台湾#MeToo事件相次ぐ!貴社が築いたセクハラ防壁は大丈夫?!

5月31日、フェイスブックに投稿された1通の告白文を皮切りに、セクシャルハラスメント(セクハラ)被害の告白が燎原の火の如く、台湾の政界や学会、音楽業界などを含めあちこちで次から次へと行われており、6月中旬の今になってきても、その勢いに少しの衰えを見せないところか、こういった#MeToo事件が見せた怒涛の展開に鼓舞される形で、セクハラを受けていたが、通報せず今までずっと悩まされ続けている被害者は能動的にアクションを取るようになる傾向です。

渦にある台湾の与党に対して、労働当局が今月の初頭に取り調べを始めており、早くとも6月の下旬ぐらいには審査委員会を開き、同党は性別就業平等法第13条に定めた事業主が遵守すべき法定義務が守られていたかを判断すると報じられています。

「性別就業平等法第13条に定めた事業主が遵守すべき法定義務」って何なの?

うちは昔からセクハラ事件一切起こらなかったから、特に気にしていないが、セクハラの防止に何かしらの措置を講じらなければ、会社がペナルティ対象になるわけ?

社員をセクハラ被害から守り、会社を当局のペナルティから守る観点で、本マサレポを参考に、自社内のセクハラ防止に関するセーフティネットを強化していきましょう!

性別就業平等法第13条に定めた事業主が遵守すべき法定義務

手始めに、性別就業平等法第13条に書いてある、会社が守らなければならないルールが何なのかをチェックしましょう。

  • 従業員を30名以上雇用した会社は、セクシュアルハラスメント(セクハラ)の防止措置・相談窓口を設置し懲戒規定を定め、常時各事業所の見やすい場所にそれらを掲示し、または備え付ける必要がある。
  • 職場におけるセクハラ事件が起きたと知得した場合、会社は速やかに加害者に対して必要な懲戒措置、被害者に対する配慮のある措置を適正に行わなければならない。
  • 前述したセクハラの防止措置、相談窓口、懲戒規定について、主務機関によって別途定める。

以上の内容によっては、社員の人数が30名に達したら、会社はセクハラの防止に関する各種手続きを行う義務が生じ、セクハラ事件が起きた後の対応もしっかりやらなければならないことが分かります。

次は、主務機関によって別途定められた、会社が設置必要なセクハラの防止措置、相談窓口、懲戒規定に関する主なポイントを以下見てみましょう。

  • 従業員を30名以上雇用した事業者は、セクハラの防止措置・相談及び懲戒弁法を定め、事業所の見やすい場所に掲示し、なおかつ同書面を個別の従業員に交付必要です。(同準則第2条)
  • セクハラ行為の加害者が会社責任者の場合、被害者は社内の相談窓口とは別に、各地の主務機関に対して被害通報を行うことも可能です。(同準則第2条)
  • セクハラ防止措置に、セクハラの防止に関する研修・講習の実施、事業所でのセクハラ防止に関する声明書の掲示・セクハラ相談窓口の設置・担当者の指定、セクハラ相談者のプライバシー保護や如何なる不利益が発生しない配慮、セクハラ行為者への懲戒処分等の事項を含ませる必要があります。(同準則第4条)
  • セクハラ防止に関する相談専用電話・ファクシミリ・メールアドレス等を設置し、常時各事業所の見やすい場所に関連情報を掲示必要です。(同準則第5条)
  • セクハラに関する相談は面談又は電話とも可能とし、面談で受け付けた場合には、担当者は書面による記録を作成し、相談者の面前で内容を読み上げたり読んでもらったりして、内容確認ができてから相談者に同書面にサインしてもらう必要があります。(同準則第6条)
  • 非公開な形でセクハラ相談に応じるものとし、構成員の男女比率を留意のうえ、事業主代表と従業員代表共同でセクハラ事案処理委員会を設置し対応することができます。(同準則第7条)
  • セクハラ事案処理委員会は、書面による通知をもって、相談者、相談者の相手方、事業主へ決議内容を知らせなければなりません。(同準則第10条)
  • 受け付けた相談事案は、相談がなされた日から2ヶ月内に結論を出さなければならず、必要に応じて、当事者へ通知のうえ1か月間延長可能。相談者及び相談者の相手方は書面通知を受けた翌日から20日内に、書面をもって異議申し立てを行うことができます。また、セクハラ事案がクローズしたら、同様事案を再度提出できないものとされています。(同準則第11条)
  • 上記により、会社には、セクハラ防止に関する講習会の開催、セクハラ事件を相談するためのプロセスの整備、セクハラ事件は原則として2ヶ月以内で解決必要などの法的義務を遵守する必要があることが分かります。

留意が必要なのは、セクハラ行為を働いたのは会社の代表であったら、被害社員は社内のルールを飛ばして公的機関に直訴できる点です。

セクハラ防止措置!?なにそれ?

会社側ではセクハラ防止措置を定め、それを可視化にしたうえ社内掲示する義務があるほか、自社内に相談ホットラインを設置し相談役を指定する、セクハラ事件の当事者から…

そもそもセクハラ行為とは何か?

