缶ビール1本ならOK?自転車ならセーフ?気になる台湾での飲酒運転に関する法律を解説!

缶ビール1本ならOK?自転車ならセーフ?気になる台湾での飲酒運転に関する法律を解説!

飲酒運転はご法度です。

金銭面においては、数カ月間毎日タクシーで通勤してもお釣りが出るほど、飲酒運転の罰金はめちゃくちゃ高いので、飲みニケーションの後、タクシーや地下鉄を利用したほうが断トツお得です。

お金よりも大事なのは他人の安全です。タクシー代ぐらいケチって、ドロンとした状態で運転して、結局人にひどい怪我を負わせたら、一生をかけてもその責任が償えません

とはいうものの、巷では、「一定の量を超えなければ処罰されないから、ちょい飲みの運転はOK!」や「車はダメだけど、自転車なら飲んでもノープロブレムだよ!」的な話しが流れており、飲酒運転になるかならないかに関する自己流的な見解があちこちから聞こえていくのが現状です。

ご法度な飲酒運転にならないよう、こういった自己流的な見解をなんとなく信じるより、法的根拠をしっかり理解した上で、やってはいけない、やってもよいとの判断を自ら正しく行うことが望ましいので、台湾における飲酒運転について知っておくべき法律を紹介していきたいと思います。シートベルトをしっかりと締めてついてきてください!

「缶ビール一杯ならギリギリセーフ」、「缶ビール半分だけなら車OK」などのようなお話はよく耳にしています。こんな説はどこから来たのかは不明だが、「一定以上のお酒を飲むと処罰の対象になる」というのは確かに法的根拠があります。

自動車・二輪車の運転者が運転中に、アルコール濃度が基準値を超えた場合:

  • 二輪車運転者はNT$1万5,000元以上9万元以下、自動車運転者はNT$3万元以上12万元以下の過料に処するほか、当該車両をその場で移動・保管し、運転免許証を1~2年間停止。
  • 12歳未満の子どもを同乗させ、または事故を起こして負傷者を出した場合、運転免許証を2~4年間停止。
  • 重傷や死亡事故を引き起こした場合、運転免許証を取り消し、再取得を禁止。

上記の「基準値」については以下の法律にて定められています。

自動車運転者は以下のいずれかに該当する場合、運転を禁止する。

  • 連続運転が8時間を超える場合。
  • 飲酒または類似の物質を摂取し、呼気中のアルコール濃度が1リットルあたり0.15ミリグラム、または血中アルコール濃度が0.03%以上に達した場合。(以下略)

以上は行政責任における基準値に関する法律です。飲酒運転者の刑事責任を定める法律において基準値に関する設定もあります。

動力交通手段を運転し、以下のいずれかに該当する者は、3年以下の有期懲役に処し、併せてNT$30万元以下の罰金を科すことができる。

呼気中のアルコール濃度が1リットルあたり0.25ミリグラム、または血中アルコール濃度が0.05%以上に達した場合。(以下略)

まとめますと、アルコール検知器に息を吹きかけて、0.15ミリグラムに達したら過料処分で、0.25ミリグラムに達したら、罰金刑のほか、刑務所に収監される可能性があるとされます。なので、「一定の量を超えなければ、飲酒運転はOK」というお話は間違っていない、と考えられなくもないが、刑法第185-3条においては、「酒類または類似の物質を摂取し、安全に運転できないと認められた場合」というのも処罰の対象にされるため、違法しているかどうかを判断するのに「基準値ルール」だけじゃ物足りないことが分かります。この辺の設定は、日本の法律における「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の区別と類似していますね。

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一定の量を超えなければ、飲酒運転はOK?

関連法律において基準値が定められていることが分かりました。しかし、違法になる基準値を知っていても、「缶ビール1本ならOKだ」という巷の説を検証できるには至りませんでした。そこで、台湾の交通部が公開した興味深い表を見てみましょう。

体重と呼気中アルコール濃度0.25(mg/L)に達する飲酒量換算表

「一定の量」に関してこんな表も作られている。

この表によると、50キロの人は約3本(1本350mlとした場合)、80キロの人は約4本の缶ビールを飲んだらアウトになります。留意が必要なのは、この表は行政責任が発生する「0.15ミリグラム」ではなく、刑事責任が問われる「0.25ミリグラム」を基準として作られた表です。この表から単純な割り算で「0.15ミリグラム」バージョンが作られるかどうかを考える以前に、ジンジャーダック鍋または酒蒸し鶏を食べただけでアルコールチェッカーに引っかかるという、新陳代謝に個人差があることや、そもそも呼気中アルコール濃度とは関係のない「酒酔い運転」などのルールが存在するなかで、いくら精密に飲酒量をコントロールしても失敗しない保証はどこにもないので、「飲んだら乗るな」を徹底していくことはやはり一番の得策でしょう。

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「一定の量」に関してこんな表も作られている。

お酒を飲んだら車とバイクはアウト。でも自転車はあまりスピードが出ないから、処罰の対象にはならない。しかも今電動アシストのやつはどこでも借りられるし、タクシーより全然安上がりだ!

