日本帰国時の断捨離で税金を払う必要があるか?この一本でモヤモヤを徹底解消しましょう!

台湾で個人事業を展開する個人事業主、又は本社の命を受け台湾に赴任した駐在員の方は、台湾での事業、任務を終え、日本へ帰国することとなった場合には、原則として台湾の税法に基づき、帰国日までに台湾個人所得税の確定申告を行う必要があります。(確定申告の期日ルールに関してはこちらを合わせてご参照ください)こちらの手続きは、ほぼ過年度とおりに実施すればOKなので、通常、問題にはなりません。

一方、台湾で数年住んでいたら、孫悟空のように年がら年中一張羅の道着で生活できる極端なミニマリストでない限り、必然的にそれなりの白・黒物家電、マンガやアニメグッズその他生活必需品が置かれるようになり、いざ帰国の話しが出てくると、限られた時間でこういった代物をどう処理するか、という少々頭をひねる問題に出くわします。

身の回りの物を日本に送ったり、台湾の知り合いにあげたり、ゴミ捨て場に適宜処分したりする、といったオーソドックスな対応方法なら比較的問題にはなりません。一方、帰国にかかる諸費用に充てようと、これらの持ち物をFacebookの販売グループやその他台湾のECサイトで売却する、といったやり方も活用されているそうです。

使い古した物、使い道がなくずっと自宅に置いてある未使用の良品等を他人に売却する行為は、別に商売ではなく、個人として不要な物を処分するに過ぎないから、税金は関係ないのでは?

との考えは一応筋が通ります。ただし、こういった行為は取引行為に該当し、かつお金のやり取りも絡んでいるから、果たして本当に無税で大丈夫なのか、何か法的根拠ないか等、言い出したらモヤモヤが深まる、一見常識的に見えそうな台湾の税金にまつわる疑問点について、以下、分かりやすく解説を展開していこうと思います!

まずおなじみの営業税から話しをしよう

コンビニやデパート、コスメショップなどで買い物をした後、店から統一発票を渡されます。統一発票は原則として営業税5%込みの金額で表示されるため、営業税は台湾の各種税金のなかで一番身近に感じると言ってもよいでしょう。ECサイトで物を売る行為と営業税との関係は以下になります。

インターネットを通じて物品を販売し、かつ月間の売上が8万NTD(サービスの提供は4万NTD)に達したら、居住地の税務署に対して営業税課税事業者の登録申請を行い、四半期ごとに営業税(税率1%)の申告・納付手続きを実施必要とされており、月間の売上が20万NTDに達すると統一発票の使用が義務付けられ、そして申告、納税手続きが2ヶ月に1回、適用される営業税率も5%になります(仕入税額控除可能)。

えっ、要らない物月間8万NTD超を処分したら、営業税の納付義務が発生するのか?

決してそうではございません!

以下3つの要件のいずれかに合致したら、たとえ1ヵ月間の処分額が8万NTDに達しても、営業税課税事業者の登録義務は発生いたしません。

営業税課税事業者を登録不要なケース

  • インターネットを通じて売却するのは、自ら使用した中古商品であること
  • 購入した商品は使い道がなく、未使用のままインターネットを通じて売却すること
  • 他人からタダでもらった商品を、使い道がなくインターネットを通じて売却すること

実は、いわゆる8万(サービスの提供は4万NTD)、20万ルールは、利益を得る目的で、ECサイトなどを通じて仕入販売に従事する行為があった場合のみ適用される法律作りなので、帰国寸前の出血大サービス一括処分は、原則として営業税は課税されません。統一発票の発行手続きを気にせず、必要に応じてどんどん処分していきましょう。

一方、もっぱら他人から中古商品を購入し、利益を稼ぐ目的で、ネットショップで販売したりするという、いわゆる「中古転売屋」の取引に一度ならず従事していれば、前述した免除要件は適用されず、月間の売上が8万NTDに達したら営業税の申告・納税が生じてまいりますので、軽く留意しておきましょう。

次は、国税への年次賞与である個人所得税

1ヵ月間で持ち物の処分金額を8万NTD以内に抑えたら、営業税課税事業者にならずに済むし、年1回の個人所得税も関係しない、と安易に考えてしまったら、ちょいと危ないかもしれません。

台湾の所得税法によると、折に触れてインターネットを通じて物品を販売し、かつ利益を得られたら、売上の6%(記帳をしっかりやっていたら実額申告も可能)をもって、「一時貿易所得」として個人所得税の確定申告を行わなければならないとされています。ですから、物品購入時のエビデンスがまだ手元にあって、それの売却で一切利益が発生しないことを立証可能な場合を除き、たまたまネットで持ち物を売る行為があったら、利益が出るかを問わず、個人所得税が課税される可能性があります。

そして、当たり前のように、お約束の例外が設けられています。

個人で使用する車や衣料品、家具その他日常用品の売却で得た所得は、所得税が課税されません(所得税法第4条財政部940505台財税字第09404532300号通達財政部801223台財稅第800761311号通達)。

従って、営業税のルールと同様、ほかの人からかき集め、ECサイトなどで売りさばいたりする行為に該当しない限り、あくまでも「個人が使用する」中古品を売却するだけなら、たとえ購入価格を証明可能なエビデンスが残っていなくても、給与その他所得とともに、個人所得税の確定申告を行う必要はありません。

そもそも、国税はどうやってゲリラ的な個人取引を把握するのか?