セクハラ行為に関する定義はいくつかの関連法律に定められているが、労働現場を前提とするならば、以下の定義が採択されています。

  • 従業員は勤務期間中に、他人が性的要求、性的意味もしくは性的差別のある発言や行為を働いたことで、敵対的または脅迫的、攻撃性のある職場環境を経験させられ、それによって人格と尊厳、人身の自由が脅かされたり、仕事のパフォーマンスが影響を受けたりする場合。
  • 事業主は従業員又は求職者に対し、雇用の承諾や継続、変更、又は配置転換、昇給、昇格などを条件に、性的要求を行ったり、性的意味又は性的差別のある発言や行為を働いたりする場合。

以上の定義で注意すべき点は、いゆわる「他人」は会社の管理職から現場のスタッフは勿論、顧客やサプライヤーなど「職場の外の人」も対象とされており、それと「勤務時間中」であるかどうかというのも大事な判断基準とされているところです。

職場のセクハラについて会社はどこまで責任を負ったらよいのか?

労働現場におけるセクハラ行為に関する規定を軽くチェックしてきたが、コンプライアンスの観点においては、具体的に会社がどのように社内のセクハラ事件を対応したらよいかについて、事例を取り上げ考察を進めます。

NG例その1

A氏は勤務時間中に、一度ならず同僚のB氏から性的な言動を繰り返されるなどのセクハラを受けたことで、総経理のC氏に相談を行いました。A氏とB氏にそれぞれ面談を行ったC氏は、互いの主張はかみ合わず、なかなか結論が出なかったため、B氏を適当に異動させたことで本件をクローズしました。当該結果に納得がいかなかったA氏は当局に本件を通報し、それを受けた当局は調査を行った結果、A氏が務めるD社に対して30万NTDの過料処分と改善命令を下しました。

D社は加害者と思われる人物を異動させたのに、何故ペナルティを食らったのかと言えば、以下の対応をしっかりとっていなかったからです。

NG POINT

  • D社は事前に定めた社内セクハラ防止措置に従い、事件に対する調査プロセスを正しく実施しておらず、当事者に対する軽い面談のみで調査を終えました。
  • D社はB氏を異動させたものの、B氏は業務関係上、引き続きA氏と頻繁に接触する必要があります。
  • D社ははっきりした態度でセクハラ事件を処理しておらず、書面による通知をもってA氏に結果を報告していませんでした。

NG例その2

E社に勤めるF氏は社内の慰労会でE社の代表からセクハラを受け、代表本人に本件を伝えたのと同時に、辞表を提出しました。数日後、F氏は当局にセクハラ被害の件を通報し、E社は対応不十分で行政処分を受けました。

E社のNGポイントは以下です。

NG POINT

  • E社の代表はF氏から話を受けたとき、ただ同氏の気持ちを宥めたのみで、そのような対応はセクハラ事件を対処するレベルとは到底言えません。
  • E社の代表は加害者の立場であったにもかかわらず、セクハラ事件を調査する権限を第三者に任せておらず、かつ直ちにE社内でセクハラの防止に関する講習会を行っていませんでした。

NG例その3

H氏は上司のI氏からセクハラを受けたことをG社に相談し、それを受けたG社はH氏にヒアリングを行い、セクハラの防止に関する呼びかけを社内の掲示板で公表して、再発防止策についても社内会議を重なりました。その後、G社は退職したH氏に結果報告しようと連絡を試みたが、同氏がうつ病で入院中のため連絡が取れませんでした。本件セクハラ事件の通報を受けた当局は、G社に対して20万NTDの過料処分を下しました。

G社のNGポイントは以下です。

NG POINT

  • G社は検討会議を結構行ったと主張したが、会議記録が一切作成されておらず、セクハラ事案処理委員会も設けられていなかったなど、D社は自社内のセクハラ防止措置に忠実に則り、確実に対応することができませんでした。
  • G社は被害者のH氏へのヒアリングはあったが、同氏の周りで働き、事情をよく知っている社員へのヒアリングを一切行っていませんでした。
  • G社は、被害者のH氏が当局に通報していたから、当局の調査結果を待ったらよいと判断し、事件後、セクハラ行為の再発防止策を一切講じていませんでした。

今週の学び

#MeToo事件の勃発により、セクハラを規制する法律が不十分気味との事実が明らかになったため、政府側ではこの間、性別平等に関する三本の法律を強化する方向で法改正の手続きを急いで行っており、早くとも7月末日までに、パワーアップ版のセクハラ防止対策をリリース可能との発表がなされています。この法改正の効果で、近い将来セクハラ事件が確実に減ることを期待できる一方、コンプライアンスへの要求がさらに強化されることで、会社側では、これからどのように社内のセクハラ防止措置を調整したらよいかも要注目です

マサレポ、今週の学び

  • 会社はただ受身的にセクハラ事件を対処したらよいのではなく、社員数が満30人になったら、防止措置を予め作ったり、相談窓口を事前に設置したりするなどの義務があることは要留意。
  • セクハラ事件が起きたら、きちんと社内のセクハラ防止措置に従い、ステップバイステップ的、丁寧に対処していく必要があり、適当に処理手順を飛ばしたら、当局からのペナルティが伴ってきます。
  • 会社はセクハラ事件を調査するための議事録を作成し、男女の構成比を考慮のうえセクハラ事案処理委員会を設置しなければなりません。
  • 会社は、法律に定めた処理期間を超えないよう留意しながら、セクハラ事件の対処に当たる必要があります。
  • 専門家を招いてセクハラの防止に関する講習会を行うなど、事件後の処理も怠らずにしっかりやりましょう。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年6月15日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA