えっ、これ印紙税かかるの?しかもいきなり過料30倍!?

毎日の買い物で支払っている営業税、年1回財布の健康診断料である法人税と個人所得税、マイホームの社会保険料である土地・家屋固定資産税、車やバイクを使ったらナンバープレート税......などなど、必ず行わなければならない確定申告と、嫌でも届く納税書の関係で、前述した税金は、台湾において普通に馴染んでいるものかと思います。

上記とは別に、お金や物を他人にあげたら贈与税、人が成仏したら相続税、をそれぞれ納めることが必要です。支払う機会が少ないんですが、そこそこ知名度の高い税金なので、特に宣伝をしなくても強い存在感が示されています。

では、印紙税は?と言うと、その単語自体はたまに聞くが、何をどうしたら課税されるのか、どのように納税したらよいのか、はたまた税率はどんな感じなのか、即座に応えられる人は多くないかもしれません。

何故なら、一個人としての日常の営みのなかでは、印紙税を納付しろと言われる機会がないに等しくて、会社経営をやっている中でも、それを納めた記憶を有する事業者もそれほど多くと言えなくもありません。

印紙税の存在感が薄い理由は、それを納める機会が少ない、というわけではなく、ルール上は課税されるのに、知識がないため、それをほったらかしにしているケースが大変多いようです。

実際のところ、印紙税関連の税務調査は毎年1~2回行われており、いくつかの指定業種がピックアップされた後、対象となる会社に検査通知書が送付される仕組みとなっています(印紙税検査規則第3条)。

うちは印紙税を納付するTPOが分からないから、税務調査に入られたらいちころじゃん!

いちころの心配が杞憂に終わらせるよう、是非とも今回のマサレポをお目通しいただき、しっかりとマサひろんとともに税活に取り組みましょう!

台湾印紙税の課税対象

どういったタイミングで、印紙税を支払う必要かといと、原則として台湾国内で以下のエビデンス資料を作成したら、納税義務が発生するとされています(印紙税法第1条)。

  • 領収書
    • 通常の領収書など、金銭の受取を証明するための書類であれば、課税対象となります。ただし、個人の飲食店でもらえる、統一発票の代わりに使用される領収書や抽選に参加できる統一発票は課税対象外です。
  • 動産売買契約書
    • 生活必需品や車、食品の原材料など、不動産以外の有形資産を取引するための契約書や合意書などが該当します。
  • 請負契約書
    • 他人から仕事の依頼を受けて、その通りに完成し成果物を提出するという、いわゆる業務委託を行うための契約書です。例えば各種の工事契約や製品加工契約書など。
  • 不動産の担保・売買・分割に関する契約書
    • 土地や家屋などの担保設定をしたり、マンションの売買や贈与であったり、農地の分割であったりするなどを証明するための契約書になります。

台湾の印紙税の税率

台湾の法人税は分かりやすい固定税率で、個人所得税は稼げば稼ぐほど負担が重くなる超過累進税率で計算されます。一方、印紙税は固定でも累進でもなく、課税文書の種類によって税率が変わる仕組みが取られています。以下、それぞれの税率を見てみましょう。

  • 領収書
    • 印紙税額は、同書に記載された金額×4‰で計算されます。
  • 動産売買契約書
    • 1件につき12NTD、という非常に手ごろな税率設定です。
  • 請負契約書
    • 印紙税額は、契約金額×1‰で計算されます。
  • 不動産の担保・売買・分割に関する契約書
    • 印紙税額は、契約金額×1‰で計算されます。

台湾印紙税の納税時期と納税方法

印紙税を支払うタイミングについて、作成した課税文書を他人に交付したり、それを使用したりするときに、収入印紙を当該文書に貼り、所定の方法で消印する必要があります。(印紙税法第8条)

収入印紙は台湾の郵便局で購入可能になります。印紙税の計算は「1NTD単位」なので、1NTD未満の端数を切り捨て、自ら計算した税額に則り、同額の収入印紙を買ったらよいですが、購入できる一番大きい額面金額が200NTDとの制限があって、ビックな案件だと印紙税の納付が面倒になってしまうかもしれません。

税額が大きい場合、例えば契約金額が大きい工事契約だと、数万ないし数十万元の印紙税を一度に納付しなければならないケースについては、税務署に頼んで納税書を発行してもらったり、国税のe-Taxサービスを利用しオンラインで自ら納税書を作ったりして(納付可能な税額制限あり)、定められた期限内で支払い、それを証明するための控えを課税文書に貼り付けする、という代替方法も可能とされています。

