「家具や家電が壊れたら、大家が修理すべきか?」―台湾賃貸物件における不具合の修繕義務について

「家具や家電が壊れたら、大家が修理すべきか?」―台湾賃貸物件における不具合の修繕義務について

個人が台湾で事業展開するにあたり、会社の登記住所兼住む場所に適する物件を探して借りる必要があります。本社から指示を受け台湾に駐在するサラリーパーソンは、自ら不動産を物色する代わりに、現地法人が賃借する社員寮に泊まったりします。家賃を会社の経費で落とすのに、大家の税金と保険料を負担しなければならないという理解に苦しむ問題を棚に上げるとすれば、入居者と大家が結構トラブったりするのは、「家具や設備などの修繕はどちらが行うべきか問題」です。

例えば台風の日に、借りた一軒家に窓ガラスが割れたり、天井が雨漏りしたりした場合、入居者は自力で直すべきなのか、それとも大家が責任をもってそれらを何とかしなければならないのでしょうか。台風という不可抗力の要因が絡むだけに、なおさら判断に迷うかもしれません。

いざというときに備え、「台湾賃貸物件における不具合の修繕義務について」は、台湾の法律はどのように定めたのかをチェックしましょう!

単刀直入に言うと、台湾の賃貸物件に備え付けてある設備や家具などが故障したとき、原則としてその修理費用を負担する義務があるのは大家です

台湾の民法では、賃貸人は契約に基づき、使用可能な状態にある賃貸物件及びその付属設備を賃借人に提供しなければならず、契約関係が存続する限り、賃貸人は当該使用可能な状態をキープする義務があるとされます(民法第423条)。なお、書面により別途合意された場合を除き、賃貸物件及びその付属設備を修繕する義務は賃貸人にあるとも定めされています(民法第429条)。

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従って、賃借で借りた家で、壁に白華が発生したり、天井に雨漏りの痕跡が出ていたり、室内に害虫が現れたりした場合は、すかさず大家に連絡し対応を求めましょう。

修繕義務を負うのはDOCHI?

不動産賃貸借契約の契約期間中に、大家は賃貸物件及びその付属設備を使用可能な状態にし続ける義務があるため、不具合が生じたらそれを対応しなければなりません。ただし、「〇〇家電が壊れたら入居者は自ら費用を負担して修理すること」というように、特定品目についての修繕義務は入居者にあることを予め契約書にはっきりと記載し、かつ大家と入居者がそれにサインすれば、当該特定品目に対する修繕義務は法律上入居者に移転される形となります。

上記とは別に、入居者が修繕義務を負うべきだと法律に定められるケースは、ほかにもいくつかあります。

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例えば、窓を全開にエアコンを三日三晩つけっぱなしにして、エアコンのモーターがそれによって故障したりする場合、家電が壊れたのは、入居者は通常では考えられないやり方でそれを酷使したせいなので、入居者は善管注意義務をもって賃貸物を保管していないとして、大家に対して損害賠償の責任を負うとされます(民法第432条)。

なお、賃借人の同居者または転借人の責めに帰すべき事由により、賃貸物件に設置してある家電や家具に不具合が生じた場合、例えば賃借人の同居者が中古屋で購入したファミコンのカセットを、最初から賃貸物件に置いてあったプレーステーション5に無理やり入れようとして、結局プレーステーション5をフリーズさせてしまったら、賃借人の同居者はそれを弁償しなければなりません(民法第433条

そして、入居者が布団やベッドの上でたばこを吸うことで火災を引き起こしたり、入居者が延長コードを継ぎ足して最大容量を超えたことに気が付かず、結局発火事故が起きたりするなど、入居者に重大な過失があったと認められれば、大家は入居者に対して損害賠償責任を追及できるともされます(民法第434条)。

以上の事例は、いずれも入居者または入居者の関係者にはっきりとした過失があって、大家の代わりに故障する賃貸物を修繕する義務が発生したケースです。しかしながら、もともと大家が修理代を出すべきだが、入居者の不注意で、修繕義務が入居者に移転される場合もあります。