確かに、シェアサイクルの自転車を利用すれば、タクシー代を節約できて、節約したお金を次回の酒代にも回せるし、まさに好循環と言えましょう。ただ残念ながら、「自転車飲酒運転」は法律上NGとされています。

低速車両の運転者が運転中にアルコール検査で基準値を超えた場合、または薬物(違法薬物、幻覚剤、麻酔薬および類似の規制薬物)を使用していた場合、NT$1,200元以上2400元以下の過料に処し、その場で運転を禁止する。また、ミニ電動二輪車を運転していた場合は、その場で当該車両を移動・保管する。

そして、「低速車両」は以下のように定義づけられています。

低速車両の種類および名称は以下のとおり。

  1. 自転車
    1. ペダル式自転車
    2. 電動アシスト自転車:型式認証に合格し、人力を主とし電力を補助とするもので、最高速度が時速25km以下、車両重量が40kg以下の二輪車。
    3. ミニ電動二輪車:型式認証に合格し、電力を主動力とするもので、最高速度が時速25km以下、車両重量がバッテリーを含まない場合40kg以下、またはバッテリーを含む場合60kg以下の二輪車。(以下略)

なるほど。でも最大のリスクは反則金NT$1,200元だけなら、NT$20元で30分も使える電動アシストYouBikeをやはり利用したくなるね。毎回取り締まられるわけでもないし。

アマイ、実にアマイです!初犯でかつ態度も良好であれば反則金NT$1,200元で済ませるかもしれないが、気を付けなければならないのは、上記の法律はあくまでも「行政罰」を定めるものであり、刑事罰も別に用意されている点です。刑法第185-3条をおさらいしましょう。

動力交通手段を運転し、以下のいずれかに該当する者は、3年以下の有期懲役に処し、併せてNT$30万元以下の罰金を科すことができる。

呼気中のアルコール濃度が1リットルあたり0.25ミリグラム、または血中アルコール濃度が0.05%以上に達した場合。(以下略)

ここでいう「動力交通手段」について、台湾の法務部は次のように解釈しています。

刑法第185条の3における「動力交通手段」とは、交通手段の推進が電力やエンジン動力によって行われるものを指し、その動力源が蒸気機関、内燃機関、ディーゼル、ガソリン、天然ガス、核エネルギー、電動であるかは問わない。

また、「交通手段」は陸上の乗り物に限らず、水上・海上・空中・鉄道上の乗り物も含まれる。

なお、「自転車」、「電動アシスト自転車」、「電動自転車」が刑法第185条の3における「動力交通手段」に該当するかどうかは、その推進力が電力やエンジン動力によるものかどうかによって判断される。ただし、具体的な事案に関しては、担当の検察官または裁判官が職権に基づき判断するものとする。

この解釈通達によると、電動アシストYouBikeは明らかに「動力交通手段」に該当することが分かります。従って、電動YouBikeの酒気帯び運転で「0.25ミリグラム」ルールに引っかかったり、ふらふら電動YouBikeを漕いで安全運転ができないと認められたりしたら、警察局に連行されてしまいますね。

車はダメだけど、自転車なら飲んでもノープロブレム?

飲酒運転への罰則は原則として運転者に対して下されるものであり、運転者以外のものは関係ないと思われがちです。

確かに、数年前ならそのようにはなっていたが、近年の法改正でルールががらりと変わりました。

自動車・二輪車の所有者が、運転者が飲酒運転などを行っていることを知りながら運転を禁止しなかった場合、二輪車の所有者はNT$1万5,000以上9万元以下、自動車の所有者はNT$3万以上12万元以下の過料に処するほか、当該自動車・二輪車のナンバープレートを2年間使用停止し、当該車両を移動・保管する際に、ナンバープレートを没収する。

借りる人がお酒を飲んでいるのを知らずに、車またはバイクを貸した所有者は2年の間車両を使えなくなり、当該事実を知ってなお貸した場合は、運転者と同じくNT$数万元の過料を政府に納めなければならないという、飲酒運転の事実があったと認められたら、車両の所有者が貸す際にそれを知っているかどうかを問わず、連帯責任を追及される形となっています

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車両の提供者だけでなく、同乗者にも似たような連帯責任のルールが定められています。

自動車・二輪車の運転者が運転中に検査を受け、呼気中のアルコール濃度が1リットルあたり0.25ミリグラム、または血中アルコール濃度が0.05%以上に達した場合、18歳以上の同乗者にはNT$6,000以上15,000元以下の過料に処する。ただし、70歳以上の者、知的障害のある者、自動車運送業の乗客はこの限りではない。

運転者がお酒を飲んでいる場合、運転者自身は勿論、18~69歳の同乗者も高い過料処分に処せられるルールです。日本と同じく、同乗者に対しても刑事責任を追及するほどの罰則ではないため、法律作りはまだまだ甘いとも言われているが、過料額がたったNT$600元という2019年版の法律と比べたら少し進歩があったと言えましょう。

車両の提供者だけでなく、乗客も連帯責任?!

