支払先が海外だったら20%の税金が取られる?!―存在感が薄い(?)源泉所得税の節税対策について

台湾国内の企業間取引は、買い手が5%の営業税を上乗せして売り手に代金を支払い、売り手が台湾の適格請求書である統一発票を買い手に交付して、それぞれが決まった時期に個別で税務当局へ申告・納税したら終わります。

また、台湾に進出する日系企業を含む内国企業と海外企業との国際間取引について、海外企業が売り手の場合、台湾で営業税課税事業者の登録をしていない海外企業は統一発票を買い手である内国企業に交付しようがないので、その辺の調整は営業税の申告義務を負う内国企業で行う形となります。

一方、国際間取引においては、内国企業は原材料や機械装置などではなく、形の伴わないサービスを海外企業から購入した場合、上記営業税の調整手続きとは別に、海外企業に支払う代金の20%を「源泉所得税(以下“源泉税”と称します)」支払い時に差し引いて台湾の税務当局に納付必要とされます(各種所得源泉徴収税率標準第3条)。

海外企業が台湾の内国企業にサービスを提供して得られる代金から、諸々コストを引いた利益が確実に代金総額の20%を上回ったらまだしも、代金の20%未満の利益しか獲得できないのであれば、取引をやればやるほど損が拡大する一方という結果となってしまうため、海外企業には、当該20%の税金を買い手である台湾の内国企業に負担してもらうか、取引を断念せざるをえない、との二択から選ぶしかありません。

実務的には、20%源泉税のルールを知らずに、税務当局が事後実施する税務調査で当該事実が露呈するか、当該ルールを知りつつも、海外企業が提供するサービスは100% Made in海外で、台湾とは関係がないから源泉徴収は要らないと自ら判断したが、数年後税務当局によって当該誤った判断を理由に過料処分を下される、といった事例は少なくありません。

納税は内国企業の義務なので喜んで行うが、別途当局に過料を支払うなら、夜市で食い倒れしたほうがマシだ!」との思いで、トラブルが絶えない国際間サービス取引に関する源泉税の仕組み、及びその節税対策を紹介させていただきたいと思います。

機械装置の取り付けやメンテナンス、専門技術の指導、または商品の開発やデザイン協力……など海外企業からサービスを受けた台湾の内国企業は、代金を海外へ支払う際に、支払時に代金の20%を差し引いて税務当局に納付する必要がある、という支払い側に課される源泉徴収の義務について冒頭にて説明しました。

何故海外だけ?不公平なのではないか!

と直感的に考えたりするかもしれません。理由はシンプルです。内国企業同士が行う取引においては、代金をもらう側は台湾の所得税法に基づき決まった時期に法人税の確定申告を行い納税するので、取引時に源泉徴収の義務を課さなくても、確定申告のシーズンに税金が国の金庫に入ります。それに対し、海外企業は台湾で法人税の確定申告を行う義務がないため、内国企業からいくら稼いでも台湾政府に一切税金を落とす必要はありません。それによって生じる不公平さを無くす方策として、確定申告で取れない税金を源泉徴収という制度で税収を確保する理屈で、海外企業にサービス代金を支払うたびにそのうちの20%を源泉徴収しなさい、という対応方法を政府が考え出したわけです。

内国企業に適用される法人税率が20%であり、サービスを提供する海外企業に対する源泉徴収税率も20%であるから、一見公平のように見えるが、税金を計算するときに原価や経費を引ける内国企業と比べると、サービス代金の20%イコール源泉税の海外企業はむしろ不利な立場に置かれる形となります。

ちなみに、実務上よく間違われているのは、源泉税の申告及び納付するタイミングです。内国企業に対する源泉徴収は、毎月の10日前までに先月に差し引いた源泉税を一括で納付すればよくて、手続的には比較的余裕のある制度作りとなっているが、海外企業に対する源泉徴収は、サービス代金から20%の源泉税を差し引いた日から10日以内に税金を申告・納付しなければならないという(所得税法第92条)、手続き可能な期間は結構限定されています。源泉徴収の義務を知っているが、支払先が海外企業か内国企業かの違いによって、申告・納税の時期が異なる点を把握しそこなうことで、過料を払わされる内国企業は少なくないので、留意が必要です。

何故?どうすれば?源泉税!

