エンタメを楽しめば納税義務が発生するわけ?!古くからあった娯楽税の正体に迫る!
国民健康保険基金の負担になってはいけないから、健康促進するためにゴルフをやろうとしたら、5%の娯楽税(※高雄市の場合、以下同。)を払わされました。
社員の福利厚生を充実しようとスラダンの映画観賞会を行ったら、今度は1.5%の娯楽税が取られました。
社内ののど自慢大会に向けて軽くカラオケを練習するつもりなのに、営業税とは別に、娯楽税として5%を持っていかれました。
健康目的のゴルフ、社員の満足度向上としての映画鑑賞、社内コンテストに頑張ろうとするカラオケ練習、娯楽の意図がないにも関わらず、娯楽税の納付義務が発生します。
日常消費においては、その他にも上記と同じく、サービスの対価を支払う感覚しかしない消費だが、実際支払われた対価の中に娯楽税が入ったりする事例はまだまだあります。買い物したら大体5%の営業税がついてきて、抽選を参加可能な統一発票をもらえますので、甘んじてそれを支払いますが、何もお得しない娯楽税を支払わされるのは、どうにも納得いかない感が伴いましょう。
台湾の娯楽税法が誕生したのは1942年です。当時はきな臭い雰囲気がプンプンしており、台湾政府も金欠状態が続いていましたので、贅沢をするなら政府に支援しろ、といった方針のもと、「宴席及び娯楽税」制度が出来上がり、宴会で会食したり、ビリヤードをしたり、ボーリングをしたりするなどの消費活動があったら、諸々税金のほか、娯楽税も政府に献上しなければなりませんでした。
その後、少しずつ経済成長を遂げていた台湾においては、ビジネス関係ところか、家族の間も普通に宴席料理を楽しんだりすることになりつつあったので、時代の流れを汲む形で、台湾政府が1980年に娯楽税法を一部改正し宴席関係を外しており、2007年になって、さらにビリヤードとボーリングも課税対象から外しました。
「娯楽」であるかどうか、何をもって定義したらよいか問題などで、娯楽税法の廃止について長年の間議論のもととされてきました。ここ最近、娯楽税法の存続に関する話題が再度持ちあげられ、地方の財源問題でただちに廃止される可能性は低いだが、少なくとも課税される項目を見直してくれるのでは、との観測が浮上しています。
今回のマサレポは、「全然知らないけど、ずっと払わされているか!?」という娯楽税の正体を暴いていこうと思います。どうかついてきてください!
目次
入場券に娯楽税がつく「エンタメ」
手始めに、数多の娯楽のうち、台湾政府の指定を受けて、「税金のなる木」に該当するエンタメにどういったものあるかを確認してみましょう。
- 映画
- コンサート
- 舞踊
- トークショー、サーカスショー、マジックショーその他パフォーマンスショー
- 芝居や演奏会
- 球技や水泳、武術、射撃、カーレース、競馬等各種競技
- ダンスホール
- ゴルフ
- アーケードゲーム
- カラオケ
- サバイバルゲーム
- クレーンゲーム
- VR・ARゲーム
- 遊園地
以上のレジャーをしたら、原則としてその娯楽施設に娯楽税込みの入場料を払う必要がありますが、一部入場料が無料で、ドリンクを購入すれば、ただで店内施設が使いたい放題になる、的なビジネスモデルが取られる場合は、ドリンクの売上に応じて娯楽税が課税される形になります。
娯楽税を納める方法
娯楽税を納付する義務があるのは、対象となる娯楽を楽しんだ本人であり(娯楽税法第3条)、この点は、事業者に納付義務がある法人税と営業税と異なる特徴です。かといって、一個人に、娯楽施設に行くたびに納税書を作成させたり、申告手続きを行わせたりするのは、あまり現実味のある話ではないので、政府の代わりに娯楽税を徴収し、申告納税を行え、と店側に手続きの実施義務を定めたわけです。
店が個人消費者から徴収した娯楽税は、翌月の10日までに申告納税必要とされており(娯楽税法第9条)、外出せずともe-Taxでオンライン納付ができます。
また、1回限りの有料コンサートを行おうとする場合には、事前に入場チケットを開催地の税務署に提出のうえ、娯楽税の徴収に関する手続きを行わなければならず(娯楽税法第8条)、コンサート終了後5日以内に(一部の県市は10日、台北市は20日以内)、売り残ったチケットを同税務署へ提出し、コンサート終了の報告を行うことも義務付けられています。
免税や減税対象になる娯楽の種目
娯楽税の課税対象を確認したら、比較的人気のあるレクリエーションは大体税金がつくことが分かりました。では、娯楽税がかからない形で、こういった娯楽ができる方法などないと言えば、法律的には一応免税と減税の要件が定められています。
- 公益社団法人又は財団法人その他慈善団体が開催する各種娯楽イベントで、かつそれによって得た収入は全て本事業に充てられた場合
- 災難救助又は国軍慰労のための各種娯楽
- 社内で行う一時的なイベントで、かつ参加者から一切費用を請求しない場合
要留意なのは、以上の免税要件を満たしたからといって、何も手続きを行わずとも免税の優遇が受けられるわけではなく、イベントを開催する前にまず税務署の許可をとって、終了後においても報告義務があります。
完全に免税にはならないけど、指定を受けた文化芸術事業を行っている会社であれば、2021年で出来上がった減税措置をうまく活用すると、営業税が免除になるか、娯楽税が半分になる、といった節税効果が得られます。減税になるための手続きとして、まずこれから開催予定のイベントが行われる1ヵ月前までに、台湾の文化庁に申請書を提出し、許可が下りれば、開催日までに所轄の税務署に当該許可を出して、そしてイベント終了後に所定のエビデンス資料を税務署へ提出する、とのプロセスが要求されます。(オンライン申請はこちら。)
上記免税又は減税措置のほか、奨励措置も用意されています。政府に代わって娯楽税を代理で徴収する事業者で、所定の日時通りに税金を納めていれば、納税額からその1%に相当する金額を奨励金として控除できます。ただし、1日でも遅く納めたら、奨励金が完全にパーになってしまうので、時間厳守が大事です。
娯楽税に関する罰則