例えば、連日の豪雨の影響で、雨水がサッシ枠をこえて屋内に少しずつ入っているが、雨が止まったらおのずと引くだろう、と入居者が高をくくているにもかかわらず、数日後屋内への浸水がひどくなり、水に浸っている家電が次から次へと壊れていた事例に関しては、豪雨は天災、いわば不可抗力の類なので、入居者が家屋内浸水に気付いたタイミングにただちに大家に連絡すれば、大家はそれを対応しなければならないのに対して、入居者が家屋内浸水を無視して家電を故障させた場合には、大家は入居者が報告義務を怠ったことでタイムリーに応急処置を行えず、それによって損害が拡大したわけだから、入居者はそれに関する損害賠償責任を負うとされます(民法第437条)。

入居者が修繕義務を負う場合

物件の付属設備での不具合を対応する責任は大家にあるものの、入居者が大家に修理の依頼を何度しても、大家は一向に応じようとしないトラブルはたまにあります。その場合、大家が修繕してくれるまで家賃を支払わない、という対抗手段に出る入居者がいます。確かに、修繕義務を怠る大家にはそれなりの責任はあるが、それが「家賃を支払わない」という行為を正当化する法的根拠にはならないので、互いがLose-Loseようなシチュエーションに持ち込むより、以下の合法的な対応手段を取ることがおすすめです。

入居者が代わりに修繕すること

入居者が物件の付属設備に不具合を発見し、一度ならず大家に連絡していたが、大家が遅々として返事しないか、比較的消極な態度を示すのであれば、入居者がそのまま待ち続ける代わりに、自ら当該不具合を改善して、かかった費用を大家に請求するか、家賃から費用に相当する額を差し引くことができます

留意が必要なのは、入居者がアクションを取る前に、予め合理性のある期間を定め、それまでに対応するよう大家に催告する、という決まったプロセスを実施しておかないと、修繕費を大家に請求したり、家賃から差し引いたりすることができなくなる点です(民法第430条)。

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なお、大家にポケットから修繕費を出してもらうことは比較的にハードルが高いので、実務上、入居者が来月に支払う予定の家賃から修繕費を控除するやり方が取られる傾向です。

家賃の減額を請求すること

入居者が一度もプレイしていない、賃貸借契約書に書いてあるスーパーファミコンという付属設備が起動不能となり、大家に修理を頼んでいたが、それを直せる部品がないからどうしようもない、との回答が返ったのみの場合、もし入居者もそれを修理する術を持ち合わせていなければ、大家に対して家賃の減額を請求できるとされます民法第435条)。「物件+プレイできるスーパーファミコンの対価」=契約書に定めた家賃なので、「プレイできるスーパーファミコン」が存在しないなら、契約書に定めた家賃を全額支払うことに妥当性が欠く、というわけです。

契約を解約すること

賃貸物件の壁にコケやカビが生えたり、備え付け設備としての煙探知機が全く作動しなかったりするなどで、入居者の健康または安全に重大な影響が及ぶ心配があった場合、たとえ入居者は契約時に既にそれらの問題点が分かったであっても、賃貸借契約を解約することができるとされます(民法第424条)。ただし、「健康または安全に重大な影響が及ぶ」ことをどうやって認定するのか実務的によく揉めるため、解約を主張するにはちょっとしたハードルがあります。

大家が修理してくれないときの対応法

賃貸物件の付属設備に何か問題が発生した場合、当該問題が入居者に起因するものかをまず探る必要があり、入居者に責任がなく大家が対応すべきだと分かっても、大家が遅々として対応しようとしなかったら、次は大家の代わりに入居者が自ら修理するか、家賃を少し減らすよう交渉するか、もしくはストレート的に解約するかを検討しなければなりません。このようなややこしい問題をソロで対応しようと試みる代わりに、マサヒロを仲間につけて、円満解決の道をともに探っていくことをご検討いただけます。

マサレポ、今週の学び

  • 入居者が責任をもってやりましょう、と契約書に明確に書いたり、入居者が通常ではありえないやり方で酷使したりする場合を除き、付属設備の修繕義務は大家が負担します。
  • 入居者が付属設備に問題があったと知っても大家に報告せず、もし当該問題がその後大家に何かしら損失をもたらしたら、入居者が当該損失を弁償しなければなりません。
  • 大家に修繕義務があっても修繕しようとしなかった場合には、状況次第で、入居者は修理代を立替する形で自ら修繕したり、家賃の減額を請求したり、契約を解約したりすることができるとされます。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年12月27日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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