリでのやり取りを「書面」として扱っても差し支えないので、理論上は問題ありませんが、社内の休暇申請規則に反しないよう、エビデンス資料をどのように提出したらよいか、その他追加で行わなければならない手続きないかを確認しておく必要があります。

③病気休暇を頻繁に取得している労働者への人事評価に低い点数をつけてもいいですか。
病気休暇は労災休暇ではないので、病気休暇の取得頻度を人事評価の要素として考慮しても差し支えありません。留意が必要なのは、病気休暇を〇日取得した事実ではなく、病気休暇を頻繁に取得したことにより、会社への貢献度がどれぐらい下がったかとの点にフォーカスして、人事評価を実施しなければなりません。
④人手が足りないから、労働者からの病気休暇申請を拒否してもいいですか?
労働者から病気休暇の申請があったら、原則として会社は当該申請を拒否できません(95年度労上易字第18号判決)。ただし、労働者は社内の休暇申請規則を遵守しなかったり、会社が求める病院の領収書や診断証明などのエビデンス資料を理由なく提出できなかったりすれば、休暇を取得するための手続きが未完成のため、病気休暇の申請が正しく行われていない扱いにすることができます(労上易字第42号民事判決)。

⑤12月から翌年の1月まで続く病気休暇を取得した場合、病気休暇の使用日数はどのようにカウントしたらよいでしょうか。
入院なしの病気休暇は1年に30日が限度とされており(労働者休暇申請規則第4条)、労使間で特別な約定があった場合を除き、原則として1/1~12/31で計算する形になります。従って、労働者が連続して病気休暇を取得し、かつ年度を跨いだ場合には、日数計算は翌年の1月1日になってリセットされ、休暇の取得年度と終わる年度でそれぞれ30日を超えたか検証必要です(労働二字第41739号解釈通達)。
⑥連続して病気休暇を取得した日数が30日超となったら(入院なし)、祝日休日の給料も支払い不要って本当ですか?
いわゆる「連続30日超」の病気休暇は、休暇期間中にあった祝日・休日をすべて取り除いてなお30日を超える場合を指します。例えば、労働者が病気休暇として今年3/1~3/31をフルで休んだケースにおいては、同月の通常出勤日は24日だけなので(政府カレンダーに準ずる場合、以下同)、「連続30日超」の定義には当てはまりません。一方、労働者が3/1~4/30の間ずっと病気休暇で出勤していなかった場合、実質の出勤日は30日を超えた41日であったため、30日を超えた日の翌日、おおよそ4月の中旬から病気休暇の取得期間が終了するまでの祝日・休日の給料は支払い不要となります(労働二字第0990131309号解釈通達)。

⑦病気休暇の取得に必ずエビデンス資料を提出必要なのでしょうか。
前にも言及しましたが、労働者から病気休暇の申請があったら、会社はそれを拒否できませんが、エビデンス資料の提出を求める権利が付与されています。従って、エビデンス資料の提出義務があるかどうかは、社内の休暇申請規則に基づき判断しなければならず、エビデンス資料の提出なしでは、休暇申請手続きが未完成扱いにされる社内規則もあることを考えたら、エビデンス資料の提出は場合によって必要となりましょう。
⑧労働者が休暇申請時に偽造のエビデンス資料を提出し、事後その事実が発見されたら、当該休暇期間を無断欠勤にすることができますか。
労働者が会社のルールに基づき休暇申請を行い、かつ当該申請を会社によって許可されたら、たとえ当該申請に使用された資料に虚偽があったと認められたとしても、会社は当該一旦許可した休暇を欠勤扱いにすることはできません(労働二字第30260号解釈通達、労働二字第057926号解釈通達)。にもかかわらず、会社は自社の就業規則に基づき、不正行為を働いた事実があったとして対象労働者を罰する権限があります。

今週の学び
美容施術は、主に容姿を整えることが目的であり、それを受けるための休暇は無給の自己都合休暇として取り扱うべきなのでは、と考えたりしますが、行政からそれとは異なる見解が持たれるとは、ちょっとした驚きですね。しかし、行政の見解は裁判所の判断を拘束できないものなので、こういったケースが訴訟沙汰になったら、行政とは真逆な司法判断がなされないとも限りません。ただたかが数日間の半給(病気)休暇のために、わざわざ訴訟を起こしたりする会社又は労働者がいるのかは、また別問題です。