他人から同意を得ることなく、氏名と写真を同時に公表するなど、とある個人を特定できる情報を公にすることで、個人情報保護法に違反するとして刑事責任を問われる可能性があります。ただし、飲酒運転を行っている人には同法の保護は及ばないのです。

自動車・二輪車の運転者が10年以内に2回目の飲酒運転をした場合、運転する車両の種類に応じて定められた最高額の過料に処する。3回目以上の飲酒運転については、前回の過料額に加えNT$9万元の過料を追加し、さらに当該車両を現場で移動・保管し、運転免許を取り消す。また、道路管理当局は運転者の氏名、写真、および飲酒運転の事実を公表することができる。なお、事故によって他人に重傷を負わせるか死亡させた場合、運転免許を取り消し、再取得不可とする。

反省の機会を与えようと、初犯の場合、運転者の個人情報は公表されることはないが、2回目からは法定最高過料額の支払いを命じられるほか、写真と氏名などもそれぞれの地方自治体のHPにて公表されます。公表事例として、台北市のケースを共有します。

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飲酒運転者の氏名と写真が公表される?!

アルコール・インターロックという装置は、運転者がアルコールチェッカーに息を吹きかけたら、アルコール濃度がわかり、運転者がお酒を飲んでいるのであれば、エンジンがかからないようにしてくれるものです。

当該装置を使うと、運転者への心理的な抑止効果が期待できるほか、使用時に顔写真が撮影され、身元の確認ができるというなりすまし対策にもなるので、飲酒運転を防止する有効なツールとなっています

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何故アルコール・インターロックを紹介するのかというと、台湾は日本と違って、アルコール・インターロックの搭載を義務付ける法律があるからです。

台湾は2020年3月1日から、運転者が次のいずれかに該当する場合は、飲酒運転防止教育またはアルコール依存症治療を受けなければならないほか道路交通管理処罰条例第67条第5項)、一度取り上げられた免許を取り直した上、1年以内にアルコール・インターロックを取り付けた車両を運転することを義務付ける法律(アルコール・インターロックの取付及び管理弁法第3条)を施行しました。

  1. 飲酒運転の再犯者
  2. 飲酒運転によって重傷または死亡事故を引き起こした者
  3. 飲酒運転の検査を拒否した者

上記の対象者がアルコール・インターロックの使用を遵守しない罰則は以下のとおりです。

  1. アルコール・インターロックを取り付けた車両を運転しない
    NT$6万~12万の過料+車両没収
  2. アルコール・インターロックを車両に取り付けたけど使用しない
    NT$1万~3万元の過料+車両没収
  3. 他人がアルコールチェックを代行する
    当該他人への過料額はNT$6,000~12,000元


勿論、アルコール・インターロックを購入する費用は飲酒運転者が負担しなければなりません

アルコール・インターロック?なにそれ?

日本と比べたら、台湾の法律は飲酒運転者には寛容すぎるため、飲酒運転に関する事故の件数が比較的多いとよく言われています。確かに、飲酒運転者に刑事責任が問われる基準を1リットルあたり0.15ミリグラムに設定した日本より、0.1ミリグラムも高い台湾は、アルコール・インターロックの設置を義務付けることや氏名と写真を公表する法律を作ったとはいえ、罰則全体のイメージが比較的寛容であると言われてもしょうがありません。

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車通勤・バイク通勤が主流の台湾に通勤災害が起こりやすいと言われています。通勤災害にまつわる労災認定の問題を考察してまいりたいと思います。

飲酒運転の報道がほぼ毎週流れている台湾は、これからもきっと飲酒運転の根絶に向ける規制強化を推進していくと思うが、0.15か0.25などの基準に達するかどうかをいちいち気にするより、一滴でも飲んだらタクシーを頼んだほうが安全安心です!

マサレポ、今週の学び

  • 飲酒運転の罰金は非常に高額であり、タクシーを利用する方が経済的。さらに、他人を傷つけるリスクがあり、責任を一生背負う可能性がある。
  • 呼気中アルコール濃度が0.15mg/Lを超えると行政処分、0.25mg/Lを超えると刑事責任が発生。飲酒量の個人差もあるため、「少しならOK」という考えは危険。
  • 車やバイクだけでなく、自転車や電動アシスト自転車も法律上飲酒運転の対象。違反すると行政罰や場合によっては刑事罰を受ける可能性がある。
  • 飲酒運転を知っているかどうかを問わず車両を貸した所有者、及び同乗者も罰則の対象となり、高額の過料に処せられることがある。
  • 10年以内に2回以上飲酒運転をした場合、氏名や写真が公表される可能性があるほか、アルコール・インターロック装置の取付も義務付けられる。

ATTENTION!

※本マサレポは2025年3月19日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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