月間残業合計時間は、法定上限の46時間を超える方法ってある?
台湾の労働基準法では、残業を含めた1日の労働時間は12時間が上限で、1ヵ月の合計残業時間は原則として46時間を超えてはいけないという風に定められています。ただし、こちらのルールは2018年3月1日に入ってからちょっとした変化が起きました。
月間Max54時間が可能
そう、2018年3月1日の労基法一部改正で、月間残業時間を合計54時間にすることができるようになりました!(労働基準法第32条第2項)しかし、この54時間というのは、年がら年中無制限に実施できるというわけではなく、予め決めた3ヶ月の間での累計残業時間が138時間を超えない範囲で実施しなければなりません。例えば、7~9月が実施期間で、7月と8月にそれぞれ月間54時間の残業を実施するとします。その場合、9月の残業可能時間は、法改正後のMax54時間ところか、通常の46時間さえ届かない30時間しかできない計算となっています。一見残業時間制限の大幅緩和措置のようだが、実際は要注意点満載の特殊ルールとなっていますので、運用上しっかり気を付けなくてはなりませんね。
残業時間制限の引き上げに従業員の同意が必要?
残業時間制限の引き上げについて、会社が一方的に決定できるわけではなく、労働組合か労使会議の決議をもって、それを通過させなければ実施できない定めがあるため、従業員代表の同意を得ることが必須条件の一つとされています。同意を得るというのは、ただ会議の現場で、従業員代表に、「はい」と言わせたら終了のような類のものではありません。きちんと本件決議が通過したとの旨を書き記した議事録を保管する法定義務が定めたれているため、いざ地方労働局から抜き打ち検査をされて、かつ当該議事録を提出できなかったら、月間54時間の残業は違法とみなされ、会社はペナルティ対象とされてしまいます。
実施期間の設定が大事
労使会議等で従業員の同意を得たので、早速1月から実施しよう!という風にむやみに実施期間を決めるのは危険です。きちんと自社の繁忙期と閑散期を見極めてから範囲を設定しておらず、ただ安直に、1~3月、4~6月、7~9月、10~12月の順番で実施していき、そして対象年度の繁忙期は例えば7~9月に集中的に起きてしまった場合、ペナルティを覚悟のうえで残業を実施しなければならないとの窮地に陥ってしまいます。同じ例で、例えば予め残業制限時間引き上げの実施期間を5~7月と8~10月に設定し、両期間ともに138時間ルールを守ることを前提に、7~9月の間はずっと月間Max54時間の恩恵が受けられるようになるわけです。(5月、6月及び10月の残業時間を少なめに)実施期間設定の重要さはこれで明らかとなります。
主務機関への届け出を忘れずに
労使会議を開催し、残業時間制限の引き上げ案を通過させ、議事録を完璧に作って、なおかつ138時間ルールもきちんと守っているから、ペナルティんなんて恐るるに足らず!!と思いきや、翌月の労働検査でまだ2萬台湾ドルの貢ぎを献上させられました。実は、同法の定めでは、従業員数が30人以上の会社は、上記法定手続きのほか、現地の主務機関への届け出も義務付けられています。強敵を次々と倒し、ラスボスも間一髪で辛勝を取ったにも関わらず、誘拐された姫の解放をうっかり忘れただけで、バッドエンドを強いられた悲劇を味わわないように、手軽に届け出ができる当局のオンライン届け出サイトを下記共有致します。忘れないように、労使会議の後、すぐ登録しましょうね。
Attention!
※こちらの文章は2021年7月8日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。