サービスを提供してくれる海外企業に代金を支払うときは、内国企業は原則として20%の源泉税を差し引いて申告・納税しなければならないが、一つだけ例外があります。もし内国企業から海外へ支払われるサービス代金が台湾源泉所得に該当しなければ、源泉徴収の手続きを行わずに済みます。

海外企業が内国企業から受け取るサービス代金は台湾源泉所得に該当するかどうかを判断する基準は以下です。

  1. 海外企業が提供するサービスは、以下いずれかの条件に合致すれば、それによって受け取る代金が台湾源泉所得に該当する。
    • サービスを提供する行為は、最初から最後まで台湾国内で行われる場合
    • サービスを提供する行為は、台湾と海外両方で行われる必要がある場合
    • サービスを提供する行為は海外で行われるが、台湾に居住する個人又は会社の関与または協力が必要な場合
  2. 海外企業が台湾国内の個人または会社に提供する電子サービスは、以下いずれかの条件に合致すれば、当該電子サービスは台湾国内で提供されるのとみなし、それによって受け取る代金が台湾源泉所得に該当する。
    • インターネットからコンピューター又はモバイル端末にダウンロードして使用するサービス
    • ダウンロードが必要ない、インターネットで使用するサービス
    • その他インターネット又は電子方式で使用するサービス
  3. サービスの提供は、最初から最後まで海外で行われ、かつ海外企業が以下いずれかの条件に合致すれば、それによって受け取る代金が台湾源泉所得に該当しない。
    • 台湾国内に固定的施設及び営業代理人を有していない
    • 台湾国内に営業代理人を有するが、代理の範囲に対象サービスが含まれない
    • 台湾国内に固定的施設を有するが、対象サービスとの関わりがない

上記によると、台湾にいかなる拠点も置かず、代理人も頼んでいない海外企業は、台湾の内国企業から依頼を受けて提供するサービスが100%海外で行われるのであれば、台湾から受け取る代金は一切源泉税を引かれずに済む、と考えて問題ないはずです。にもかかわらず、行政裁判所が2010年に、台湾源泉所得に該当するかどうかを判断するのに、サービスの提供地のみならず、サービスの使用地も考慮しなければならない、との見解示していました。つまり、「サービスの提供」というビジネス行為を完遂するためには、「買い手である内国企業が当該サービスを台湾国内で使用する」事実が必要とされるのであれば、それによって支払われる代金はやはり台湾源泉所得に該当する、という「サービス使用地基準」が改めて生じたわけです。内国企業が海外から購入したサービスを大体台湾国内で使用することを考えたら、海外企業に支払うサービス代金が台湾源泉所得に該当しないから、源泉徴収が要らない、と主張する正当性を税務当局に認めてもらう難易度はめちゃくちゃ高いことは想像に難くないでしょう。

サービスの提供地が海外なのに、何故台湾で課税される?

かかるコストを一切考慮せず、いきなり代金の20%を取られてしまうのが痛いです。台湾源泉所得に該当せず源泉徴収不要と主張しても、超大型巨人より高いハードルが立ちはだかるから、現実味の薄い対応方法と言えましょう。しかし、諦めたらそこで税金ぼったくりされるよ、ということなので、その他合法的かつ成功率の高い源泉税の節税方法を以下紹介したいと思います。

源泉税が避けられないなら、とことん低くしよう!

源泉税キラー番号No.1―事業所得免税

一つの取引で得られた所得が台湾で課税され、海外でも課税される、という二重課税問題を無くすために、台湾はいくつかの国と二国間の租税条約を締結しています(フル条約は2023年11月現在34ヶ国)。台湾からサービス代金を受け取る海外企業の所在国は台湾の租税条約締結国に該当すれば、「事業所得免税」を申請する資格要件を満たしているかをチェックし、うまく税務当局から許可を取得できれば、20%の源泉税を完全になくすことができます。この申請が通ったら、税務当局のもらえる税収が0元となることもあって、審査が比較的厳しい傾向です。

事業所得免税を申請する主な要件は以下です。

  1. サービスを提供する海外企業は台湾国内にPE(恒久的施設)を有さないか、PEを有しても当該サービスとの関わりがない
  2. 工事サービスの場合、工事期間が6ヶ月を超えない
  3. 台湾出張が必要とされるサービスの場合、出張者が台湾での滞在日数がいかなる12ヶ月の間に累計183日以内の場合
  4. 契約期間や契約代金、支払方法など各種条件が明記される契約書、及び所在地国の居住者証明書を提出できる。
  5. 台湾から受け取るサービス代金は使用料または配当金に該当しない

源泉税キラー番号No.2―所得税法第25条

1983年より登場した現在施行中の所得税法第25条は、節税対策における定番中の定番で、一番手軽に利用できる制度として知られています。決まった書類を整理して所轄の税務当局に提出すれば、目立つ不備などがなければ数週間後に許可が下りて、そして3%(国際運送サービスは2%)の源泉税を徴収・申告して終わります(節税効果17%)。

所得税法第25条は手続きがシンプルな割に節税効果がよいので、制限が多い事業所得免税より利用率が高い傾向にあります。ただし、制度が出来上がる年数が長いだけあって、事実無根な資料を提出し脱税しようとする濫用事例がそれなりにあったわけなのか、審査時間の長引きや、取引の実在性を証明できる各種資料の追加提出を審査期間中に求められたりするなど、審査が厳しくなりつつあるようです。

所得税法第25条を申請する主な要件は以下です。

  1. 海外企業が提供するサービスが国際運送サービス、建築工事、又は技術支援サービスのいずれかに該当すること(通常のサービス取引ではないが、機械装置のリースも対象になる)
  2. 台湾から受け取る代金に関する原価と経費の配賦が難しい
  3. 台湾から代金を受け取るのは中国企業の場合は申請不可
  4. 台湾から受け取るのはサービス代金ではなく、専門技術や特許権、商標権などを使用する権利の対価である使用料(ロイヤリティー)であった場合は申請不可
  5. 企業グループ内の管理業務もしくは人材派遣業務などは技術支援サービスに該当しないため、申請不可

源泉税キラー番号No.3―みなし利益率と利益貢献度

キラー番号No.1とNo.2と比べたら、「みなし利益率と利益貢献度」の申請は比較的マイナーな節税対策であるかもしれません。完璧主義を求めなければ、みなし利益率と利益貢献度の申請に必要とされる書類は、所得税法第25条よりやや多く、事業所得免税より少ないイメージだが、自由度の高さは三者のトップと言えなくもありません。

みなし利益率と利益貢献度の申請に、まず海外企業の事業内容をもって、10%弱~40%前後という範囲から該当する「みなし利益率」を決めなければなりません。次は、海外企業の所在地国と台湾における対象サービスの提供で得られる利益への貢献度を立証のうえ決定する必要があるが、立証するハードルがそこそこ高いため、実務的には台湾での貢献度が100%でいいよ、というように妥協したりします。一番嬉しいことに、事業所得免税といい、所得税法第25条といい、いずれの制度も海外企業が自ら申請しなければだめなのに対して、みなし利益率と利益貢献度は、代金がまだ支払われていなければ、サービスの買い手である内国企業でも申請可能という、台湾サイドがわざわざ海外企業と書類のやり取りをしながら申請しなくてもよいとされます。そして申請が順調に通ったら、源泉税率は2%~8%となり、おおよそ12%~18%の節税効果が得られます。

源泉税キラー番号No.1―事業所得免税

国際分業が大変進んでいる今においては、海外から国内にない製品やサービスを調達することが一般的です。そんな一般的な風景のなかに浮いているのは、Made in海外であるにもかかわらず20%源泉必要なサービスへの代金です。その特異性ゆえになかなか納得がいかない海外企業は、かかる源泉税を買い手である台湾企業に負担してもらったりしています。そうすると、台湾企業にとって、国内での買い物に5%の消費税を負担するのはいいが、海外からサービスを購入すると消費税がいきなり20%に増える違和感を覚えてしまうので、税金対策を施す必要性が強まりましょう。一方、海外企業は申請に必要な書類の作成を協力してくれるならまだしも、全然協力的じゃないケースもたまにあるので、その場合、代金を支払う前に「みなし利益率と利益貢献度」を申請し、できるだけ税金ロスを防いでおくことがおすすめです

マサレポ、今週の学び

  • 海外企業へ支払うサービス代金には20%の源泉税がかかり、税金キラーNo.1~No.3から成功率の高い方法を選んで減税措置を活用しましょう。
  • 税金キラーNo.1~No.3のどれを取っても、「サービスの提供を証明できる資料」の提出を税務当局から求められる可能性が非常に大きいため、収集しておく必要があります。
  • 今回紹介した減税措置の申請に、海外企業とのサービス契約書の提出は必要不可欠であり、審査担当者も各条項を細かくチェックするため、契約書を締結する前に、節税申請を前提とするリーガルチェックをマサヒロなどの専門家に頼むことがおすすめです。
  • 本マサレポを読む前に既に源泉税を納付したからで諦めてはいけません。節税申請が通れば、最長10年前までの税金を取り戻せます。

ATTENTION!

※本マサレポは2023年11月13日までの法律や司法見解をもとに作成したものであり、ご覧いただくタイミングによって、細かい規定に若干法改正がなされる可能性がございますので、予めご了承くださいませ。気になる点がおありでしたら、直接マサヒロへお問合せいただきますようお勧めいたします。

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