2024年の初陣を務める、要注意な労務・税務・居留関係に関する新規ルールをまとめて公開!
「社用車で交通違反したら反則金が3倍になる?!改正後の交通違反罰金制度にはご用心!」、「新生ジェンダー平等促進法が国会を通過!会社にとっての要注意点を一度にアップデート!」、「病気休暇を取得した社員に対して皆勤手当てを不支給とするのは違法?!5月3日に施行した改正労働者休暇申請規則は要注意!」、「給料の支払いは7日内にしろ!2月9日にデビューした新しい給与ルールの正体を暴く!」など、細かい法改正がゲリラ―的に登場した2023年は知らない間にフェードアウトし、地続き的に誕生した2024年では、また何か新しい法律が作られ、もしくは現存の法律が改正されるのか、一抹の不安が拭えない期待感を覚えたりしませんか。
まあ、2024は2024の風が吹くから、今から不安を覚えてもしょうがありません。「今を生きる」という気持ちで、とりあえず2024年の初頭から施行する、いくつか気になる新しい台湾の法律規定をチェックしましょう。今年もどうか引き続きお付き合いください!
目次
最低賃金の増加及び最低賃金法の施行
ここ数年の例に漏れず、2024年1月1日より最低賃金の額が引き上げられることになりました。月給制の場合、26,400NTDから27,470NTDに、時給制の場合、1時間当たり176NTDから183NTDに、それぞれ増額されました。月給制の増額に関して、保険当局は能動的に標準報酬月額の調整をしてくれるので、手間にはならないけど、時給制の場合、保険当局はバートタイマー労働者の月間労働時間の実態を把握できないため、バートタイマー労働者を雇用する会社は1月中に標準報酬月額の調整手続きを行う必要がある点は要留意です。
年1回の最低賃金引上げは今年に入って8年目となり、どういった人たちがどのようなプロセスを経て引き上げ幅を決定するのかについて、今までの法律ではそれらに関する定めは全く不明であり、そのせいで合理性などをよく突っ込まれていました。この問題点を是正し、最低賃金の引上げ幅の決定に関する標準作業をはっきりさせるための最低賃金法が去年末に新たに作られ、2024年1月1日に施行することとなりました。
最低賃金法においては、会社が労働者に約束した給与額が対象年度の最低賃金を下回ったとき、会社または会社の責任者に対して2万~100万NTDの過料処分が下り、社名及び責任者の氏名が公開されるほか、違反の程度がひどい場合は、過料は150万NTDまで引き上げられるという厳しい罰則規定が盛り込まれています(同法第17条)。しかし、会社が労働者に支給する給与額が最低賃金より低いときの罰則は、台湾の労働基準法にもともと定めがあって(労基法第21条、同法第79条、同法第80-1条)、最低賃金法においてそれらが再度強調されたとしても、過料がそれによって2倍になるわけでもないので、違法行為を阻止する効果はそれほど大きくないかもしれません。
食事手当の限度額が3,000NTDに
会社が毎月労働者に支給する食事手当について、2,400NTDを超えない範囲で会社では損金算入できるし、労働者の課税所得にも算入されないという、労使双方にとってWin-Winな手当として愛され続けています。この素敵な手当は、3,000NTD/月に引き上げられたと去年の12月中に公表され(営利事業所得税監査準則第88条)、そして嬉しいことに2023年1月1日に遡って適用可能だとも定められており、つまり労働者が2023年に受領する食事手当の合計額が3.6万NTDを超えなければ、丸々免税所得になるわけです。
留意が必要なのは、もし会社は食事手当を毎月労働者に支給すほか、無償で労働者に給食も提供するのであれば、3,000NTD/月以内で免税になる対象は、「給食にかかる費用+食事手当」になる点です。例えば、労働者に支給する食事手当が2,900NTD、無償で労働者に提供する給食にかかる費用が一人当たり200NTD、合計3,100NTDの場合は、超過した100NTDは労働者の給与所得としてカウントされる形になります。