また、事業の特性により、契約書や領収書を多く作成する法人又は個人事業主にとっては、それらの課税文書を作成するたびに、収入印紙の購入と消印を繰り返しやっているのは事務的負担が大変重いなので、その場合、営業税と同じく2ヶ月に1回の申告納税で、印紙税の納付手続きを実施することが可能です。ただし、こちらまとめて納税する措置は、事前に国税への申請が必要となる点を留意しておきましょう。

課税されない文書

税率こそ異なるが、領収書と契約書を使用したら、印紙税の納付義務が発生する、と認識されがちかもしれません。実は、領収書又は契約書の性質を持つにもかかわらず、課税対象外にされる文書もあります。

多少なりとも税金の節約にはなりますので、ビジネスのやり取りとは比較的関係が深い事例を以下共有します。

  • 会社のグループ内(本支店間を含む)で使用する領収書
  • 借金の催促や商品などの数量を突合するための領収書
  • 既に印紙が貼られた文書の副本又は抄本
  • 社員への給料支払いに関する領収書
  • 外航船舶の建造又は保守サービスの提供に関する契約書
  • 飲食店など小規模事業者が作成する領収書
  • 抽選に参加可能な統一発票
  • タクシー運転手が作成する領収書
  • 付属事業で得た収入について銀行、保険、信託法人が作成する領収書
  • 株券などの有価証券
  • 賃貸借契約書

台湾印紙税に関するペナルティ

諸々税金のなかで、印紙税は比較的マイナーな位置づけにあって、期限後申告又は過少申告はもちろん、どういった状況において納付義務が発生するかさえも分からないことが多いようです。

個人所得税の最高税率である40%と法人税の20%と比べたら、印紙税の税率は高くても千分の1か4の世界なので、申告漏れがばれても、ペナルティなんかたかが知れてるじゃん、と思われがちですが、税率が低いだけに、過料の倍率が高く設定されているのが印紙税の特徴です。印紙税法に違反した事例とそれにかかる過料を以下チェックしてみましょう。

違反例その1:適用する税率は要チェック

A社は商品代金90万NTDと取付料10万NTDを含めた機械装置の販売契約を作成し、動産売買契約書に適用される12NTDの税金を納付したが、同じ課税文書に2種類以上の性質(動産売買と請負)を有すれば、税率が高いほう(契約金額×1‰)をもって、契約代金に乗じて納付すべき印紙税を計算しなければならない、と国税から指摘を受けました(印紙税法第13条)。

そのため、A社は差額分を追加納付必要のほか、差額分の5~15倍の過料を支払わなければならなくなりました(印紙税法第23条)。

違反例その2:消印を忘れずに

B社は請負契約書を作成し、正しい税率をもって納付すべき税金を算出の上、郵便局で購入した収入印紙を貼りましたが、国税が実施する印紙税調査で、当該契約書に貼られた収入印紙は消印されないことが発見され(印紙税法第10条)、収入印紙の5~10倍の過料を払うよう命じられました(印紙税法第24条)。

違反例その3:二度漬けでも印紙税は2回

C社は2021年初に1年有効の技術支援契約書を作成し、収入印紙も貼りました。2022年初になって、C社は別途技術支援契約書を作成せず、2021年で交わしたものに記載された「自動更新条項」をもって、継続的に契約先に1年間の技術支援サービスを提供していました。

国税が2023年初で行った調査で、既に収入印紙が貼られた契約書をそのまま使用されたわけだが、さらに1年間更新されたのにもかかわらず、その分だけ収入印紙を追加で貼られていなかったことで(印紙税法第15条)、C社に漏れた印紙税の5~15倍の過料処分を下しました(印紙税法第23条)。

違反例その4:印紙税のストーカー属性は留意必要

D社はペットハウスの修繕工事を請け負い、収入印紙を貼った契約書で依頼先と契約しました。契約期間中、どこの馬の骨とも知らない野良犬に工事現場を荒らされた理由で、D社は当該契約書に追加工事料を入れて、愛犬家の依頼先もそれに了承しました。

その後、追加料金の印紙税を納付していなかったこと(印紙税法第16条)を国税に知られ、D社は納付不足した分の5~15倍の過料を食らいました(印紙税法第23条)。

違反例その5:無断は禁物

E社はペットフレンドリーレストランの建築工事を受注し、納付すべき印紙税を計算して、そのとおり契約書に収入印紙を貼り消印しました。

半年後、50NTD多く収入印紙を貼ったことに気付いたE社は、50NTD分の収入印紙を剥がして、別の契約書に再使用しましたが、無断で収入印紙を剥がす代わりに、過剰に納付した印紙税の還付申請を行うべきだ印紙税法第11条)、と国税から指導が入って、再使用された分の20~30倍の過料を支払わされる羽目となりました(印紙税法第24条)。

その他気になる印紙税にまつわるよくある質問

うちが使用する工事契約書に決まった契約代金がなく、時間単価のみ設定し、工事が終了したら、実質かかった時間数をもってお客さんに請求する形をとります。その場合、印紙税は契約書の締結時ではなく、工事が終了し契約代金が分かる時点で納付すればよいのでしょうか?