娯楽税はその他税金より存在感が薄く、そのため、故意に脱税行為を行う意図は全くないものの、娯楽税をうっかり納付忘れしたり、申告漏れしたりするケースは多々あるようです。以下、3件ほど違反事例を紹介しながら、娯楽税に関する罰則を共有させていただきます。
違反例①―事前登録制に要注意
区内で夜になったら、あちこち風呂をしながら、でかいのど自慢の声が聞こえてくることで、それを何とかしようと考えるAさんは、空き地を見つけてコイン式カラオケを置くことにし、それ以来夜の歌声がなくなりましたが、風のうわさでそれを知った国税は、営業開始の前に、娯楽税課税事業者の登録をしなかったとして(娯楽税法第7条)、Aさんに1.5万NTDの過料処分を下しました(娯楽税法第12条)。
違反例②―納付期限は要厳守
B社はお客さんから2万NTDの娯楽税を徴収し、予定として翌月の10日にそれを納付しようとしていましたが、納付手続きの担当者がB社と労務トラブルが起きて、事件が一段落した後すぐ娯楽税を納付しましたが、既に翌月の14日となりました。結果、1%の奨励金がもらえないだけでなく、別途1%の滞納金も支払わされました(娯楽税法第14条)。
違反例③―単発イベントは事前・事後ともに手続きを行うべし
C社がいろんなコネを使いつくして、ようやくガキ大将という異名を持つ名歌手、ジャイアンを説得できて、台湾で1回限定の個人コンサートを行うことにOKサインをもらいました。コンプライアンス重視のC社は、前売り券の代金にしっかり娯楽税を追加のうえ販売活動を行って、コンサート終了後も税務署に報告、納税しました。しかし、「事前に手続きを行ってくださいと娯楽法に書いてるじゃん」と言われ、C社は1,500NTDの過料を食らいました(娯楽税法第13条)。
ややこしい娯楽税の税率
娯楽税法においては、一定の税率が定められたのではなく、課税されるエンタメごとに最高税率が指定されただけです(娯楽税法第5条)。娯楽税法は一応地方税なので、この範囲を超えなければ、各地方は自由に決めてくださいね、という風な法律のもと、地方はそれぞれの実状に応じて、各種エンタメに適切な娯楽税率を決定するわけです。国税が公開した県市別の娯楽税率一覧表を以下共有します。
ぱっと見たら、北部のほうは南部より若干税率が高い傾向ですが、それぞれの県市では不定期的に期間限定の税率カットキャンペーンが行われていますので、折に触れて税活をしながら、台湾全体でエンタメ活動を展開していけたら、ちょっとした節約になるかもしれませんね。
教えて、マサひろん!
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ネットカフェの利用に娯楽税が課税されますか?
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ネットカフェが提供するサービスに何等かの娯楽性があったら、娯楽税の課税対象になります。しかし、消費者はパソコンを使って情報収集したり、データを集めたりするだけのネットカフェであれば、娯楽税は関係ありません。
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市場でよく見かけるコイン式子供用乗り物は娯楽と言えば、娯楽かもしれないけど、1回10~20NTD程度のおもちゃでも娯楽税がかかるわけですか?
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そうですね。娯楽税の課税対象になります。なので、事前に娯楽税課税事業者を登録することも義務付けられますね。ただ、売上が低い場合、税務署に査定課税制度を実施してもらうことが可能で、納税手続きが比較的簡単です。詳しくはマサヒロに相談してください。
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エビ釣り場、管理釣り場的な店も、娯楽税がかかるわけでしょうか?
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原則として、釣り場は娯楽税の課税対象外です。ただし、店内にアーケードゲーム機又はカラオケ機を置いたら、娯楽税を払わなければなりません。
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娯楽を提供する場ではなく、庶民戦士が魂をぶつかり合うサバゲフィールドは、さすがに娯楽税関係ないやろ?参加者は消費者じゃない、ウォリアーなんだから。
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残念ながら、法改正がない限り、サバゲフィールドは課税されますね。はい、次!
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遊び気分で利用する消費者が多いプリントシール機は、やはり娯楽税は免れませんか。
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はずれです。そのシールを真面目に使う人も多いから、娯楽税を課すわけにはいきません。
今週の学び
とある台湾の有名コメディアン兼インフルエンサーのT氏は、同じ公衆の前で何かしらの見解を語って、それによって収入を得るビジネス活動なのに、トークショーに娯楽税がかかり、講演は娯楽税がかからない、という法律設計に不公平を感じ、そこで、「面白い講演」とのテーマで、「講演」イベントを行いました。
その後、同氏に税務署から通知が来て、娯楽税の課税イベントをやっていたのに、先に娯楽税課税事業者の登録を行っていないことで、既に法律違反なんだ、との内容でした。
ヤムチャなT氏のことなので、このまま引き下がる可能性が比較的低いかもしれません。これからは不服申し立てや訴願、行政訴訟との順番で、娯楽税法に挑戦を挑んでいくかもしれません。それに娯楽税法の一部改正の機運と重なったら、もしかして何か変化が巻き起こされるのではと、これからの展開にとにかく目が離せません。