37日内に結婚を4回繰り返した社員に合計32日の結婚休暇を与えないと違法になる?!―知らなければ損する結婚休暇のルール5選

台北市とある銀行マンは2020年に、37日の間で同じ相手と3回離婚して4回結婚したことで、就職先の銀行に対して合計32日の結婚休暇の申請を行ったが、結婚1回分の8日のみ許可されたことに納得がいかず、労働局に本件を告発しました。

その後、労働局は銀行の対応に違法性を認め、2万NTDの過料処分を下しました。当該処分を受けた銀行は不服申し立てを行うことにしました。

社員が結婚するのはめでたいことで、会社が新婚祝いとして結婚休暇を与えるのは人情であり、法的義務でもあります。

では、再婚する場合、2度目の結婚休暇を取得できるものなのでしょうか。また、不自然なほどに短期間で結婚と離婚を数回繰り返しても、やはり結婚した回数だけ結婚休暇がもらえるわけなのでしょうか。

以下、上記事例の結果を披露するとともに、台湾において知らなければ損する結婚休暇のルールを紹介させていただきたいと思います。

結婚休暇の取得要件

労働者は会社から結婚休暇を取得できる法的根拠は、労働基準法ではなく、労働者休暇申請規則に定められています。

結婚した労働者に対して8日の結婚休暇を付与し、当該休暇間の賃金は引き続き支給しなければならない。

また、結婚が成立する要件は、披露宴が開催されたり、結婚式が行われたりするのではなく、婚姻届けを戸籍事務所に提出し受理されたプロセスが要求されるため(民法第982条)、婚約が成立しただけの場合は、原則として結婚休暇が取れない形になります。

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結婚休暇の取得に回数制限あるか?

法律上、労働者が結婚したら8日の結婚休暇がもらえる、とだけ定められており、労働者が再婚したケースへの取扱いに関する言及は特にないように考えられがちですが、実際のところ、再婚であっても、結婚した事実が存在する以上、会社は結婚休暇を与えるべきだという、労働当局から公式見解がなされています(台内労字第467204号通達)。

話しが戻りますが、表題にあった、「37日の間で同じ相手と3回離婚して4回結婚した」ケースについては、関連法律と当局の公式見解に照らし合わせると、銀行はルールに従って、1回の結婚で8日、合計32日の結婚休暇を当該社員に与えなければならない法的義務がある、と判断することが正しくて、その通りに行わなかった銀行に2万NTDの過料処分が下されるのも仕方のない話かもしれませんね。

この事件で労働法界隈でちょっとした騒ぎが起こって、専門家の間からは、「行政はそのような判断を出してよいものか」、的な議論が騒がれていました。結果、過料処分を出した労働局の上級機関からもろもろ“指導”がなされ、労働局は次の理由によって、過料処分を取り消すことにしました。

本件の審査担当者が法律を一生懸命守る姿勢は評価できるが、事件にかかわった労働者は信義誠実の原則に反するか、同人の行いが権利濫用に該当するか、といって点が考慮されておらず、社会通念上どう考えてもおかしいから、そのような処分を出したのはやはり不適切かと。

結論としては、法律は権利を濫用する者の味方になるべからず、との一言に尽きましょう。

同性婚も結婚休暇の対象になる?

台湾は2019年5月17日に、「司法院釈字第748号解釈施行法」が立法院で可決され、同年5月24日に施行した日から、同性婚が法律上有効となりました。結婚休暇の法的根拠においては、異性婚と同性婚に対してそれぞれ異なる取扱いが定められるわけではないので、同性婚の場合も普通に結婚休暇を取得できます。

結婚休暇の取得期間は何時から何時まで?

結婚休暇の取得要件は、「結婚する」ことです。そして結婚するには「婚姻届けを出す」必要があります。従って、結婚休暇の申請は、早くとも婚姻届けを出した日から、との認識が強いですが、労働部の公式見解によっては、結婚休暇の取得期間は、原則として結婚した日10日前から3カ月以内であり、会社から承諾を得られれば、取得期間が1年以内に延長可能とされています(労働条3字第1040130270号通達)。

また、コロナウイルスの感染状況が台湾で一番厳しい2021年に、会社さえ同意すれば、結婚休暇はコロナ緊急対策本部が解散して1年以内で消化すればよい、との通達も当局から発表されましたが、海外旅行が解禁された今においては、このコロナ臨時措置の存在意義も薄まりつつあるのでしょう。

結婚休暇は分割取得可能か?

結婚休暇は8日(休日・祝日不算入)という比較的長い休暇であり、一度に使い切るのはややしんどいなので、分割で取得したい、と希望したりする人は少なくありませんか。

台湾労働当局の見解ですと、結婚休暇は原則として分割取得不可との判断がなされていますが(台内労字第321282号通達)、会社との合意があれば、分割取得も可能とされています。

今週の学び

結婚休暇はその他休暇と一緒で、労働者に与えられる法定福利厚生の一種です。結婚の事実さえあれば、極端な話し、たとえ入社初日で当該事実が発生したら、会社から8日の結婚休暇が取得できるルールとなっています。

一方、表題の事例は形上、結婚した事実が4回あるから、法律に基づき合計32日の結婚休暇を会社から取得する権利があるように見えますが、37日間という短期間で、同じ相手と結婚・離婚を3~4回繰り返し行う形で作り上げた「事実」は、果たして本当の意味の結婚に該当するかは甚だ疑問です。こちらの事件は、大事な個人の名前を「シャケ」に変えるまで、無料でお寿司が食べたい、いわゆる「鮭の乱」を想起されて仕方がありません。

マサレポ、今週の学び

  • 再婚しても結婚休暇が取れるが、結婚休暇をとる目的で結婚を繰り返し行った場合は対象外。
  • 結婚休暇の取得要件に同性婚または異性婚の区別はありません。
  • 結婚休暇は結婚前10日から3カ月以内で取得可能で、会社から許しを得れば1年延長可能。
  • 結婚休暇は原則として一度にフルで取得必要。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年3月27日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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