秘密録音って本当に大丈夫だろうか?法律に触れるかの要チェックポイント!

ふれ太

マサひろん~~明日、空き地でケジメをつけろってジャイアンに言われた、なんとかしてえ~

マサひろん

なんだ、いつものパターンか。これ、もってけ。
ツ・ツ・ヌ・ケ・ボ・イ・ス・レ・コー・ダー~
ジャイアンが話し出したら、これの電源を入れてね。そうすると、ジャイアンの脅し文句は全部ジャイママに筒抜けだよ。

ふれ太

ありがとう、マサひろん~

私たちはふれ太のように、少しでも困ると感じたら、すぐマサひろんに縋り付いて、ツツヌケボイスレコーダー的なひつみ道具を強請ったりすることは難しいです。しかし、筒抜けという素敵な機能が付かないとは言え、手ごろな値段で、好きなデジタルボイスレコーダーをすぐ調達できるし、スマホの録音アプリを使ったら、簡単に会話を録音することも可能な現代社会においては、ジャイアンからどんな話しをされても、ワンタッチで一部始終を記録できます。

そうすると、問題は道具ではなく、法律が秘密録音を許すかどうかこそがポイントです。

「秘密録音(無断録音)」という行為は、台湾において違法になるだろうか、違法行為に該当するならどんなペナルティが用意されているか、違法にならない秘密録音というのはあり得るなのか、といった秘密録音に関するよくあるご質問を、マサひろんより徹底解説させていただきたいと思います。

秘密録音は有罪?!刑法の場合

秘密録音の行為があったと認められたら、何か法的責任を追及されるかについて、まず台湾の刑法の定めを検証してみましょう。

理由なく録音、撮影、録画又は電磁記録で、他人が非公開にする活動、言論、会話又は身体の一部を無断で取ったら、3年以下の懲役刑、拘留又は30万NTD以下の罰金に処せられるほか、犯罪者が所有するかを問わず、前述した犯罪の道具として利用された物も没収されると定められています。

中華民国刑法第315-1条中華民国刑法第315-3条

つまり、秘密録音をしたら、録音に使うボイスレコーダー又はスマホは取り上げられるうえ、秘密録音を行った人も刑務所に収監されてしまいます。

ただし、“秘密録音イコール犯罪行為“ですね、と結論付けるのは早計です。問題視される秘密録音には、「理由なく」及び「非公開」、という2つの成分が必要とされており、「正当な理由」があって、「一般人が自由に出入りできる場所」で行われる録音行為は原則として免責となります。

いわゆる「正当な理由」というのは、例えば会社と従業員の間に何かトラブルが起こって、近い将来発生しうる労働裁判に備える手段として、労使会談の場で録音したり、若しくはある取引について、売買双方で意見の不一致があって、証拠保全として当事者双方の話し合いを録音したりする場合などは、「理由のある」秘密録音として認められる傾向です。

そして、カラオケボックスやレストランの個室のような、個人が主観的にプライバシーを確保できると認知し得る、客観的に見ても比較的クローズドな空間ではなく、録音が行われた場所は、例えば室外など「一般人が自由に出入りできる場所」であれば、秘密性を有さないので、「秘密」録音ですらありません。街頭演説はまさにその典型例でありましょう。

つまり、「きちんとした理由がある」、「開かれた場所で」、といった要件に合致した秘密録音は、刑事責任を問われるリスクは低いです。かといって、録音として取られた音声データを適当にばらまいたり、個人資産として運用したりすれば、今度は著作権侵害問題で責任を追及されてしまいますので、気を付けておきましょう。

秘密録音は有罪?!通信保障と監察法の場合

秘密録音という行為を規定する法律は、刑法のほかに「通信保障及び監察法」があります。同法においては、法律に反し他人の通信を監視したら、5年以下の懲役刑に処せられる(通信保障及び監察法第24条)、という刑法より厳しい5年の懲役刑が定められているが、よりはっきりとした免責要件も用意されています。

以下要件の1つでも合致すれば、他人の通信を監視してもペナルティなしとされています。(通信保障及び監察法第29条)

  1. 法律に従って行うこと
  2. 電信事業又は郵政事業に従事する者が、公共電信サービス又は郵政サービスを提供する目的で、法律に基づき行うこと
  3. 自ら監視した会話に参加したり、会話参加者の片方から同意を得たりして、違法目的によらずして行うこと

裁判所から「秘密録音しろ!」と命じられ、その通りに行ったら、法律違反にならないことが当たり前で、関連事業者が法律で許される範囲内で、業務行為として実施する秘密録音も問題ないことは理解できます。そうすると、違法にならない秘密録音のポイントは3点目です。

秘密録音した人が、録音された会話に参加していたのであれば、録音という行為は、話し相手がこちら側に言い聞かせる内容を記録として残すためにある、という法的に合理性のある解釈ができるので、3点目の免責要件の存在理由はそこにあるのではないかと思われます。

逆のパターンで、もし秘密録音した人は録音された会話に参加していない無関係な第三者、例えば配偶者が不倫相手かもしれない人物との話し合い、若しくは取引先と競業他社との商談会議に参加していない立場であるにもかかわらず、それをこっそり録音したら、(通信保障及び監察法第24条)に違反するとして、最悪5年の懲役刑を処せられる可能性が生じてきます。

一方、前述した免責要件の後半にある「違法目的によらずして...」については、他社の商談を無断で録音することは、どうひっくり返しても合法的な動機があるとは考えにくいので、法的にNGな秘密録音とされますが、家庭崩壊を食い止めようと、配偶者の外出先に盗聴器を仕掛けたり、他人の犯罪行為を暴こうと、事件が起きそうな場所で秘密録音を行ったりするケースは、違法目的によるものではないので、問題ないかと思いきや、裁判実務においては、NGだと判断される前例も少なくないようです。

ですから、目的云々の前に、秘密録音は会話の参加者が行っていたのかどうかを先に判断し、「胸を張って言える目的」があるかを次に検討する、との順番で違法性の有無をチェックすることが比較的セーフかと思います。

ちなみに、違法性のない目的は、例えば先に述べた、起きうる労使トラブルに備えようと、労使会議を無断で録音するケースと、取締役会で物議をかもしやすい議案を検討する予定だから、保身のために秘密録音するケースなどです。こちらはいずれも、法的に妥当性のある目的とされる可能性が高い事例です。

秘密録音の音声データは証拠として利用できるのか?

