台風になったら、必ず社員に休暇を与えなければならないものなのか?

年に何回も台風に悩まされる国同士、日本と台湾。それぞれの国の労働法においては、”台風休暇”の概念が作られていないにもかかわらず、台湾側では、「台風になったら、必ず社員に休暇を与えなければならない」という説が根強く残っています。それが原因で、台風が上陸する前夜、多くのサラリーパーソン(と学生)はハラハラドキドキお住まいの県市の発表を深夜まで見守って、出勤停止命令が出されることに多大な期待を寄せながら同僚等とネット、電話ではしゃいだりする奇妙な現象が、夏休みから中秋節にわたって一度なく繰り返されているという、台湾ならでもの面白い風物詩の一つとなっています。

台風になったら、必ず社員に休暇を与えなければならないものなのか?それとも”台風休暇”という存在は、単なる都市伝説なのかについて、台湾の労働部が公表した、台風をはじめとする自然災害が起きたとき、休暇及び賃金についての注意点をQ&A形式で下記共有させていただきます。実務対応時の一助となれば幸いです。

労働法に定めのあった「自然災害」とは?

台風、洪水、地震その他主務機関が指定した自然災害を指します。

自然災害発生時(後)、どういった状況が有ったら、労働者は出勤しなくてよいのか?

自然災害が発生することによって、労働者の出勤先、居住地又は通勤経路にあった県市で、当該県市の知事から出勤停止命令が出され、若しくは出勤停止命令がだされていなくても、自然災害が起きたことによって、道路交通が阻害されていることで、時間通りの出勤が見込めず、ましくは物理的に出勤できなかった場合には、労働者は出勤しなくてもよいものとされています。

労働者に自然災害が起きた日に出勤させようとする場合の注意点は?

会社は自らが営む事業内容の性質によって、一部の労働者に自然災害が起きた日に出勤させようとする場合には、労使双方が交わす労働契約書等に、事前にその旨を定める必要があります。一方、会社に労働組合を設置した場合は、事前に当該労働組合から台風日出勤の同意を得なければならず、組合がなかった場合には、労使会議をもって、台風日出勤についての取り決めを通過させなければなりません

テレワーク中の社員は、台風上陸の日に出勤必要か?

防疫の関係で、会社からテレワークを命じられた労働者は原則として自宅で仕事をこなしており、特に台風の影響を一切受けていなかったら、通常出勤を労働者に要求することができます。

労働者は自然災害で出勤できなかった場合には、欠勤扱いにしたり、自己都合休暇の取得を要求できる?

自然災害で出勤できなかったり、テレワーク中であっても自宅が被災して仕事ができなかったりした場合には、労働者の責に帰さない事由によるものであったため、会社はそれを欠勤や遅刻扱いにしたり、自己都合休暇その他休暇の取得を労働者に強制したり、皆勤手当を差し引いたり、懲戒解雇その他労働者に不利な処分を下したりしてはいけないとされています。

労働者が自然災害で出勤できなかったら、賃金を支払う必要?

自然災害起因の出勤不能は、労働基準法に定めのあった休暇の性質とは異なり、会社は出勤しなかった分を賃金から差し引く権利があります。一方、行政の観点では、会社は日々会社に貢献する労働者の生活を最大限に面倒を見るべきであり、賃金を差し引かない方向を推奨しています。

労働者は会社の命令に従い出勤した場合における賃金の支払いについて

会社のために無理して出勤した労働者に対しては、会社は親心をもって、プラスアルファの賃金を支払うとともに、交通手段を用意したり、別途な通勤手当その他必要な協力をすることが望ましいであると、行政が勧めています。

自然災害時の出勤で、労災に遭った場合の対応は?

自然災害起因の労災は、次のように対応しなければなりません。

自然災害起因の労災

  • 労働者は労災に遭って、労働能力が失われたり、傷害又は疾病があった場合には、治療及び休養期間においては、会社は労災休暇を与えるとともに、労働基準法第59条の定めに従い労災補償を支給しなければなりません。
  • 労働者は労災以外の原因で、傷害、疾病その他健康問題があって、治療又は休養が必要となった場合には、所定書類を会社に提出のうえ病気休暇を取得することができます。

自然災害発生時、家族の介護が必要となった場合の休暇ルールは?

家族の介護が必要となった場合の休暇ルール

  • 自然災害発生時(後)においては、家族の介護が必要とされる労働者が居た場合には、当該労働者は性別就業平等法に基づいて家族介護休暇を会社から取得することができます。
  • 家族介護休暇は1年に7日を限度とし、自己都合休暇と合算して1年に14日を超えてはなりません。
  • 家族介護休暇は原則として無給休暇となります。
  • 会社は、家族介護休暇の取得を理由に、労働者に対して皆勤手当を外したり、人事評価を悪くしたり、その他労働者に不利な処分をしてはなりません。

自然災害発生時、家族の介護が必要となったが、家族介護休暇の枠は既に使い切ったらどう対応するか?

家族介護休暇は日数超過で取得できなかった場合には、労働者休暇規則に基づき無給の自己都合休暇を取得するか、会社と相談して年次有給休暇を取得することもありです。

親族が自然災害で亡くなった場合には、休暇を取得できる?

労働者休暇規則第3条に定めのあった要件を満たした場合には、同条の各号に規定した日数によって、有給の忌引休暇を取得可能となります。

労働者が自然災害の後においても出勤できなかった場合における対応は?

自然災害が終息した後においても、被災がひどく道路交通が阻害されることで、出勤できなかった労働者が居た場合には、会社は欠勤や遅刻扱いにしたり、自己都合休暇その他休暇の取得を強制したり、皆勤手当を差し引いたり、懲戒解雇その他労働者に不利な処分を下したりしてはなりません。また、会社が当該労働者に対して、前述の理由で出勤できなかった分の賃金を引き続き支払うことが望ましいとされています。(自然災害発生時における事業者が行う労働者の勤怠管理及び賃金支払い方針)

労働者が自然災害の後において、被災した自宅住居の片付けを行おうとする場合の取り扱いは?

自然災害が終息してから、被災した自宅の修繕又は片付けを自ら行わなけければならない事情があった場合には、労働者休暇規則に基づき自己都合休暇を取得したり、会社と相談して年次有給休暇を取得したりすることができます。

自然災害発生時(後)、休暇を取得しようとしても取れる休暇がない場合の取り扱いは?

自然災害が発生し、又は終息後においては、自然災害による影響と相当な因果関係があったと認められる事由をもって、休暇を取得しようとしても、既に労働法に定めのあった全ての休暇を取得し尽くした労働者は、会社と相談し自己都合の休業を取得することができます。会社は一方的に、正当な理由が認められない継続的な欠勤を理由に、当該労働者を懲戒解雇してはなりません。

まとめ

台風上陸によって、政府から出勤停止命令が出たとき、会社は引き続き社員の出勤を命じることができます。社員の身の安全を考慮し、出勤停止命令の日に社員に出勤させない場合には、当日の賃金を支払うかは労使双方の取り決めに準拠すればよいもので、賃金の支払いは強制事項ではありません。

一方、会社は政府が発表した出勤停止命令の日に社員に出勤させようとする場合には、社員は法律に基づいて会社から所定の休暇を取得する権利を有しており、会社は原則としてそれを理由に社員に対して不利な処分を下してはなりません。

Attention!

※こちらの文章は2021年8月8日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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