このようなケースでは、契約締結時に一旦見込み額で印紙税を納付し、契約代金が決まったら、過不足分について印紙税を追加納付するか、還付申請を行う必要があります。

マンションを借りるための賃貸借契約書は印紙税がかからない、というのは本当ですか?

不動産の賃貸借契約書は原則として印紙税の課税対象外なんですが、〇〇NTDの賃料を受領したと、当該契約書に書いたら、そのような賃貸借契約書には領収書の機能も兼ね備えるので、領収書と同じ税率で印紙税を納付必要です。

飲食店やスナックなどは印紙税を納付不要ですか?

会社統一番号の記載欄がある領収書を作成できる小規模事業者は、統一発票の発行を義務付けられる会社と同じ営業税の課税事業者に該当し、原則として印紙税を納付不要になります。その他営業税課税事業者ではない組織が作成する領収書は、印紙税に定めた課税文書に該当します。

売買契約書や請負契約書などについて印紙税は納付必要ですが、見積書や注文書でしたら課税対象外でしょう?

ルール上課税されない文書をもって、課税文書の代わりに使用する場合は、当該課税文書の税率で納付すべき印紙税を算出し納付必要です。従って、見積書や注文書が契約書の代わりに使用された時点で、課税文書とみなされます。

印紙税納付済みの契約書は途中解約されたら、納付した税金は返してもらえますか?

課税文書を作成しある取引に使用したら、印紙税の納付義務が発生してきます。途中で解約されたり、理由あって無効になったりしても、免税の要件が充足されるわけではないので、還付申請ができない形となります。

代金をもらったことを証明する領収書は課税文書になりますが、例外ないのでしょうか?

取引先から現金又は銀行振込送金で代金を受領した意味合いで作成した領収書は、印紙税が課税されますが、手形を受領するケースで、取引先に渡す領収書に手形の名称及び番号を記載すれば、例外として印紙税が免税になります。

今週の学び

印紙税を納付必要かについて、まず課税文書であるかどうかを判断し、それによって税率が分かり、税金が計算できるようになります。ただし、ビジネス実態の複雑化につれて、課税文書を認定するハードルが高くなる一方であり、「営業税との二重課税問題」という疑問も一度ならず浮上しています。こういった理由で、台湾の印紙税法を廃止するか問題は、過去において何回か議論されており、コロナショックの前に、内閣と各省庁を併せたものに相当する行政院の承認まで得られた、という廃止一方手前のところまで行ったものの、印紙税収入がなくなる地方の財源をどう補うか問題につい解決法が見つからず、失敗に終わりました。

2022年12月ごろ、印紙税廃止できるか問題についての議論があって、地方財源をどう補充するかという壁が存在する以上、以前より大きな進歩を達成できるとは考えられませんので、印紙税についての基礎知識を押さえておくほうがよろしいかと思います。

台湾の印紙税を節税する方法を以下チェックしていただいて、印紙税法が廃止になるまで、できる限り税活に励みましょう。

マサレポ、今週の学び

  • 取引先から手形で代金を受け取る場合は、領収書に当該手形の名称と番号を記載したら、印紙税が免税になります。
  • 商品の販売とその商品に関するサービスの提供を別々の契約書にすれば、比較的高い税率が適用される一部の契約書にまとめるケースと比べたら、別々の税率が適用されることで、節税になります。
  • 原則として契約代金が全額課税されますが、契約代金が5%の営業税込みの場合、契約書に「税込み」と書いたら、契約代金から営業税を除いた額で印紙税を計算できるとされています。
  • 請負契約は契約期間中、請負人が第三者に変更した場合は、発注者が当該第三者と新たに請負契約を締結したら、印紙税をもう1回納付必要だが、最初の請負契約を当該第三者を含めた三社契約にしたり、「請負人変更あり」との文言を最初の請負契約に追記したりすれば、再契約に納付必要な印紙税を節約可能です。
  • 印紙税の課税対象は「台湾国内で作成された課税文書」とされているから、取引先と海外で契約すれば、原則として台湾の印紙税を納付不要になります。ただし、海外の印紙税を納付必要かは別途要チェックです。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年1月16日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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