台湾の刑事訴訟法では、2003年においてアメリカ発祥の「違法収集証拠排除法則」という概念が導入され、信憑性があり、証拠能力を有するものを、それを取得した方法が法に抵触したら不採用とする、という風なルールが作られました(刑事訴訟法第158-4条)。それによって、秘密録音で入手した音声データは裁判の現場で果たして証拠物として利用可能かとの問題が出てきます。

裁判所の見解では、録音を取った人は自身の無実を証明するとともに、話し相手の犯罪事実を立証しようとする明確な目的があって、かつ自らもその会話に参加していたのであれば、他人のプライバシー侵害に該当せず、動機的にも違法性を認めないため、原則として違法収集証拠排除法則は適用されないが、もし話し相手の発言は録音を取った人から脅迫を受けたり、騙されたりすることによるものであれば、当該発言を証拠から排除しなければならない、という風な認識を述べられました。つまり、前述した「会話の参加」と「妥当な動機」に加え、「発言の任意性」という要素も、証拠能力を判断するうえで必要不可欠であることが分かります。(最高裁103年台上字第1352号判決等)

他方の民事裁判において、刑事訴訟にある「違法収集証拠排除法則」のコンセプトがないため、秘密録音で取得した音声データの取り扱いについては、はっきりとした判断基準が存在していないようですが、金銭の請求や身分関係の認定に関する事案は、秘密録音で得た証拠は原則として認められない傾向です。

理由としては、刑事訴訟と比べたら、金銭請求や身分訴訟に関する民事訴訟は程度的にそれほどシビアなものではなく、責任が比較的重たい犯罪行為が絡まないケースがほとんどなので、他人のプライバシー権を侵害する可能性が高い秘密録音をわざわざ取って、勝訴を勝ち取る一心で、それを赤裸々に裁判の現場で使うとの行為は、いささか度が過ぎたのではと裁判官が考え、秘密録音による証拠を採択しない姿勢を見せています。一番典型的な例は、配偶者の不倫に対する慰謝料請求の裁判において、配偶者とその不倫相手が明らかに家庭崩壊につながる行為を働いた現場を押さえた音声データを裁判所に提出しても、「プライバシーの重大侵害」が認められたとして採択できない、との司法見解です。

ただ、同じく重大な犯罪行為に該当しない、名誉毀損による損害賠償請求の事案に関しては、「公然の場」での秘密録音は当事者へのプライバシー侵害はそれほど顕著なものではなく、大体一瞬でなくなる他人を非難する言葉を証拠として残すためには、一定期間における秘密録音もやむなしなので、当該音声データに証拠能力を認めた裁判例も存在しています。ですから、民事裁判に関しては、秘密録音を証拠保全の手段として利用可能かはケースバイケース的に検討する必要がありましょう。

今週の学び

雰囲気的に怪しい会社との商談を実施する場合、次から次へと自社に変な要求を突きつける社員と面談を行う場合、今までの提携先と合弁解消の件について株主総会を開催する場合...などの場面において、いざという時に自社の権利を正しく主張するとともに、相手先に自らの承諾事項を確実に守ってもらおうと、秘密録音という対応方法が取られています。

そして、裁判所が作成する判決書を紐解いたら、秘密録音で得られた音声データがごく普通に証拠として取り扱われており、こういったデータのおかげで、諸々事件の現場をある程度垣間見ることもできます。その意味では、秘密録音を特に意識する必要がなく、必要に応じて行ったらよい、と考えて問題ないのではと思ったら、実際、こっそり録音することに不安を覚え、違法行為であるかどうか、見当がなかなかつかない方が少なくないようです。

台湾の法律に照らし合わせたら、秘密録音は法的に問題があるように見えますが、いくつかの条件を満たしたらセーフになることを、前述した考察内容でわかりました。ただし、NGかOKかというのは、あくまでも秘密録音した人に刑事責任が及ぶかどうかを判断する問題で、秘密録音の音声データを裁判の現場で証拠物として利用することとなると、別の判断基準が導入されることも留意が必要です。

秘密録音に関する重要な点を以下まとめさせていただきますので、ご参考いただけたら幸いです。

マサレポ、今週の学び

  • 社会通念上妥当な目的があって、かつ自分も会話に参加していたら、秘密録音しても原則として犯罪行為にはなりません。
  • 公開演説等を録音すること自体は犯罪行為には該当しませんが、それによって得られた音声データの使い道が著作権侵害になるかは要留意。
  • 刑事裁判において、秘密録音で取れた音声データが証拠として利用可能かは、「取得目的」、「会話参加の有無」、「発言の任意性」といった要素によって判断されますが、民事裁判においては、金銭の請求に関する案件は、秘密録音で取得した証拠は採択されない傾向です。

合わせてご参考ください

ATTENTION!

※本マサレポは2022年12月2日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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