台湾の生理休暇を取るのに、何か証明書が要る?

クレジットカードの請求書と同じように、1ヵ月に一回、生理の日が女性社員に訪れます。仕事への影響については個人差こそあれ、生理日とそれ以外の就業日における身体的コンディションはやはり何等かの違いがあると考えられます。こういった事情を考慮し、生理日の就業が著しく困難な女性社員のために設けられたのは生理休暇となります。日本にもある生理休暇は、台湾において特に要留意な点はなんだろうかついて、クライアントから相談頻度の高い、「生理休暇を取るのに、何か証明書が要るだろう!」という、よく病気休暇と間違われている質問について解説をしたいと思います。

台湾の生理休暇の基礎について知っておきましょう!

生理休暇の規定について、性別就業平等法第14条の定めによると、女性社員が生理の日に具合が芳しくなく、仕事に支障が出たりする場合には、1ヵ月に1日の生理休暇を会社から取得可能で、通年での取得日数が3日以下であれば、年間認められる病気休暇の限度日数にカウントされず、3日超であれば、超過した日数 が病気休暇の限度日数にカウントされます。会社では、生理休暇の取得日数に応じて、日割り計算した賃金の50%を取得社員が受領する賃金から差し引くことができるとされています。

また、同法第21条においては、女性社員が生理休暇を取得する旨を申し込んだ際に、会社はそれを拒否することができず、なおかつ、生理休暇の取得を理由に皆勤手当を差し引いたり、人事考課をマイナス評価したり、その他不利な処分を下してはならないともされています。これら強制事項を違反した会社への罰則として、台湾ドル2~30万元の過料、並びに社名と責任者名の公表が用意されます。罰則を受けてなお改善しようとしない場合には、違反した回数に応じ連続して処罰されます。(同法第38条)

上記いずれの法規定も、生理休暇の取得に証明書を提出する必要あるか否かに関する言及がないものの、”病気休暇とは別に年に3日間取得可能”、”病気休暇と同じ賃金の半分がもらえる”、”会社が生理休暇の取得を拒否できない”、”罰則あり”、といった生理休暇に関する要留意事項があることが分かります。

台湾の生理休暇を取るのに、何か証明書が要る?

「生理休暇の取得には証明書が要るか」という質問への回答は、実は性別就業平等法施行細則の第13条にてヒントが与えられています。当該条項の内容によると、社員が性別就業平等法第15~20条の定めに基づき会社に請求を行おうとするとき、会社は必要に応じて証明用文書の提出を求めることができるとされています。 性別就業平等法の第15~20条に定めのあった休暇を含めた請求権は以下のようなものです。

性別就業平等法の第15~20条に定めのあった休暇を含めた請求権

  • 第15条:出産休暇
  • 第16条:育児休業
  • 第17条:育児休業後の職場復帰
  • 第18条:育児時間
  • 第20条:家庭介護休暇

あれ、生理休暇が見えないけど?その通り!第14条の生理休暇の取得に、会社は証明用文書の提出を求める権利がないんです!生理休暇を取得しようとする女性社員に対して、あえて証明用文書の提出を求めたりしたら、生理休暇の取得拒否と同じく、過料と社名公表のペナルティが下されてしまいます。

生理休暇の取得に証明用文書が提出不要とのルールは、何時から?

上記の段落に話した、会社が必要に応じて、証明用文書の提出を求めることができることを定めた性別就業平等法施行細則の第13条は、実は2014年初に発効することとなった、改正性別就業平等法施行細則にデビューした法規定となりまして、それ以前の第13条は、証明用文書提出の適用範囲を性別就業平等法第14条~20条に定め、つまり第14条に規定した生理休暇は、もともと会社はそれを取得しようとする社員に対して証明用文書の提出を要求できる形となっていました。

法改正の理由について、当局は次のような見解を述べています。実務上、女性社員が生理休暇を取得しようとするとき、一部の会社は必要性が認められるかどうかにかかわらず、対象社員に医療証明書の提示を要求する傾向がありまして、生理による不快症状は客観的に判断したり、医療機器で検査したりすることが難しく、例え病院にて診察を受けたからといって、医師も患者自らの説明に基づき診断するしかなく、辛さに耐える能力に個人差があることを考慮し、この辺の認定は大変困難であるため、労使紛争が絶えませんでした。こういった労使紛を事前に回避するとともに、積極的に女性社員の健康を守ろうと、2014年の法改正があったとの説明がなされています。

レアケースの取り扱いについても留意しておきましょう!

病気等の原因により、子宮及び卵巣を摘出した女性社員は、適切な医学検査で、依然として排卵反応があって、かつ排卵日にはホルモンの変化による不快症状があったと認められたとき、不快症状があった日での就業が著しく困難であった場合には、会社から生理休暇を取得することが可能、という行政判断が2016年になされています。(労働部労働条4字第10401325621号通達)また、こちらのケースも、対象社員に対して証明用文書の提出を要求不可とのルールも引き続き有効なので、併せて留意しておいてくださいね。

生理休暇について、裁判所が出した最近の判決事例

台湾新北市のA社は2017年に、生理休暇の申請を申し込んだ女性社員に対して、A社に出向いたうえ排卵検査紙で生理であるかをチェックすることを要求し、検査の結果をその他社員が撮影し証拠書類として保存する社内ルールを作りました。当該女性社員が事後新北市の主務機関に通報し、当局が定期的に開催する評議委員会でA社に違法行為があったと認め、10万台湾ドルの過料と社名・責任者名公表の処分を下したとともに、直ちに是正するようA社に命じました。

当該処分に不服するA社は同年、新北市政府を相手取り行政訴訟を行いました。訴訟係属中に、A社は訴えを変更したりして高裁から勝訴判決を勝ち取ったものの、最高裁に至っては、A社は排卵検査紙で生理の有無をチェックすることで、プライバシーを侵害する手段をもって生理休暇の取得ハードルを故意に上げようとし、同休暇の実施への妨害行為があったほか、女性社員全体に同様な生理休暇の取得手続きを要求することで、労働者の権利と利益に多大な影響を与えることによる有責性、並びにA社の経済的規模(社員数約100名、資本金1億台湾ドル)を総合的に判断し、行政が最初に下した処分は理由のあったものと認め、A社の敗訴を言い渡しました。(最高行政裁判所109年度判字第114号判決)

結論

台湾の生理休暇を取るのに、何も証明書が要りません。会社が当該休暇申請を拒否したり、証明用文書の提出を求めたり、対象社員に対して不利な処置を講じたりすることは、台湾の労働法上違法となってしまいますので、しっかりと覚えておきましょう。

Attention!

※こちらの文章は2021年8月15日までの法規定をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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