そうですね。個人が要らないものを換金するレベルの取引でしたら、もともと課税されませんし、コスパを重視する国税も興味を示してくれません。

ただし、取引の頻度や金額の大きさ次第で、国税のアンテナに引っかかってしまう可能性があります。

国税の今までのやり方だと、良き市民からの外部告発や金融機関からの情報共有に頼って、ECサイトでジャンジャン稼いでいるが、一切申告していない、いわゆる見えざる事業者を見つけ出し、追徴課税を行ってきました。一方、FacebookやLINEを始めとするソーシャルメディアでフリマグループがあちこちに出来上がっており、コロナ禍で強くなった在宅勤務の風潮も相まって、個人レベルで展開するeコマース事業はかつてない活況を見せています。まさにeコマースの「大海賊時代」に直面する国税は、さすがに今までのアナログな調査方法は間に合わないと悟り、もっと効率よくeコマース事業者を捕獲し、しっかりと税金を納めてもらう方法ないかと、いろいろ知恵を絞った結果は、2022年6月27日に施行した「金融機関が税金徴収機関に個人の金融口座にあった高頻度取引の情報を提供する作業指針」です。

同指針によると、同一個人が有する1口座で、賃金や手当、政府の補助金、利息収入、相続財産、他人からの返金等を除き、1年間(1/1~12/31で計算)の入金額が累計240万NTDに達し、かつそのうちの任意の4ヵ月で、月次の入金回数が200回に達したら、「高頻度取引」があったとみなされます(同指針第2条)。その場合、高頻度取引のあった口座を管理する金融機関は毎年の3ヶ月末までに、対象口座の番号や過去1年間のすべての入金履歴(同指針第5条)、対象口座所有者の氏名や身分証明書の種類と番号、対象口座の作成年月日といった情報をまとめて、税金徴収機関に提出しなければならないとされています。(同指針第3条、第4条)なお、台湾の金融機関による高頻度取引に関する情報開示は、来年、2023年3月31日までに記念すべき第1回が行われる予定です。(同指針第5条)

前述の指針からは、お金のやり取りを本格的に調査することで、今まで納税義務を逃れてきたeコマース事業者に、今度こそ憲法に定めた国民の義務を果たしてもらうと、台湾の国税の本気度が伺えます。ただ、日本へ帰国する前に行う一掃セールによって、個人の口座が急に「高頻度取引」があったと認められる確率がほぼゼロなので、こういった金融機関と税金徴収機関との情報交換は気にしなくてもよいでしょう。

ネットで商品を売買するには、予め台湾の「就労許可(労働許可)」を取得必要か?

関連法律によると、台湾の会社又は個人に雇用され、台湾において就労活動を行うためには、予め就労許可を取得必要とされています(就業サービス法第43条)。ただし、個人が無用の長物をネットで売るだけでは、他人との雇用関係が発生するわけでもないし、就労活動に該当するとも到底思えないから、就労許可の取得は不要と考えられましょう。では、単純に身辺の物の断捨離ではなく、本業とは別に、ガチでフリマアプリ等において商品の売り買いを行おうとしたらどうなりますか?

台湾の労働部が2018年にリリースした解釈通達によると、国民の就労機会に影響が及ぼさず、台湾国内の法人又は個人から委託を受けサービスを提供するわけではない前提で、ECサイトで物品を販売する活動の実施に就労許可の申請は原則として不要であるが、既に就労許可を所持し台湾で居住する外国人は、同就労許可で記載されていない活動を行うことができないため、この限りではないとされています(労働発管字第1070507378号通達)。そのため、就労資格で台湾に長期滞在される日本人の方は、副業としてECサイトで小売り事業に従事することは、台湾の法律上NGとなりますが、それ以外の在留資格なら、別途就労許可を取らずとも、個人事業主としてネットでの小売り事業を行うことが可能となります。ただし、課税事業者に該当するかは引き続き要チェックです。

今週の学び

ここまで見てきたら、台湾において、軽くネットで物の売り買いを行うためには、営業税、統一発票、所得税、就労許可、もろもろ七面倒な制度や手続きに気を配らなければならないことが分かりました。こんなに面倒くさいなら、ネット販売をやめておこう、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、幸いなことに、ただ単に個人の不要な物をネットで売却するのであれば、たとえ利益が出たとしても(他人からもらった贈答品を売るなど)、課税されないし、就労許可も要りません。安心してどんどんダン活(断捨離活動)に取り組んでいただけます。

もしダン活を実施しているなかで、思わぬ商機が閃いて、ネット小売事業者にクラスチェンジしようと考える方向けに、今週の学びを以下整理致します。必要に応じてご参考いただけたらと思います。

マサレポ、今週の学び

  • ECサイトでの商品販売の売上が8万NTD/月(サービスの提供は4万NTD)に達したら、営業税課税事業者の登録を行い、定期的に営業税の申告・納税手続きを行う義務が発生。売上が20万NTD/月に達したら、さらに統一発票を使用必要。
  • ビジネス活動としてネットで物品を販売し、かつ利益を得たら、金額を問わず個人所得税の申告時にそれを含む必要があります。記帳するかによって税金の計算方法が変わります。
  • 2023年3月までに、初回の「高頻度取引(240万/年+200回/月)」がある金融口座の情報開示が行われます。無申告でeコマースをやってきたアングラな個人事業主は要注意!
  • 個人でネット小売事業に従事したら就労許可の申請は原則として不要ですが、管理職又は技術者の就労許可を既に所持している場合、ネット小売事業は資格外活動とされるため、副業として実施できないとされます。

ATTENTION!

※本マサレポは2022年11月4日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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