実務的には、食事手当は労働賃金ではなく、課税所得でもないから、標準報酬月額から外して社会保険の手続きを行って、社会保険料を節約したりする中小企業が少なくないようです。当局が行う調査は、確かに課税所得の数字をもとに標準報酬月額が適正であるかどうかを確認する仕組みが取られており、会社が労働者への給料から食事手当を抜いた額で標準報酬月額を決めても、それが当局にばれる可能性が大きくありません。ただし、政府の目をごまかせても、労働者の目をごまかすことは難しいのです。何故なら、毎月支給される食事手当には「労働対価性」を有するほか、「経常的給付」にも該当し、標準報酬月額に算入されしかるべきであるにもかかわらず、会社は保険料の節約目的で適正な手続きを行わずして、労働者が保険給付または年金の給付を申請したりするときに当該事実が明るみに出たら、労使トラブルに発展し、訴訟沙汰になる可能性が大きいからです。一文惜しみの百知らずとはこういうことでしょう。
外国人居留法の一部改正
同じく去年の暮に改正されたのは、「外国人停留居留及び永久居留弁法(以下「外国人居留法」という)」です。主な改正点は以下です。
人道的な理由による滞在延長申請の規制緩和①
親族が台湾で重大な傷病を負い入院して介護が必要、もしくは親族が台湾で死亡し現地で手続きを行う必要があった場合、許可された台湾滞在可能な期間が終了する前15日以内に、事実のあった日から2ヶ月を超えない滞在期間の延長を移民局に申請可能だが、台湾に戸籍を置く親族のみ対象になっていました。台湾で親族の介護を行い、もしくは死亡手続きを行うのに、「戸籍要件が要求されるのがおかしいのでは」という点に気付いた政府は、今回の法改正で戸籍要件を無くし、台湾の戸籍がない親族であっても適用可能にしました(外国人居留法第3条)。
人道的な理由による滞在延長申請の規制緩和②
居留証の有効期間がなくなったり、在留資格が失効して居留証が廃止されたりしたが、人道的な理由があって台湾から出国することが難しいと移民局に相談しても、どうにもならないと言われておしまいです。一方、改正外国人居留法が施行した2024年からは、たとえ居留証が失効したとしても、以下いずれかの事情を有する場合、さらに最大2ヶ月間の滞在延期を申請することが可能となりました(外国人居留法第14条)。
- 妊娠して7カ月以上、もしくは出産・流産して2ヶ月未満
- 病気または妊娠により、航空機又は船舶で台湾から出国したら命の危険が生じた場合
- 親族が台湾で重大な傷病を負い入院して介護が必要、もしくは親族が台湾で死亡し現地で手続きを行う必要があった場合
- 天災その他不可抗力があった場合
- 法によって自由が制限された場合
中国生まれの外国人に対する証明書の提出を義務付け
中国人が台湾に居留するためには、その他外国人とは違う手続きを行って、比較的ややこしい審査手続きが必要となるため、投資その他方法で外国のパスポートを予め取得し、当該外国の国籍で台湾の居住権をゲットするケースが散見されます。前述のやり方で台湾の居留証を申請するハードルを高めようと、中国に生まれた外国パスポートの所持者に対して、中国に戸籍を置いたり、中国のパスポートを保有したりしていない証明書の提出を義務付けました(外国人居留法第5条)。
家族滞在居留証廃止要件の追加
家族滞在という在留資格で居留証を取得したとき、配偶者が外国人の場合、居留証の有効期間は配偶者と一緒であり、配偶者が台湾人の場合は、一度に最長3年間有効の居留証を取得可能、という従来ルール(外国人居留法第10条)に加え、配偶者が台湾から出国して2年経過しても帰国せず、移民局から通知を受けて2ヶ月以内になお帰国しようとしなかった場合には、移民局は家族滞在で取得した居留証を廃止することができるルールが新たに追加されました(外国人居留法第17条)。台湾以外の第三国への長期出張を行う予定のある方は、この2年ルールを留意しておきましょう。
居留証更新可能期間が3倍に拡大
台湾の在留資格にまだ有効期間があるけど、居留証の有効期間はあと少しで切れる場合、移民局で更新を行う必要があります。今までは居留証の期間満了日30日以内でしか更新申請を受理してもらえず、その間もし勤め先から第三国への海外出張を指示されたり、急用があって日本へ一時帰国しなければならないのであれば、時間調整などの手間がかかります。今回の法改正で、更新申請の可能期間が「居留証の期間満了日前3ヶ月」に拡大されており、対象期間が3倍に増えた分、出国予定を組むこともだいぶしやすくなりましょう(外国人居留法第9条)。
今週の学び
免税所得の対象になる金額が増えて、居留証の更新を申請可能な期間が3ヶ月に拡大されたなど、2024年のトップバッターは総じてプラスになる選手が比較的目立つイメージです。これからの1年は、こういった民衆の利便性を図るための法改正、もしくはお得になる税制改正が続々とリリースしてくれたらいいなと、ポジティブに待ってあげましょう。